この記事へのコメント

年長児を育てる全国の皆さん。
そろそろ、「就学時健診」の時期ですね。
これまでシリーズでお伝えしてきた「小1の壁」、第4弾では就学前の保護者の方々の不安の解消につなげようと、取り組みを進める自治体に取材しました。

「半径5メートルの備え」がわかる

先月(9月)、横浜市都筑区で「今から備える『小1の壁』講演会・情報交換会」が開かれました。

午前の部、午後の部合わせて80家庭が参加。夫婦での参加も多く、子どもたちの姿も。

就学に不安を抱える保護者のために平成27年度から開催

「小1の壁」への備えをレクチャーしてくれる自治体というだけでも珍しいですが、この情報交換会の特徴は地域に密着した「半径5メートルの備え」を知ることができる点です。

講演会の講師を務めるのは、都筑区で20年以上にわたって子育て支援を行っている、いわば地域を知り尽くしたNPOの代表です。

この日は講師の体調不良のため、過去の講演がビデオ上映

講演会のあとに行われる情報交換会は、
・区内に22ある小学校ごとに行われ、
・PTAで活動する先輩パパ・ママがすべての学校から参加
という手厚い態勢です。

実際に学校に子どもが通っている“現役”の保護者に話を聞けるため、学校ごとに違う決まりや雰囲気など、ネットで調べても分からない細かなことを質問できます。

各学校のPTAから駆けつけた、心強い先輩パパ・ママの皆さん

「小学生なんだから」って言わないで

NPO代表の講演会は、いま小学1年生の子どもを育てている私(記者)にとってドキッとさせられる内容でした。

NPO代表小栗ショウコさん
今、横や後ろを見ると、来年以降、学校できっと会う保護者がいます。あいさつできますか?これは皆さんのお子さんが入学式のあと、教室で初めての場所、先生、お友達の中で座っているのと一緒です。
(子どもが)お友達つくれたらいいなって思いますよね、お子さんより先に、この場でお友達になって帰って下さい。
(友だちづくり…苦手だ…)
筆者(記者)
1年生の間は「もう小学生だから自分でできるでしょ」ではなくて「一緒にやろう」です。宿題も勉強も、習い事も友だちとの関係も、「一緒にがんばろう」という意識で、お父さんもお母さんも付き合ってあげて下さい。
(「もう小学生なんだから…」って言ってた…)
「きょう、学校に行きたくない」ってぐずったり、泣いたり。これは、ほぼ毎日あると思っておいてください。朝起きて、自分で身支度して、時間どおりに家を出られるのは大人です。
もしぐずって「うちの子だけ?」と思ったら、きょうの話を思い出してください。みんなそうです。自分でできるようになるまで、サポートしてあげてください。
(もっと早く、この話聞いておきたかった…)

さらに放課後の過ごし方として、区内では22のすべての小学校に「放課後キッズクラブ」があること。また「放課後児童クラブ」が12か所、そのほかにも民間学童があることなども説明され、区の担当者から、それぞれの対象者や活動内容、利用料金などについても説明がありました。

教えて先輩!質問が止まらない

10人以下のほどよい人数、距離感

後半は進学する予定の学校ごとに円になって集まります。先輩のパパやママが各学校のPTAから参加していて、入学を控えた保護者からの質問に何でも答えてくれます。

入学前ママ
小学生になったら、何時ごろ登校して、何時ごろ帰ってくるようになるんでしょうか…?
朝、門が開くのは8時15分くらいです。「それより早く来ないでね」っていうアナウンスもありましたね。
先輩パパ
入学前ママ
門が開いてから授業が始まるまで、ほんのちょっとしかないんですね…
帰りの時間も、以前は2時半下校だったのですが、1時半の日ができました。だから2時まで仕事が出来ていたのが、働くのを30分とか1時間減らさないといけなくなったんですよね。
先輩ママ
入学前ママ
放課後の過ごし方にも悩んでいます。
うちは、キッズクラブはもうやめてしまって。仲のいい子が通っていないと「放課後は公園でサッカーしたい!」とかってなるんですよね。
先輩ママ
キッズクラブも、プログラムが多いところとそうではないところとか学校によって違いますね。
先輩パパ
入学前ママ
そうなんですね。あと、授業参観ってどれくらい前にスケジュール分かりますか?
年間予定表で分かります!あと、その月の学年便りや学校便りでもお知らせがありますよ。
先輩ママ
参観日よりも、定期の個人面談のほうが突発的にスケジュールを調整しないといけないです。数日間、枠がある中でどこになるのか、急に連絡が来るので。
先輩パパ

優しく答えてくれる先輩のパパママ

「あそこの通学路は…」といった、地元民ではない私には分からないローカルな話題も。

多くのパパやママが熱心にメモをとり、質問が止まりません。
仕事と両立していけるのか」と不安そうに質問される方もいました。

情報交換会が終わっても、何人もの保護者が先輩パパママを引き留めて話を聞いていました。個別で聞いておきたい、ちょっとプライベートなお話もあったのかもしれません。

参加した、入学前の子どもを育てる保護者
「保育園から同じ小学校に通う子が誰もおらず近所に知り合いもいなかったので、細かい話まで詳しく聞くことができて、参加して本当によかったです」

講演会の冒頭には「お子さんより先に、この場でお友達になって帰って下さい」と講師の方からのことばがありましたが、会の最後、会場では連絡先を交換し合う姿がありました。

子どもたちよりも先に、お友達になったママたち。入学前に不安なことがあっても、相談することができますね。

「不安を取り除いてみんなで一緒に」

なぜこのような取り組みを始めたのか。
主催した横浜市都筑区の担当者に聞きました。

ご自身も数年前「小1の壁」を経験した”元当事者”

こども家庭支援課  清亜希子 学校連携・こども担当課長
「もともとは、女性の活躍推進の一助になればと始まった取り組みです。都筑区は比較的新しいまちで、他府県から転入してくる人も多く、入学のタイミングで転入という方もいます。そういった人は子どもどうしも、ご自身も“つながり”がない。不安材料を少しでも払拭(ふっしょく)することや、区役所の敷居を低くして問い合わせをいただけるきっかけになるといいなとも思っています。

私もそうですが、働いているとどうしても忙しくて心に余裕がなかったりしますよね。お父さんやお母さんが余裕を持って楽しく子育てができるよう、我々にできることがあればしていきたいし「小1の壁」へも不安を取り除いて、皆で一緒に楽しく子育てをしていきましょうと伝えたいです」

入学から夏休みまでを乗り越えるために

最後に、講演をした認定NPO法人あっとほーむの 小栗ショウコさんが話していた「入学から夏休みまでを乗り越えるため」のポイントをご紹介します。

①体力強化、歩く・荷物を持つ練習をしておく

②通学路を“知っている道”にする

③学校の時間割を把握し、5分ずつでも早寝早起き

④放課後の過ごす場所、可能なら何度か行って“安心感を”

⑤放課後は疲れているので、朝学習の習慣づけがおすすめ

お子さんの成長のペースやご家庭の事情などによって必要な備えも変わってきますが、この記事が、家族で協力しながら備えを始めるきっかけになればと思います。

ライフチャット編集部では、引き続き皆さんからの体験談を募集しています。寄せられたご意見も、随時ご紹介いたします。

ぎりぎり平成の1989年に高知県で生まれました。大津局や宇都宮局、首都圏局で「きょうだい児」などのテーマを取材し、福祉について考えてきました。

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