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大丈夫だいじょうぶ、子育てはゆるっとでいい

コロナ禍の収束がなかなか見えず、再び緊急事態宣言も出される中、またしても家にこもりがちになっているご家庭もあるのではないでしょうか。
孤独な環境で子育てをしなくてはいけないお母さんたちが増えていないか、心配です。
そこで今回は、子育て中のお母さんたちが追い詰められないよう「自分の気持ちを見つめ直すきっかけにしてほしい」と願って最近作られた、一冊の本についてご紹介したいと思います。
(ネットワーク報道部 記者 野田綾)

親子の共倒れを防ぎたい

「ゆるっとこそだて応援ブック」。

この本を作ったのは、精神科の医師と看護師を中心に、親子の心の支援のための絵本制作やサイト運営を行っているNPO法人「ぷるすあるは」です。

完成したのは去年10月。

どうしてこの本を作ったのか、絵や文を担当した看護師のチアキさんにお話を聞きました。

チアキさん
「いま、人との接触をできるだけ避けましょうと言われているけど、思い詰めている、せっぱ詰まっているときはやっぱり人を頼ってほしい。親子で共倒れというのはなんとか防ぎたいと思うんですよね。我慢しなくてもいいんだよ、頑張りすぎなくていいんだよということを伝えたくて作りました」

この本が伝える大きなメッセージ。
それは、3つの「いい」なんだそうです。

▽いろんなきもちがあっていい。
▽完璧じゃなくていい。
▽誰かに頼っていい。

それぞれについて、チアキさんの話を聞きながら、少し本をのぞいてみましょう。

1:いろんなきもち あっていい

お母さんだからいつも笑っていなくてはダメ?
家族だから、口に出さなくても気持ちがわかってくれる?

そう思うこともあるかもしれません。でも本当にそうでしょうか。

まずは「きもち」のこと。

自分の気持ちを後回しにして、家のこと、子どものことで必死になっていないか、立ち止まって自分の気持ちを見つめ直すことも大事だという話です。

この本では、「スキ」「楽しい」といったポジティブな気持ちだけでなく「しんどい」「かなしい」などのネガティブな気持ちも含めて、この絵の中で自分の気持ちを探してみてほしいと提案しています。

チアキさん
「こういうページがあったら、いまどういう気分かなってちょっと見つめ直せるのではと思いました。ネガティブな気持ちがダメって言うのはおかしいと思うんですよ。疲れてるんだよな、イヤなんだよな、とか、そういう気持ちも大切にしてもらいたい。生きてたらポジティブばかりではないということを自分自身で認めれば、子どものこともパートナーのことも認められるようになると思います」

この絵は、自分1人だけでなく、時には子どもと一緒に見るといいとのこと。

新型コロナの感染者が身近な学校で出るなどして、子どもも不安を抱えていることがあります。

子どもがどんな気持ちなのか、一緒に考えて話し、安心につなげることもできるからだそうです。

2:完璧じゃなくていい

家族の健康を守らなきゃ、片づけ、洗濯、料理もこなさなくては、子どもの不安を軽くしてあげなくては…
親として責任を感じがちになっていませんか?

「そんなときは”おまじない”の力を使ってほしい」とのこと。

「大丈夫、大丈夫」と口に出していってみる。

そうつぶやくことで、「こうあるべきなのにできない、私なんてダメだ」と自分で自分を苦しめる気持ちから、少し解放されると言います。

チアキさん
「しんどい親御さんほど熱心なことがあります。手作りの料理にこだわって自分の時間がなくなったりして。その結果、私だけできていないんじゃないか、うまくいってないんじゃないかと、自分を責めているお母さんもいます。そんなお母さんに、ちょっと待って!ごはんとか子どもと過ごす時間は、完璧より、楽しいを優先してほしいなと思いました。そして『大丈夫』と自分に言い聞かせて、自分のことを認めてほしいなと思います」

「こうあるべき」に縛られてイライラをためてしまうと、その気持ちが子どもに伝わってよくない影響を及ぼすこともあるので注意してほしいということです。

3:誰かに頼っていい

チアキさんがいまいちばん心配なのは、子育てにおいて親が孤立してしまうこと。

何より伝えたいメッセージは、「誰かに頼っていい」ということだそうです。

チアキさん
「『助けて』と言ってほしいと思うんですよね。本当にしんどくなって、目一杯になっちゃうと、助けてと言うエネルギーすらなくなって、思考がストップしてしまう。頼れないと思い込んだり、頼り方がわからなくなったりしてしまう。そうなる前に、しんどいときはしんどいんだと、やっぱりSOSを出してほしいとせつに願います」

助けてと言えるエネルギーがある間にできる準備。

それは、「頼れる大人を大人も探しておく」ことで、ふだんの生活の中で、たあいもない話ができる相手を見つけておくことだといいます。

チアキさん
「人には相性があるので、自分はどんな人なら話しやすいのかなと言うことを、少し余裕があるときにこそ考えてほしい。近所で声をかけてくれる人とか、子育て広場の担当者とか、誰だったら話しやすいか。そんなに込み入った話はしないけど、ちょっと軽い話ならこの人にできるかなとか、そんな風に小出しにSOSを出せる人を、大人こそ見つけておく必要があると思うんです」

人じゃなくてもいい

応援してくれる人を見つけるのは簡単じゃない。

そう感じている人もいると思います。

でも、応援団は必ずしも『人』でなくてもいいんだそうです。

チアキさん
「例えば、お金に余裕があれば食洗機でもいいですし、いま冷凍食品もおいしいですし、人だけじゃなくてそういう文明の力を遠慮なく借りてほしいと思います。しんどくて支援の手続きなどもできないでいる人もいる。子どもの一時預かりなどの行政のサービスを使うなど、あらゆる制度も応援団として使ってほしいと思います」

気分転換を…

この本の最後に用意されているのが、自分の気持ちをメンテナンスするための「ハッピーリスト」。

『ねる』『ゴロゴロする』『好きなものを食べる』『ボーっとする』など、忙しい子育ての中でちょっとやってみたくなることがたくさん載っています。

チアキさん
「日々の生活のスキマ時間でできることをできるだけ多く持つ。それがしんどくならない一つのカギかなと思っています。早め早めに小出しで気分転換をする。ちょっと心が元気になることをする。一つ自分に優しいことをするというのが大事です。どんなことで元気になれるのか、自分でも余裕のあるときにたくさん書き留めておくといいかなと思います」

子育て中の皆さん、きょうも子育てお疲れ様です。

ほんの少し疲れてしまったら、我慢しないで3つの『いい』を思い出してください。

子育ての味方は、必ずそばにいます。

子どもと同じように、自分のことも大切にしてほしい。

このことが、あなたに届くといいなと感じています。

ネットワーク報道部 記者

野田 綾

2004年入局。松山局、さいたま局を経てネットワーク報道部。
3児の母。
子どもの権利や子育てなどをテーマに取材。

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