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「混ざり合う社会」へ

東京パラリンピック後の世論調査では、「障害者との共生が深まると思う」という意見が多く聞かれました。今回は、社会の多様性に関する話題です。

障害者とどう接する?

パラスポーツの力で互いを認め合う共生社会を前に進めようとしている競技団体、日本ブラインドサッカー協会の専務理事兼事務局長、松崎英吾さんに話を聞きました。
東京パラリンピックを経て、一般の方のパラスポーツの見方や関心が変わったという感触はありますか?

松崎さん
「今までの取り組みは、隣り合っているオセロをひとつずつひっくり返していくような普及のしかただったと思うのですが、今回のパラリンピックでは、接点のなかった遠い層の人たちの大きな面積が、一気にひっくり返ったような感覚を覚えていますね」

ブラインドサッカー日本代表は、パラリンピック初出場で5位入賞と健闘し、大会を盛り上げました。
ただ、松崎さんは、社会の中で障害者との接し方にとまどう人も、いまだに多いと考えています。

松崎さん
「規範として、あるいはこうあるべきだという姿として、『障害者の方とはこう接しなければいけない』と小さいころから影響を受けて育ってきているわけです。そればかりが頭の中で先行してしまうと、実は人としてフラットな関係や公平な関係でつきあうことが難しかったりするんですね。日本ブラインドサッカー協会のビジョンで、視覚障害者と健常者が『当たり前に混ざり合う社会』というのを掲げています」

「意思疎通」 ブラインドサッカーに学ぶ

「混ざり合う社会」を実現するために協会が力を入れているのが、ブラインドサッカーの特徴を取り入れた、体験型の研修です。さまざまな企業に活用されています。
なぜならこの競技、コートの外にいるガイドなど目が見える人と、見えない人が正確に意思疎通することが欠かせないからです。
目の見えない相手に正確に情報を伝えることは、どれだけ難しいのでしょうか?

ブラインドサッカー日本代表 寺西 一選手
「この体操を説明していただきたいと思います」

体の動きを目の見えない人に説明しようとすると…。

「手を伸ばしたままです。そのままグルッと大きく回してください」

「肩を?」

…難しそうですね。

寺西選手
「大切なことは、アイマスクをしている人の立場に立って伝えてあげること。アイマスクをしている側の人も『何がわからない』というふうに声に出して言ってくれると、はっきりわかるのではないかなと思います」

健常者どうしで簡単に伝わることが、視覚障害者へは難しい。それをパラスポーツを通じて体で理解し、意思疎通のしかたを実践してみる。
それが「混ざり合う社会」への扉を開く、と松崎さんは考えます。

松崎さん
「テレビで見るだけではなくて、実体験したり、実際に障害のある人と同じ目標を持った体験をしてみるとか、そういったことが必要になってくるのかなと思います」

企業には「気づき」も

社員研修に取り入れた、双日サステナビリティ推進室の中原慶子さんに聞きました。
国籍や境遇などの多様性を重要視している企業にとって、障害者との距離を縮めるだけでなく特別な意味がある、と言います。

中原さん
「障害という違いや、性別、国籍という見える違いだけではなくて、それぞれの得意、不得意であったり、育児や介護など、いろいろな事情を抱えている人がいる中で、力を出していく、組織としての力を出し合っていかなければいけないので、相手の立場になって考えて工夫する、といったところに気づきを与えてくれると思っています」

パラスポーツの「力」とは

パラスポーツは、スポーツという枠をこえた価値を秘めている、と松崎さんは言います。

松崎さん
「違いを尊重したり生かし合ったりするには、社会としての豊かさが必要なのかなと思います。それをより力強く推進していくために、パラスポーツというのは、いま多くの役割を担えると思っています。スポーツを通じて、笑顔で楽しく障害と出会い直してくれること。これが、パラスポーツの持つ力ではないかと思います」

ブラインドサッカーの体験プログラムは、企業だけでなく、さまざまな学校や地域で行われていて、子ども向けのプログラムには、これまでに16万人が参加しています。

「混ざり合う社会」を実現するために、まずは固定観念を解き放って体験してみる、それが大事なことですね。

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ミガケちゃん
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