この記事へのコメント

「小1の壁」をめぐる不安の声や、モヤモヤ…。
でもそもそも、小1の壁ってなに?どんな風に備えたらいいの?疑問を解消するため、子育てアドバイザーの高祖常子さんにお話を聞きました。

記事文末には「小1の壁に備えるチェックリスト」も掲載しています。ぜひご活用下さい。

「困った」「どう対策を?」よりもまず「子どもの気持ち」を

高祖常子さん こども家庭庁の「幼児期までのこどもの育ち部会」で委員も務める

そもそも「小1の壁」ってどういう意味のことばなのでしょうか
記者
高祖常子さん
特に保育園に通っていた場合は、これまで早朝や夕方も延長保育などで預かってもらえていましたよね。それが小学校になると、登下校の時間が決まっている。学童保育があっても、預かり時間は保育園のように長くなく融通もきかなくなり、親も仕事との両立が難しくなってしまうことを「小1の壁」と言います
自分自身の経験や、周囲の体験談を聞いていると「壁」は預かり時間の問題だけではないようにも思います。
そうですね。体験談を聞くと、子どもたち自身の「つまずき」も多く含まれます。
保育園や幼稚園と違って1時間目、2時間目とカリキュラムがある中で過ごしていくことへの戸惑いや、「教科」になじめないとか、ついていけないとか。いろんなタイプの子どもがいて、いきなり大勢の中で先生の指示に従って学校生活をしていくことに戸惑うお子さんもかなりいるように感じます。
そもそも、その「子どもたちのしんどさ」や「つまづき」というのはなぜ生じているとお考えですか?
昨日もある会議で出ていた例ですが、幼児教育の中では子どもたちが中心になって自発的に遊びを発展させることに力を入れて、のびのびとやってきたけれど、そういう子が小学校に入ると急に元気がなくなってしてしまうと。
学校教育も“アクティブラーニング”など変わり始めてはいますが、まだまだ全国的に見ると先生が前に立って正解を問うような授業をしている。保育・幼児教育と学校教育の“つなぎ”の部分は、まだまだだと感じています。
子どもたちも、環境が大きく変わって本当に大変ですよね…。
今までの「小1の壁」に関する記事だと、学童をどうする、とか、働き方をどうするとか、親の困りごとや対策を中心にまとめているものが多い気がしていますが、まず大切なのは「子どもの気持ち」や「意思」だと思っています。子どもたちが安心して「学校にいくのが楽しいんだ!」って思えることがベースにあってから、親の困り感の話をしたいですよね。

だいじにしたい「あのね」の時間

その部分、取材でも大切にしていきたいです。子どもの気持ちに寄り添ううえで、どんな風に声かけをすればいいでしょうか。
子どもによって心配性だったり、あっけらかんとしている子だったりいろんな子がいますけど、入学前は学校の楽しい話をしてあげてほしいです。「体育ではこんなことするんだって」とか「こういうことを図工でもするかもね」とか。「そんなんじゃ、小学生になれないよ!」と脅すのはNGです。
そんなんじゃ小学生になれないよ…言ってしまったことがあるかもしれません…。
入学後「困ったことない?」と聞いても、親が忙しそうにしすぎていると子どもが気を遣ってしまうこともあります。そもそも相談や困りごとは子どもが安心しているときに、子どものタイミングで言ってくるものです。だから私はよく「あのねの時間を作ろう」って言っています。
「あのねの時間」?
親も忙しいですよね。だったら、お手伝いに巻き込みましょうと。「洗濯物畳んでくれる?」って呼びかけて、横で一緒に畳んでみる。横並びで一緒に家事をしたり、お迎えからバタバタって帰るんじゃなくってたまにはゆっくり歩きながらしゃべって帰ってみたり。たまにでいいから子どもが「あのね…」って言い出せる時間をつくると、子どもの実際の気持ちや、声にふれられるかなと思います。
意識してやってみます!

学童は?働き方はどうする?

「子どもたちの気持ち」を大切にしたうえで、でも実際に親はどうすればいいの、という話なのですが…。
国のほうでも、学童保育は受け皿を増やそうとしています。そもそも「保育園落ちた日本死ね」(※)があって、そのあと保育園は小規模園を含めてたくさん作られてきた。親の働き方に合わせて、どんどん作って長時間預かってももらえて…。その子たちが5、6年後に、次は学童落ちたって話になっているわけですね。

(※保育園の待機児童問題を厳しく批判したブログ記事。2016年に話題になった)

学童の預かり体制も拡充してきているものの、まだ待機児童もいますし、保育の質も問題になってきていますよね。
放課後の過ごし方も、公立の学童保育だけではなく、お値段はしますが民間の学童だったり、習い事に行ったり、ファミリーサポートさんに助けてもらったり、さまざまな選択肢があることも知っておいてほしいです。
私の周りにも小1の壁に備えて、フルリモートの職場に転職をして働き方を変えたというママ友がいます。
それも選択肢の1つだと思います。
そもそも共働きが増えているにもかかわらず、やっぱり男性は相変わらず長時間労働をしている方が多い。子育て講座をすると、ここ数年でパパの参加率はすごく増えてきているんですよ。「育休をとりたいです」って言うんだけど「職場でいい顔されない」なんて話をいまだに聞くんです。もちろん、制度も拡充されて理解してくれる
企業もあるけど、変わっていない企業もあるんですよね…。
労働現場の課題もあるわけですね。
大リーグの選手も「子どもが生まれるから休みます」っていう時代ですよね。でもなかなか日本はまだそうはなっていない。
親も時間ギリギリまで働いて、子どもも小学校っていう新しい場で疲れちゃって。帰ったら宿題もやらなきゃいけないから親も子もイライラして。大騒ぎになって泣きわめいて親が「さっさとやりなさい!」って…。
子ども自身が笑顔で過ごしてくれている方が仕事にもしっかり取り組めるし、子どもも学校をがんばろうって気持ちになりますよね。
すごく分かります…

“スケジュール”書き出してみて

働き方を見直すこと以外に、就学前にできる備えはありますか?
まずは、小学生になったときのスケジュールを書き出してみてください。入学後の1週目は何時に学校が終わって、学童は何時から、って書きだしてみて、隣に親の仕事のスケジュールを書く。そうすると、この時間、曜日はパパもママも対応できないかも、とかってことが見えてきますよね。

こんなイメージで書き出してみると、調べないといけないことも見えてきそうですね

可能であれば始業時間を調整できないか夫婦で相談してみたり、近所のお友達と一緒に学校に行かせてもらえないか調整したり…。ママが1人で何とかしようと思っているケースが多いのですが、家族みんなの話として、パートナーと共有したり、ご近所どうしで助け合うのも1つの手です。
ママ友どうしで分担して、放課後の習い事の送り迎えをしている知人もいます。
いいですね!
「小1の壁」って地域による事情も違いますし、待っていても自治体から具体的な情報が寄せられるわけではないから…。近所の先輩パパママからの情報にすごく助けられたという声もよく聞きます。
そうですね。
「何時くらいに登校してるの?」「学童の様子はどんな感じ?」とか。クチコミがとても大事ですね。

壁、不安を感じているみなさんへ

最後に、小1の壁を不安に感じている方たちに伝えたいことはありますか?
「小1の壁」と聞いただけで、大変そう!と感じてしまうかもしれませんが、不安を感じたらまずはそもそも何に対して心配があるのかを整理してみてほしいです。
その具体的な心配に対して、どう解決できるか、役所や学校、そして先輩ママパパなどに聞いてみてほしいです。
私たち、ライフチャット編集部も、不安を感じる保護者の方たちの助けになるような情報をお届けしていきたいと思います。

小1の壁に備える!チェックリスト

ここまでのお話をまとめたチェックリストを制作しました。

地域によって、保護者の皆さんの働き方やお子さんの性格などによって「備えておいてよかった!」というポイントも少しずつ違ってくるのではないかとも思います。

ライフチャット編集部では、引き続き皆さんからの体験談を募集しています。寄せられたご意見も、随時ご紹介していきます。

ぎりぎり平成の1989年に高知県で生まれました。大津局や宇都宮局、首都圏局で「きょうだい児」などのテーマを取材し、福祉について考えてきました。

みなさんの声

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