ミガケ、好奇心!時事もんドリル

星

家でのコーヒーをおいしく!

家で過ごす時間が増えたいま、コーヒーをちゃんといれて楽しむようになった、という人も多いのでは? こだわって「ミル」を使って自分で豆をひく、という人もいますよね。今回は、このコーヒーミルにまつわる問題です。

問題に挑戦!

問題

高速でハンドルを回してひくと、コーヒーの味に変化があるおそれがあります。ゆっくりハンドルを回してひいたときと比べて、味にどのような変化があると考えられますか。どちらも中煎りのコーヒー豆を中びきにしたものとします。

(麻布中学校 2019年)

ミルのハンドルを回すスピードとコーヒーの味はどのように関係しているのか、「コーヒー博士」に聞いてみました。

コーヒー博士の解説

金沢大学の廣瀬幸雄名誉教授です。
ユニークな発想の研究者に贈られる「イグ・ノーベル賞」を受賞した工学の専門家で、日本コーヒー文化学会の会長も務めています。

廣瀬さん
「ハンドルの回転を、速く何回も何回もやりますと、摩擦熱で高温になるんです。したがって、ばい煎が進んだのと同じ形になりますね。苦みが出てきます。苦くなると、酸味をだんだん感じなくなります」

ということで入試問題の答えは、「熱が生じるため、苦みが強くなり、酸味が弱くなる」です。

コーヒーの味と「酸化」

ではなぜ、豆に熱が加わると、苦みが強くなるのか。
カギとなるのは、「酸化」だといいます。

廣瀬さん
「酸化というのは、ほかの言葉で言うと『腐る』という意味。酸味が酸化されると、酸っぱさに変わります。苦みが酸化されると、重たい、嫌な苦みになります。雑味に変わっちゃうんです。熱が高温であればあるほど、酸化されやすいです」

考えてみれば、1杯のコーヒーになるまでのさまざまな過程で、豆には、熱が加わっています。
(1)ばい煎する。
(2)ミルでひいて粉にする。
(3)抽出でお湯を注ぐ。
これらがすべて、酸化を進めてしまうといいます。
廣瀬さんによれば、おいしいコーヒーとはつまり、酸化をできるだけしない形で出されたコーヒーのことなんだそうです。

「温度」にこだわろう

「温度」にこだわるだけでも、家でも、雑味のないおいしいコーヒーを楽しめるそうです。
廣瀬さんの、50年近くにわたる研究の成果を、少し教えてもらいました。

抽出に使うお湯の、温度。
沸騰したお湯ではなく、82度から83度がベストだということです。

廣瀬さんは、こんな方法も教えてくれました。

コーヒーの粉・50グラムを700ccの「水」に入れます。お茶をいれたり、料理でだしをとったりするためのパックを使います。

本当にちゃんとコーヒーの味がするのでしょうか?

廣瀬さん
「します。すっきりします。雑味がないです。温かいのがほしい人は、コップに入れて電子レンジで1分温めれば、おいしいですよ」

ちなみに、おいしく飲む目安は、3つの「1」。
ばい煎して1か月以内、ひいて粉にして1週間以内、抽出して1時間以内、だそうです。

なぜ小学生にコーヒーの問題を?

小学生にはなじみの薄いコーヒーですが、小学6年生が解く入試問題として出題されています。
その理由について、廣瀬さんはどう考えているのでしょうか。

廣瀬さん
「温度ひとつみても、コーヒーにものすごい影響を与えるんですね。ひとつのことに興味を持つと、その後ろに隠れている本質がわかった時に、いろいろ通じるものが、本質が一緒の場合がよくあるんですよ。興味を持ったら面白くてしょうがない、ということがわかってもらえればいいですね」

楽しみ方は人それぞれ

「熱の加え方」によってコーヒーの味はいかようにも変化する、実に奥が深い飲み物ということがわかりました。
どんなコーヒーがおいしいと感じるかはもちろん人それぞれ。苦みや、酸味、コクへのこだわりなどは、人それぞれですよね。
また、熱々のお湯でいれたときの「香り」が好きという人もいると思います。熱々のお湯でいれた場合は、注ぐスピードは速めにして、できるだけ早く飲むことがおすすめだと廣瀬さんは話していました。

ご家庭でコーヒー本来の味を試してみてはいかがでしょうか?

「週刊まるわかりニュース」(土曜日午前9時放送)の「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を、鎌倉キャスターと考えていきましょう!

ミガケちゃん
なるほど