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新種続々! サンショウウオ

近年、国内で続々と新種が発見されている生物がいます。技術の進歩によって可能になってきた新種の識別は、生物の多様性確保の面でも重要だといいます。今回は日本に生息する貴重な生物についてです。

問題に挑戦!

まずは入試問題を見ていきます。

問題

ある地域にしか生息・生育しない生物のことを「固有種」といいますが、「固有種」が生じやすい地域や生物の特徴に当てはまるものを2つ選びなさい。

海岸線が長く高い山がなく、生物が移り住みやすい地域
降水量が多い温暖な気候で、生息している生物の数が多い地域
大陸から遠く離れ、小さな島が集まっている地域
一度に産む子どもの数が多い生物
移動する能力が低い生物

(女子学院中学校 2017年 理科 改題)

正解は

私たちが暮らす日本列島は島国ですから、その地域特有の生物、「固有種」が多く存在しているわけです。

そんな「固有種」の中でも最近、続々と新種が見つかっている生物が、“サンショウウオ”です!

意外と知られていない生態と新種発見の道のりを調べました。

サンショウウオとは

サンショウウオは、カエルやイモリなどと同じ両生類で、昆虫やミミズなどを食べる肉食動物です。

主に中国や日本、朝鮮半島など東アジアに生息し、96種が確認されています。
(2022年12月時点・サンショウウオ科)

水がきれいな渓流などを好み、その生息地は多様な生態系が保存されている指標にもなるといいます。

日本では沖縄・奄美諸島などを除く広い地域に生息し、その数、なんと48種類!

世界の半分の種が見られる「サンショウウオの宝庫」なんです。

移動範囲が狭いため、地域ごとに独自の進化を遂げていて、国内では最近、新種の発見が相次いでいます。

サンショウウオの研究者で国立科学博物館・研究員の吉川夏彦さんに話を聞きました。

吉川さん
「2000年くらいまでの間は日本のサンショウウオは20種ぐらいが知られていたんですが、現在は50種近くになっています」

吉川さんはこのうち5種類の発見に関わってきました。

中でも去年、新しく見つけたのが…

新種のホムラハコネサンショウウオとは

その名も「ホムラハコネサンショウウオ」

京都府から石川県にかけた地域と紀伊半島の山間部に生息し、背中に炎のようなまだら模様があることから吉川さんが名付けました。

「ホムラ」と聞いて、あのアニメを思い浮かべた人もいるかもしれないと思い、質問をぶつけると…

『鬼滅の刃』のインスピレーション(ひらめき)を受けたのでしょうか?

吉川さん
「『鬼滅の刃』は読んだことなくて、もう何年も前から考えていたんですけれど…」

アニメより先にすでに決めていて背中の炎のような模様を名前に入れたいと、炎を意味する「ホムラ」とつけたんだそうです。

さて吉川さんが今回、新種と確信する決め手となったのは何だったのでしょうか?

吉川さん
「(ホムラハコネサンショウウオは)ハコネサンショウウオという種類と同じものだと考えられていて、混同されていました。重要だったのは遺伝子を解析したことで、初めてはっきり違う種類だということが分かったんです」

画像の左がハコネサンショウウオ。

箱根で発見されたことから名付けられ、現在は本州の広い範囲に生息しています。

そして右が新種。

見た目はよく似ていますよね。

以前は、外見の違いで見分けるしかなく、違う種類なのか、地域や個体による差なのか判断が難しかったと言います。

それが近年はDNA分析の技術向上などから、遺伝子レベルでの違いを見分けることがより詳細にできるようになり、新種の発見につながっているのです。

DNA分析に加え、吉川さんは300もの個体の標本収集を地道に行い、従来のものと比較を続けてきました。

実に10年をかけた研究の結果、これまで1種類だと考えられていたハコネサンショウウオは、7種類にまで細かく分類できることを明らかにしました。

そして去年2月、国際的な専門誌で「ホムラハコネサンショウウオ」が新種として発表されたのです。

吉川さん
「長い間懸案だった新種が発表できて肩の荷が降りたような感じです。今後はその生息状況の調査や保全のことなども考えていかなければいけないので、まだこれはスタートラインなのかな」

絶滅の危機が迫るサンショウウオ

新たな発見が相次ぐ日本のサンショウウオですが、実は今、多くの種が絶滅の危機にひんしています。

絶滅危惧種などとしてレッドリストに掲載されているのは85%にあたる41種にも上ります。

その要因は種によってさまざまです。

吉川さんは、生物を絶滅の危機から守り「多様性」を確保するためにも、種の違いを正しく認識することが大切だと言います。

吉川さん
「もっと分布の広い別の種類と混同されているような状態だったら『この地域でいなくなっても、あっちにいるからいいでしょ』という扱いを受けてしまうので『別の種類である』『希少種です』と認識することが、まず守る上での最初の一歩になります」

まずは自分たちの地域に暮らす生物に関心を持つことからはじめていきたいですね。

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ミガケちゃん
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