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もうひとつの居場所「ひだまり」

NHKが行っている「#もしかして…虐待を考えるキャンペーン」。
2月29日(土)午後9時から、Eテレで特別番組を放送します。
番組では、経済的な事情や自身の病気、配偶者との離別など、さまざまな事情で子育てに困難を感じている家庭を支える取り組みをご紹介します。
そこには、「ひだまり」という名のとおり、子どもを温かく包み込む、もうひとつの居場所がありました。

(ネットワーク報道部 大窪奈緒子)

その場所は、栃木県日光市にあります。
NPO法人「だいじょうぶ」が運営する「ひだまり」です。
「ひだまり」では、日光市と連携して、養育困難な家庭の子どもを預かり、世話をしています。

クリスマスの衣装

私たち取材陣が訪れたのは、ちょうどクリスマス会の日。
この日は、子どもたちにお姫様・王子様気分でクリスマスを楽しんでもらおうと、黄色や水色などあざやかな色のドレスや子ども用のタキシードが準備されていました。
子どもたちは、さっそく、好きなものを選んで身につけます。
歓声をあげながら着替える子。
クルクル回ってドレスのすそをひるがえしながら踊る子。

サンタさんが登場してプレゼントを受け取ると興奮も最高潮に。
その後、スタッフ手作りのあたたかいごちそうをたっぷり食べて、夕方までたくさん遊びました。

笑顔あふれるこの子どもたちの親は、何らかの事情で育児に困難さを感じて、この施設を利用しています。
ごはんを毎食用意するのが難しい、子どもの相手をする時間が取れない、中には、子どもをたたいてしまうという親もいるということです。

日光市外観

このNPOは、日光市と連携して、市の窓口に相談を寄せてきた親子などの話を聞き、必要に応じて日中、子どもを預かったり、場合によっては夜間も預かったりしています。

「一生懸命、子どもを育てている親でも、失業や病気など困難が重なると、子どもにあたったり、子育てをする気力を失ったりすることがある」

そう話すのは、10年前の2010年に「ひだまり」を作ったひとり、NPO法人「だいじょうぶ」の理事長・畠山由美さんです。

畠山さん

児童養護施設で働いた経験や、ケアマネージャーとして高齢者支援に携わった経験があります。
そして、3つ子の男の子を育て上げた母親でもあります。

畠山さんは、子どもを預かることで、親が子育てする力を取り戻す様子を何度も見てきました。

「本当に1週間に1回だけでも自分の時間が持てれば、それだけで明日から頑張れるって言ってくださる方もいて。『ひだまり』を子どもが利用する日は(親が)『自分の日だ』って思ってくれて。自分のためにセルフケアですよね。自分のための時間、ちょっとほっとするとか、仕事をするとか、病院に行くとか。それぞれ過ごし方は違うけれど、また子育てに元気に向き合えると言ってくださる。たとえ週に1日でも有効だなというふうに感じています」

食事風景

「ひだまり」が目指すのは「やさしい実家」のような存在です。
ガス代が払えない、風呂が壊れている、親の帰りが遅いという家庭の子どもには、スタッフが夕飯を食べさせ、お風呂に入れてくれます。

子どもにはもちろん、親にも寄り添います。お迎えに来た母親を台所に招き入れて、温かいお茶を出しながら、「大丈夫?」「最近どう?」「心配なことはない?」と声をかけます。
洗濯物がたまってしまったという相談を受ければ、「持ってきたら、洗ってあげるわよ」と声をかけ、ひだまりで洗濯をして畳んで返してあげます。

共に子育てをし、生活を支えることで、虐待に至るのを未然に防ぐ効果もあるといいます。

利用できるのは、日光市やNPOが支援が必要だと判断した人たちです。
利用料はかかりません。
運営は日光市からの委託料や寄付でまかなわれています。

畠山さん

「大人であっても、子育てをするときに、やっぱり誰かに頼りたいし、話も聞いてもらいたい。それに、親だって、親自身がくつろげて、大事にされる場所が必要です。優しい実家があれば、みんな何とか乗り越えていけるのです。けれど、頼れる親や兄弟がいる人ばかりではありません。本当に困ったときに『困った、助けて』と言えない、言える人がいない時に、『困った』と言ってもらえる場所でありたいと思っています。そして、私たちで助けられないこともあるかもしれないけど、相談してくれれば、一緒に解決に向かえるよねということなのです。誰も頼れないお母さんにまずくつろいでもらう。自分自身をいたわってもらう。大事にしてもらう。それが必ず子どもにいい影響を与えると信じてやっています」
(畠山さん)

栃木県内では、「ひだまり」の取り組みをきっかけに、養育に困難を抱える親子を支援する居場所づくりの重要性が理解され、今では宇都宮市や小山市など、「ひだまり」をふくむ県内9か所でこうした居場所が作られています。
私たちは、今回の取材を通じて、こうした動きが全国に広まってほしいと感じました。

Eテレの「#もしかしてしんどい?~虐待を考えるキャンペーン特番~」では、なぜ親たちは追い詰められているのか、その声を聞き、虐待を防ぐために何が必要なのか、「ひだまり」の取り組みも含めてお伝えします。
放送はEテレで、2月29日(土)午後9時からです。
ぜひご覧ください。

(番組について詳しくはこちら)
「くうねるあそぶ こども応援宣言」
https://nhk.jp/kodomo-pj/

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