男性のあなた。
「生理」ということばを聞いて、あなたはどんな気持ちになりますか?
「てれる、恥ずかしい」
「女性に聞きにくいことだよね」
「生理の時って機嫌悪くなるんだよな…」
3番目のあなたは、それを知っているだけマシなのかもしれません。
でも生理は、本当はもっと奥深いんです。
ちゃんと学んだことがないという人、今からでも決して遅くはありません。
生理と向き合ってみませんか?
(女性の方も、ぜひご一読を。そして、周りの男性に勧めてください)
(取材:ネットワーク報道部 松原圭佑 斉藤直哉 柳澤あゆみ)
生理をカンペキに解説!
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最近、生理について詳しく解説するコンテンツが、SNSで話題を集めました。
その名も「生理カンペキBOOK」。
もともとは去年10月、人気少女まんが雑誌の別冊としてつくられました。生理とはどんな現象で、なぜ起きるのか、体や心にどんな変化があらわれるのかといった基礎的な知識。
そしてナプキンはどうやって使えばいいのか、初めての生理を家族にどう伝えればいいのかなど、さまざまな悩みや不安に応える情報をまんがやイラストを使って解説しています。
「生理カンペキBOOK」はこちらから ※NHKのサイトを離れます
実は別の人気少女まんが雑誌も、この夏、生理について知ってもらうための冊子を作成しました。
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小学校高学年から中学生の女子が主な読者層のまんが雑誌の間で、「生理の基本」を取り上げる動きが相次いでいます。
「生理カンペキBOOK」は雑誌の発売後、SNSなどで注目されて大きな反響を呼びました。
販売期間を過ぎた後も「いつでも見られるように手元に置いておきたい」といった声が相次いだため、出版社はことし6月下旬、インターネットでの無料公開に踏み切りました。
いったん販売した雑誌の内容を、その後無料で公開するのは非常に珍しいことだそうです。
りぼん「生理カンペキBOOK」担当編集者 汪瀛さん
「今は小学生でもスマートフォンを持っている子が増えています。スマホで誤った情報や古い情報に触れるのではなく、正しい知識を知ってほしいと思いました」
そして表紙にはこんなことばが書かれています。
「男の子も大人の人も みんなで読んでね!」
担当編集者 汪瀛さん
「編集の過程でいろんなことを調べましたが、生理用品が進化するなど生理を取り巻く状況は、親の世代の時とは大きく変わっています。子どもたちが生理を恥ずかしいと思うような考え方は、親世代や周りの反応をみて無意識につくられる部分があるんじゃないでしょうか。
今回の取り組みが、性別や世代を超えて、生理のことをこれまでよりオープンに話せるきっかけになれば理想だなと思っています」
学校では教わらなかった
そういえば、僕(記者:松原)はこれまで、生理についてどうやって知識を得てきたんだろう。
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現在、36歳。
振り返ってみると、学校で生理について詳しく教わった記憶はありません。
覚えているのは小学生だったか、中学生だったかのある日、突然、男子と女子が分けられ、別々に授業を受けたこと。
あとで、生理についての授業だったと女子から聞きました。
あのとき、僕たち男子は、何やってたんだろう?
今から思えば、なぜ男子は生理を学ばなくてよかったんだっけ?
あれから20年以上。
ジェンダーへの意識も当時とは大きく変わりました。
学校では今、生理についてどう教えているんでしょうか。話を聞いたのは、女子栄養大学の遠藤伸子教授。
日本性教育協会の理事で、学校での保健教育について研究しています。
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女子栄養大学 遠藤伸子教授
「学校での性教育は、戦後、一貫して男女が同じカリキュラムで、分けられたことはありません。現在の学習指導要領では小学4年生で初経(初めての生理)や精通について学ぶことになっていますが、どう対処すればいいのかといった具体的なことまでは限られた授業時間の中では教えきれず、今でも女子だけに教えている学校が多いかもしれません。
ただ何を、どのように教えているのか、全国の状況を継続的に調べた調査はなく、詳しい実態はよく分からないというのが実情なんです」
また遠藤さんは、教員による性暴力の問題や、若者の間での性感染症の広がりなどを受けて授業の中で扱う内容が増えたことで、生理に割く時間がさらに少なくなっている可能性があると指摘しています。
実際、こんな調査結果もあります。
子どもの権利向上などに取り組む国際NGO「プラン・インターナショナル」が、去年行ったアンケート調査。
日本全国の15歳から19歳の男女約1000人に、これまでに受けた性教育への印象を聞いたところ「内容が不十分」と答えた人が男性は22.4%、女性では27.6%にのぼりました。
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その理由について「生理や妊娠について女子だけでなく男子もしっかり症状などを勉強するべき。無知な男性が多いと思う」と答えた女性もいました。
女子栄養大学 遠藤伸子教授
「日本の性教育は諸外国と比べて遅れていて、子どもたちに必要な情報が届いていないのが課題だと思っています。もちろん男の子も生理について学び、女の子に対して配慮が必要なこと、からかってはいけないんだということを理解することが大切です。まんが雑誌だけでなく多くの媒体が生理に関する情報を発信してほしいと思います」
妻と3人の娘がいる僕は
ちゃんと生理を学んだことがなかった僕が生理を初めて身近なものと感じたのは、妻と出会った20歳のころだと思います。
出血は1日や2日では終わらず、体調不良が何日も続くことを、その時、知りました。
「女性って、大変なんだな」
そう思ったのは、確かです。
でもさらに詳しく知ろうと考えたことはなかったように思います。
なので今回の取材をきっかけに、あらためて妻に話を聴きました。
「私は生理痛は薬でなんとかなるんだけど、生理前のイライラや気持ちの浮き沈みはどうにもできない。毎回、本当につらい」
痛みに耐えられないとき、薬を飲んでいるのは知っていました。
でも妻はその痛みより、生理前の心の不調のほうがつらかった。
出会ってから16年で初めて知ったことでした。
もう一つ考え直したことがあります。
僕には3人の娘がいることです。
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いちばん上は、もう小学生。
遠からず初潮を迎えるんだということに気付き、はっとしました。
夫として父親として、僕は大丈夫なのだろうか。
そう思い、ある人に話を聴くことにしました。
“あの人”に聞いてみた
産婦人科医の宋美玄さん。
セックスや妊娠など、性をめぐるさまざまなテーマについてメディアなどで積極的に発信したり、相談に応じたりしていて、生理についてわかりやすく解説した本も書いています。
不安な気持ちを正直にぶつけると、こんな答えが返ってきました。
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産婦人科医 宋美玄さん
「男性も女性も、そもそも必要な知識を知らされる機会がないまま大人になっているんです。『男性はわかっていない!』と言う人もいるけど、知るシステムになっていないんだから責めてもしょうがない。そもそも男性に子宮はないし、血が勝手に出てくるなんて想像もできないでしょ?」
「そういえば、『生理の貧困』に注目が集まった時、ナプキンはわざわざトイレに備え付けておかなくてもいいのでは、という指摘があったんですが、それは『前兆がない』『教室の机に置いていたら、トイレで突然生理が始まった時に対応できない』ということが想像できていないんですよね」
そして「男性が知っておいたほうがいいこと」として、宋さんは4点を挙げてくれました。
・生理は、始まる前にも心と体に不調が現れることがある
・生理は、痛みを伴うものだ
・生理は、突然来ることがある
・これらの症状はいずれも自分でコントロールできない
生理が始まる前の不調は「PMS=月経前症候群」と呼ばれ、宋さんによると、イライラや落ち込むといった精神的なもののほか、頭痛や腹痛などの痛み、睡眠障害など人によってさまざまな症状があるそうです。
そして生理中の痛みも私たち男性にはなかなか想像できませんが、「ひどいときは痛み止めを飲んでも学校に行けないぐらい痛い。それが毎月のように起きる」とのこと。
それほどの苦痛をこれまで知ろうとしてこなかったことをあらためて反省しました。
宋先生、これから僕は妻や娘、世の女性とどのように接し、何をすればよいでしょうか?
産婦人科医 宋美玄さん
「生理の話をすると、男性からは必ず、『どう接したらいいですか?』って聞かれます。でも知ってもらうことと、触れてもらうことは別の話なんです。基礎知識として、知っておいてほしい。生理は人によってはデリケートな話題だから、積極的に触れたほうがいいというわけではないと思います」
「まずは、知ってほしい。そのうえで、相手に対して思いやりを持って行動してほしい。知っておくと接し方って変わると思うんです。学校で水泳の授業を休んだ人に、『生理なんじゃないの?』とからかったり、生理が理由で休んだ人に『怠けてる』というようなことは減るんじゃないですかね」
大人も、学ぼう
ネットで話題になった冊子をきっかけに始まったこの取材。
出版社の編集担当者、産婦人科医の宋さんが、ともに話してくれたことがあります。
それは子どもたちの生理への意識は、周りの大人に大きく左右されるということ。
だからこそ大人になってからも生理について学び、認識や意識を更新していく必要があるのではないか、ということです。
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取材班は、全員30代から40代の男性3人と女性1人。
みんな授業のときには男女に分かれて生理について学び、なんとなく生理は話題にすべきではない、周りにわからないようにこっそり対処したほうがいいという風潮の中で育ってきた気がしています。
タブー視するような雰囲気を、無意識のうちにさらに下の世代に引き継いでいるのかも、と気付かされました。
とはいえデリケートな話題であることはまぎれもない事実。
悩んだり不安を感じてたりしている子どもたちに、そっと手を差し伸べるのにどうしたらいいのか。
宋先生からのアドバイスです。
産婦人科医 宋美玄さん
「私がオススメしているのは『トイレ文庫』です。本を買ってあげても、親に買ってもらったものなら恥ずかしいと思って読まないかもしれない。でも、トイレに置いてあったら、読んでも家族にわからないじゃないですか。そういう、知ってほしいけど親の前ではページを開きにくい本はトイレに置くことをおすすめしています」
生理を知ろう!ポイントまとめ
最後に、「生理カンペキBOOK」から、男性にも知っておいてほしい生理のポイントをご紹介します。
生理の基礎知識
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◎生理のメカニズム
厚くなった子宮内膜が子宮の壁からはがれ落ち、経血とともに流れ出ること。生理、正しくは月経という。
◎生理期間
だいたい3日~7日くらい。経血の量は2日目が最も多い。
ただし、個人差がある。
◎生理痛
経血を出そうとして子宮が収縮し、お腹が痛くなることがある。
◎心と体の変化(PMS)
生理が始まる1~2週間前から始まる不快な症状。心にも体にも不調が起きる。
◎ナプキン以外にも生理用品や便利アイテムが
タンポン、ナプキンを持ち運べる移動ポケット、月経カップなど、いろんなアイテムがある。
生理の時期をずらしたい時、生理痛やひどい肌荒れ、PMSの治療、生理不順を整えたい時には、ピルを婦人科で処方してもらって服用することもできる。
(集英社「生理カンペキBOOK」より)
生理のお悩みQ&A
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Q生理の日だってバレてはいけないの?
A隠したがる人は多いですね。
でも生理は恥ずかしいことではないので、自分が気にならないなら隠す必要はありません。
Q生理に詳しいと「いやらしい」「遊んでる?」と言われた
Aそんなワケないです!自分の体を自分で理解するのは大切なこと。
体のことを知らずに、自分自身を慈しむことはできません。
『私の体は私のもの』です!
Q生理になると子どもを産めるの?
A子どもを産めるほど器官は成長していませんが、生理が始まることは「妊娠できる体になった」ということ。
それは同時に、自分が望んでいなくても妊娠する可能性があるということ。
性行為は自分が責任をとれる年齢まで控えたり、きちんと避妊をする必要があります。
自分の心と体を大事にしていきましょう!
(集英社「生理カンペキBOOK」より)
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