つないだ手のその先は ~京アニへの応援の声

京都アニメーションが制作した映画「聲の形」(こえのかたち)の原作者、漫画家の大今良時さんが、事件を受けて京アニを支援しようと、出版社と協力してチャリティーイラストを描き下ろしました。イラストでは主人公の石田将也と聴覚に障害のあるヒロインの西宮硝子の2人が前を向いて手をつないでいます。さらにイラストをよく見てみると、それぞれもう片方の手も誰かの手とつながれています。

大今さんはイラストの手に込めた思いについて、次のようなコメントを寄せてくれました。

漫画家 大今良時さん
「作品が京都アニメーションさんの多くのスタッフの皆さんの手で作られたこと、そしてこれからも作られていくことを、硝子と将也が画面の先で結んでいる手に込めました。」

映画「聲の形」は監督を山田尚子さん、キャラクターデザインや総作画監督は、事件で亡くなった西屋太志さんがつとめました。大今さんは、映画の制作過程で交流があった京アニとの思い出について、次のようにコメントしています。

漫画家 大今良時さん
「今になってよく思い出すのは、脚本打ち合わせで京アニの皆さんが和気藹々としている風景です。キャラデザ打ち合わせで山田さんの発言に西屋さんが控えめにツッコミを入れる場面や、「このあいだ監督の誕生日を祝ったんです」こんな話をきいたときに、ああなんてアットホームな職場なんだと思ったものです。打ち合わせは、まるでけいおん!の部活動のように、いつもお茶とお菓子と雑談がセットでした。この環境のおかげで仲間との連携もよくとれるんだなぁと、京アニさんが繊細で一体感のあるアニメーションを作ることができるのも納得でした。その期間、京アニという輪の仲間に一瞬でも入ることのできた自分は幸せでした。京アニの皆さんは、作品の一瞬一瞬のために魂を込めて作ってくださいました。視聴者として初めて京アニ作品を見た時以上の感動を、絶えず与えてくれる姿がそこにありました。そしてそんなすごいものをこれからも見せてくれる人たちが、あの日も居たんだと思います。」

その上で、大今さんは京アニを今後もずっと応援していきたいとコメントしています。

漫画家 大今良時さん
「あの場所で起きた出来事に、自分には、彼らが残してくれたものを見て、聞いて、思うことしか出来ません。起きた事に向き合う日々が続いていると思います。
こえにならない沢山の思いを今も抱いて過ごしている被害者の方々に向けて、自分ができる少しのことをしたいと思います。ずっと応援しています。」

大今さんからの申し出を受けて、このイラストは講談社がチャリティー色紙として全国のアニメイトの店舗やオンラインショップで10月11日から28日まで販売しています。色紙の売り上げは全額、寄付されるということです。

NHKの特設サイトに寄せられた応援メッセージ

NHKの特設サイト「#京アニつなぐ思い」にも10月18日に開設してから1週間で、国内外から多くの応援メッセージが寄せられています。一部をご紹介させていただきます。

(兵庫県 20代男性)
「ヴァイオレット・エヴァーガーデンというアニメを見て、今まで見たどのアニメよりも作画が繊細で美しくて感動しました。日本のアニメは世界にも誇る文化で、その中でも際立って素晴らしい作品を生み出している京都アニメーションの再建を切に願います。」

(京都府 50代女性)
「娘が吹奏楽部だったので、「響け!ユーフォニアム」に魅了されました。部活で悩む日、うまく吹けた日、アニメを見て手にとるように理解ができました。悩みや疲労、反抗期があいまって親としても見守るしかできないときにこの作品は私の支え。本当に助けられました。ありがとうございます。美しい世代のがむしゃらさを描いてくださる「京アニ」さんにエールを送ることしかできませんが、どうかまた復活してくださるよう、日々祈りを捧げ、機会あるごとに作品を拝見したいと思います。大好き!京アニ!」

(東京都 20代女性 イラストレーター)
「デジタルで絵を描き始めたのは京都アニメーションさんが制作された「CLANNAD」がきっかけでした。このアニメを拝見して、なんと絵が綺麗なアニメかと、当時は衝撃を受けたものです。ビジュアルファンブックなど、キャラクターデザインの載った本を探しては買い、沢山模写するところから始めました。親にお願いをし、誕生日にペンタブを買って貰ったのも良い思い出です。そうして始まったデジタルでのお絵描きが、今となっては仕事になり、まだまだ未熟で大変な毎日ですが充実感のある毎日を過ごしております。
そんな中事件が起こり、その「CLANNAD」のスタッフの中にも残念ながら鬼籍に入られた方がいると知り、今でも悲しみが尽きません。夢をつなぎ、与えてくださった京都アニメーションさまには感謝しかございません。スタッフの皆さまの傷が癒え、健やかにお過ごしくださいますよう心からお祈り申し上げます。」

(台湾から留学で来た20代女性)※一部は原文ママ
「私は台湾人ですが、日本語はあんまり上手ではありませんで申し訳ございません。私は元々、小説<古典部シリーズ>のファンでした。京アニはこの小説にアニメ化(氷菓)しました。アニメの舞台は小説の作者の故郷、岐阜県高山市に選びました。京アニの素晴らしい腕前とこだわりの取材のおかげで、私は高山市を知りました 。あの時から、私は高山市に行きたいを目指して、ずっと頑張っていました。私は今年、日本ヘのワーホリの資格を取りました。先月は高山市に来ました。とっても素敵な街で、人も優しいです。私、ここに来て良かったで、楽しい毎日を過ごしています。京アニ、本当にありがとうございます。今の私は京アニのおかけで、新しい人生が始まりました。私はずっと京アニを応援してます。頑張れ!京アニ!!!」

(30代 韓国の大学院生)
「京アニが開業した昭和56年は、ちょうど私が生まれた年でもあります。テレビアニメ『けいおん!』の第1期が初放送されたのが2009年のことですが、ちょうどその年に私は就職活動に失敗し続け、自尊心そのものが壊滅寸前の状態でした。家族との関係もますます悪化し、何もかもが思いのママにならなかったその時。『けいおん!』の全編を何度も見返すことで、そういった理不尽な苦しみに耐えながら、何とか過ごせていたのではないかと思います。気がついたら『けいおん!』全編のBlu-Rayを買い揃え、オーディオコメンタリーを聴きながらアニメーション制作における知識を蓄えることができたのです。それらの知識のお陰で、私は日本の大学院に入学し、アニメーションに関する論文を書いて修士号まで獲得することができました。今の私は(帰国したものの)博士課程まで進み、世の中に役立つ人間になろうと研究活動に精一杯励んでおります。果てなく落ち込んでいた自分をここまで引き上げてくれた、『けいおん!』をはじめ『たまこまーけっと』シリーズ、『響け!ユーフォニアム』などを制作した京都アニメーションのことを、私は一生忘れません。それらの作品をご制作くださった、京アニの皆さんにも、もう一度感謝の言葉をお送りします。今回怪我をされたスタッフの皆さんには、一刻でも早く元気になることをお祈りします。最後に、お亡くなりになった36人の方々のご冥福をお祈りします。
大変お世話になりました。今まで本当にありがとうございました。
たくさんの優れたアニメで自分をここまで励ましてくださったことを、私は一生忘れません。(『お別れ そして志を繋ぐ式』が開かれる)11月3日、私もお別れの挨拶のために、京都へ行きます。」

NHKでは引き続き、亡くなられた方やけがをされた方へのメッセージ、支援の取り組みなど1人1人のつなぐ思いを募集しています。