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コロナ禍で専門家に聞く①“自宅がツライ理由”

新型コロナウイルスの影響で自宅にこもる日々。
外出の自粛要請などは少しずつ緩和されつつありますが、自宅で家族と一緒に過ごすのがつらくなり、家族関係が変わってしまったと感じている人もいるかもしれません。
このままだと、家事や育児がどんどんつらくなってしまうおそれもあります。
今回のコラムでは、どのように気持ちを整理すればいいのか、社会の変化と心の問題に詳しい専門家に聞きました。
(制作局ディレクター 柿沼緑 ネットワーク報道部記者 野田綾)

家族と一緒なのがツライのはなぜ?

ふだんは週末しかゆっくりできない人にとって、家族と自宅で過ごす時間が増える「巣ごもり」は、喜ばしいものだと思います。
一方で、家族と一緒に過ごす時間が増えたことでストレスを感じたり、ツライと感じたりしている人がいるのも事実のようです。

「旦那が怖いって、心の根底で思っていたことに気づいたよ。家にいる時間が長くなって」

SNSでは、家庭内の変化や居心地の悪さを嘆く投稿が目につくようになっています。
生活の軸であるはずの家庭で過ごすことがなぜストレスになるのか、診療の経験が豊富な東京・新宿区のクリニックの精神科医、加茂登志子さんに聞きました。

加茂医師
「外に出られない今こそ家族関係を温めようという人もいると思います。でも、ふだんの生活がバラバラだからこそうまくいっていた家庭もあります。そういう家庭は結構つらい状況なのだと思います」

家族の時間を楽しめていても・・・様子に変化が

加茂さんは育児に悩む親と子どもの関係や、夫婦関係を改善するための診療を行っています。
外出の自粛が求められるようになってからは、オンライン診療に切り替えました。
そのやりとりを通じて、外出の自粛が家族どうしの関係に暗い影を落とし始めているケースもあると感じています。
加茂さんが相談を受けている複数の家族は、外出の自粛が始まった最初の週は「みんな一緒にいられて嬉しい」という雰囲気でしたが、2週目になると様子が変わったそうです。
父親がテレワークになり、子どもも保育園に行けなくなると、母親は子どもを怒鳴るなど、どうしてもつらくあたってしまうようになりました。
家庭内の雰囲気は悪くなり、もともとくすぶっていたもめ事も再燃し、子どもはピリピリした空気を感じて「赤ちゃんがえり」をしたり、きょうだいげんかが増えたりするなど「負の連鎖」に陥ったといいます。
どうしてこうなってしまうのでしょうか。加茂さんはこう分析しています。

加茂医師
「これまでは外出することで家庭内にあるネガティブな感情が噴き出すのを回避できていましたが、家族がずっと集まっていると、そのネガティブなものが噴出してしまうのです」

そしてもう1つは、家族それぞれの生活スタイルが変わることで、家庭内のバランスが崩れることだといいます。

加茂医師
「生活が激変したにもかかわらず、家庭内で1人だけ生活スタイルを変えない人がいたら、もめ事に発展してしまいます。例えば、家事をまったくしない夫がそのまま家にいるようになると、妻は昼ごはんまで用意しなくてはいけなくなり、家事が増えるので、不満がたまっていきます。これまでの生活スタイルを変えようとしない家族がいると不和の要因になります」

なぜDVは増えるのか

外出の自粛が長引くことで、家庭内暴力=DVが増えることも懸念されています。
それにも理由があるそうです。

加茂医師
「災害時に避難生活が続くとDVが増えるメカニズムと似ています。もともと暴力的な性格の人もいますが、そうでなくてもストレスがたまったり、どうしても自分で解決できない問題が出てきたりしてしまうとイライラが高じて暴力に発展してしまうことがあります。つまり、自分の受け入れ能力の範囲、キャパシティーが小さくなってしまい、即効性のある解決法として暴力を行使してしまうのです。行動が制限されている今のような環境で発生しやすくなります」

もちろん暴力で何かが解決されるわけではありませんが、経済的な不安、行動が制限される窮屈さ、家族間の不和などさまざまなストレスが重なる中で、気分転換など 別の方法を見つけられない人が暴力で発散しようとしているといいます。

加茂医師
「いわゆる八つ当たりですね。別のところに怒りを感じていても、子どもが何かこぼしたとか、パートナーのひと言に腹が立ったとか、一番身近な家族に怒りの矛先が向くのがDVなのです。これにアルコールの問題などが重なれば、さらに状況は悪くなります」

“逃げなさい”

パートナーが暴力的になったとき、どう身を守ればよいのでしょうか。
加茂さんは、一番大切なことは被害者が我慢しないことだと話してくれました。

加茂医師
「東日本大震災の際、DVなどの被害に遭った人は『こんな状況だから仕方ない』『我慢できない私が悪い』などと考え、我慢してしまっていました。そうすると問題はさらに深刻になります。ため込んで誰にも相談しないと状況は悪化する一方です」

ただ、外出自粛の影響で行政の窓口に相談に行くのは難しい中、加害者がいる自宅から相談するのは簡単なことではありません。こうした状況では、どうすればいいのでしょうか。

「逃げなさい。逃げられないと思うかもしれませんが、自分や子どもの安全が維持できないようなら逃げてください。近くの交番が一番アクセスしやすいでしょう。内閣府も電話のほかメールやチャットで相談に応じる窓口を設置しています。すぐに相談してください」

内閣府DV相談+
https://soudanplus.jp/

ストレスは「当たり前」

最後に、加茂さんは、制限された生活の中でストレスを感じるのは
「当たり前のこと」だと教えてくれました。

加茂医師
「自分だけが特別にイライラする訳ではありません。正常な反応だと気づくと、心に余裕ができます。余裕を取り戻してから、不安な生活の中で家族それぞれにできることは何か、共有することが大事だと思います」

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