急ぐ人が駆け上がれるように右側を空け、 左側だけ大勢の人が並んでいる光景、目にしませんか?
一方で、左半身にまひがある人は空いた右側にしか立てません。 そもそも動いているエスカレーターを駆け上がることは危険な行為とされています。

福岡市地下鉄・博多駅のエスカレーター
こうした中、NHK福岡放送局の「追跡!バリサーチ」ではこれまで、福岡市交通局が2列乗りマナーの普及に努めていることなどをシリーズでお伝えしてきました。
そのなかで効果が見られたと紹介したのが、「ポップ」です。 目に付く位置に、工夫を凝らしたメッセージを置いて注意を促すものですが、 今回、交通局はこのポップの取り組みをより広めようと、「ある人たち」に協力を依頼しました。

福岡市地下鉄・西新駅に設置された「ポップ」
その相手に選んだのは…なんと高校生! どんなアイデアに仕上がったのか、取材しました。
頼んだ、高校生よ!

左から豊嶋暖人さん、隠塚翔栄さん、平川凱斗さん
交通局が訪ねたのは東福岡高校の生徒会メンバーです。 普段からエスカレーターを使用していますが、「2列乗りマナー」については 知らなかったといいます。
そんな3人が今回作るのは、高校の最寄り駅「東比恵駅」に設置するポップです。
交通局によると、東比恵駅は通勤客などの利用が多く、右側を駆け上がる人の姿も目立つということで、駅に近い東福岡高校にお願いしました。
調査してみることに・・・

博多駅に調査に来た3人
…とは言うものの、2列乗りマナーを知らない3人。 まずは博多駅で現状を調査することにしました。

左側だけに伸びる行列
調査を始めて目にしたのは、左側にだけ伸びる長い行列に、空いた右側を駆け上がっていく、いつもの光景。 そんな中、3人は「最初に右側に立ち止まる人」に注目しました。

2列乗りに挑戦する3人
大事なのは「右側に立ち止まる勇気」。 どれほどのものか、何度も2列乗りをして確かめてみましたが…
一方、その光景を後ろから見ていた隠塚さんは、 後ろから圧をかけられることの危険性を感じたといいます。
2時間以上行われた調査でそれぞれが感じたことを踏まえて、デザインを考えることになりました。
案が完成!クラスメートの反応は?

発表会の様子
調査から1週間後、3人はホームルームの時間を使って、同級生たちに考えてきた案を発表しました。

平川さんのアイデア
平川さんは、調査を通して伝えたいと思ったことを交通局のICカード「はやかけん」にちなんで、あいうえお作文にまとめました。
エスカレーターは2列で乗った方が 「は」やい、「や」さしい、「か」っこいい、ばりよか「けん」。 下から順番に見せることで、丁寧に説明できると考えました。
平川さん
「右側に立つ人の背中を押したい。そして、2列乗りを知らない人に教えたい。
2列乗りをすることで安全で早いことを伝えたいという点をポップに書き込めたらいいなと思いました」

隠塚さんのアイデア
エスカレーターを駆け上がる危険性を感じたという隠塚さん。 一目でそれが分かるデザインを意識しました。
隠塚さん
「いきなり赤々しいポップで驚いたと思います。エスカレーターを上ろうとしているときに突然こんな真っ赤なポップ現れたら、思わず見てしまうと思います。少しでも意識している人が増えることを心から願っています」

豊嶋さんのアイデア
右側に立ち止まる勇気を持つ難しさを、身をもって感じた豊嶋さん。 誰かと立てば怖くないという思いを込めました。
豊嶋さん
「平川くんたちがいてくれたことで最後まで右側に立つことができたので、仲間と一緒に2列乗りをすることで、1人で右側に立つよりもずっと心が楽になるということを伝えようと思いました」
発表を聞いた生徒はどう感じたのでしょうか、聞いてみました。

発表を聞いた生徒
「とてもいいなと思いましたし、納得できるようなアイデアが一番大事なのかなと思いました」
発表を聞いた別の生徒
「地下鉄の2列乗りマナーというのを知らなくて、協力しようと思いました。
個人的には赤いピクトグラム(隠塚君のアイデア)がいいなと思いました」
また、3人はアンケートも実施しました。
その結果、 「普段エスカレーターをどのように使うか」という問いには 75%あまりの生徒が「左側に立ち止まる」と答えました。

一方、「説明を聞いて2列乗りに協力しようと思ったか」という問いには、 90%あまりの生徒が「はい」と回答。 3人は意識の変化に手応えを感じました。

ポップ設置、その効果は・・・
そしていよいよ、交通局の職員によって、思いが詰まったポップが設置されました。

思いが詰まったポップが設置される
気になるのは、その反応。 設置の翌朝、生徒たちは東比恵駅に集まって確かめました。

効果を見守る生徒たち
すると、駆け上がっていく人たちはなかなか目をとめてくれなかった一方、 ポップを見て右側に立ち止まる人の姿も・・・!

ポップを見て右側に立つ人も
平川さんが話を聞きました。

話を聞く平川さん

右側に立ち止まった男性
また、杖を持った男性も右側に立ち止まりました。

その後の交通局の調査でも、少しずつ効果が見え始めているという3人のポップ。 制作を通して何を感じたのでしょうか、聞いてみました。
高校生の挑戦は続く!?
隠塚さんの「いろいろ考えていることがある」という言葉。 実は3人、ポップのデザイン以外にも考えたものがあるんです!

その1つがこちら。 ただの日本地図…、ではありません。 緑色が左側に、青色が右側に立ち止まるのが習慣になっている都道府県の色分けです。
…よく見ると、福岡だけ「赤」になっています。 これは、右でも左でもなく「両側に立つ」ようにしようという呼びかけで、 交通局はこれをポスターにして地下鉄の車内に掲示しようと考えています。

そしてもう1つがこちら。 これを缶バッジにしてカバンにつければ、 自信を持って右側に立てるのではないかというアイデアです。
生徒たちは今後、校内で配布したいと話していました。 「正しいマナーを定着させたい」という強い思いを持った3人の高校生。 その挑戦を今後も取材していきます!
このテーマでご意見募集中 あなたの声をこちらから!

追伸
「日本地図」のデザインは、先月から福岡市地下鉄の車内に掲示されています。写真を撮る人の姿も見られました。

この記事へのコメント