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コラム 双子や3つ子の育児 アンケートでわかった“悲痛な声”

愛知県で3つ子の1人を死亡させた罪に問われた母親の裁判で、今週、懲役3年6か月の実刑判決が確定しました。
この裁判では3人の乳児を同時に育てる過酷さが浮き彫りになり、双子や3つ子を育てる「多胎家庭」の支援の大切さが知られるきっかけになりました。
以前からこの問題に関心を持っていた東京のある母親が、先月、多胎育児の“困りごと”に関するアンケートを行ったところ、1週間で600人を超える当事者から回答が寄せられました。集まったのは、想像以上の悲痛な叫びでした。
(ネットワーク報道部・有吉桃子)

友人が困っている

アンケートを行ったのは、自身も8歳と4歳の子どもがいる市倉加寿代さんです。
双子を産んだ友人の大変さを目の当たりにしたことがその理由です。

「一緒に遊ぼうといっても、双子を連れての外出が難しいので、彼女の家でしか集まれません。彼女が自治体の子育て支援のサービスを受けようとしても、1人で2人を連れて役所に行くのは困難ですし、双子にはお姉ちゃんもいて、保育園の送迎も大変です。私は彼女のサポートをしていましたが、双子が泣いて追い詰められた時、彼女自身がクローゼットの中に閉じこもって時間が過ぎるのを待つことがあると聞いた時に、これは友情とか家族の頑張りでなんとかなるレベルを超えていると思いました」(市倉さん)

アンケートに600人以上

そこで市倉さんは、多胎児を育てるときの“困りごと”を可視化しようと、先月、インターネットを通じて当事者の声を聞くためのアンケートを始めました。協力を呼びかけたのは、自身のSNSと友人を通じた依頼のみ、回答期間は1週間でしたが、予想をはるかに超える662人の当事者から回答が寄せられました。
「20件ぐらい集まれば良いと思っていたので、これだけ集まったことにとてもびっくりしました。声を上げる機会をみんなこんなに欲してたんだなと感じます」

想像以上に悲痛

もうひとつ市倉さんが驚いたのは、寄せられた声が想像以上に悲痛なことでした。

“虐待する気持ちも分かる”

「毎日2~3時間睡眠で1日中泣き声がする中から逃れられない状況がどれだけ精神を崩壊するか想像できますか?」
「声を上げる気力も暇もない。問題に気づくのは、死亡事故や事件が起きた時。多胎育児をしていれば、誰にも起こりうる、みんなぎりぎりのところで耐えている」
「ノイローゼ手前にまでなり、子どもを投げてしまったこともあります」
「毎日が戦争。気が狂うし死にたくなる。虐待する気持ちも分かってしまう」
「何度も子どもを窓から落とそうかと考えましたし、毎日泣いていました・・・」
「もう小学生ですが3歳頃までの記憶がありません」
「多胎の妊娠出産育児は絶対1人では無理。1人でやったら虐待かうつになる。極限状態で、きょうも生き延びたと思ってやっている人も多い」
「朝起きてミルクまたは離乳食、おむつ、お昼の寝かしつけ、家事、お風呂、夜の寝かしつけ、毎日のタスクの山をなんとかこなし、1日を終えるのに必死。夜は10分寝て起こされ、1時間かけて夜泣きの子を寝かしつけ、30分寝て起こされ、また夜泣き。気がついたら外は明るくなり、また朝がやってきて1日が始まります」

“睡眠どころか食事も病院も排せつも・・・”

「食事も1日1回、おにぎりだけ、という日が本当にあります。トイレも我慢し、大人なのに漏らしてしまったことさえあります」
「目が離せないので3日間自分のお風呂に入れなかったこともあります」
「1人寝たら1人起きての繰り返し、ご飯は流し込み、シャワーは3分」
「双方の実家が遠方のために歯医者に行くことが出来ず、神経まで達し抜歯することに」
「ある日、耳が痛すぎて、それでも病院に2人を連れて行くのをちゅうちょしていたが、いよいよ聞こえづらくなり意を決して受診すると鼓膜が破れていた」

市倉さんは、「アンケートでは、愛知県の3つ子の母親の事件について、ひと事とは思えないという趣旨のコメントも複数見られました。こんなに追い詰められているというのは想像以上ですし、虐待ぎりぎり、もしくはちょっとしてしまっているかもしれない人がこんなにいるということがすごくショックでした」と話しています。

つらい理由

なぜここまで追い詰められるのでしょうか。アンケートの中で、「つらい」と感じた場面を複数回答で聞いたところ、「外出・移動が困難である」が88%、「自分の時間が取れない」が81%、「自身の睡眠不足・体調不良」が79%とほとんどの人がすべてに該当すると答えました。 さらに、「気持ちがふさぎ込んだり落ち込んだり、子どもに対してネガティブな感情を持ったことはあるか?あったか?」と聞いたところ、93%が「ある」、もしくは「あった」と答えました。

さらに、アンケートでは、過酷な状況であるにもかかわらず、外出・移動が大変で、誰かを頼るには高いハードルがあることも浮き彫りになりました。

“誰も頼れない”

「夫や家族ですら複数の子どもを見るのは無理」
「3人を実家や義実家に預けるのはあまりにも申し訳なく出来ない」
「困ったらいつでも電話してって役所の人は言うけど、電話の声で起きちゃうかもしれないと思うと電話も出来ない」
「乳児期段階で団地の3階から降りられない。若い担当保健師に言ったら2人同時に担いで降りればといわれ、何も通じなかった」
「そもそも外に出られないので預けに行けない」
「夫が育休を申請しましたが2年連続拒否されました」
「双子ベビーカーは大型のためバスに乗車拒否されたり、エレベーターのない駅では駅員に子どもを2人ともだっこしてもらわないと、と言われる」
「公共交通機関に乗ろうとすると大変な思いをする。すべてあきらめる」
「3人の機嫌を取りながら着替えさせ、おむつ替え。そしてバッグの中に3人分のおむつ、着替え、おやつ、お茶、タオルなどなど。3人をベビーカーに乗せるのも大変です。そして駐車場まで移動、車のチャイルドシートに移動、これも3人分。電車は最初から乗るという選択肢もありませんでした」

どうサポートすれば?

(市倉さんとアンケートに協力した母親たち)

市倉さんは、病児保育や障害児保育など、子育てに関する問題に取り組むNPO法人に勤めています。
アンケートの反響が広がる中、勤め先からも協力を得られることになりました。
そして、さらに多くの声を集めるために、アンケートを再開し、▽自宅訪問型の公的保育サービスの充実や▽ベビーシッター利用の補助、▽子育て応援タクシーの普及や利用料の補助、▽保育の必要性認定に「多胎児であること」を入れることなどを、国や自治体に求めていくことにしています。

「本当に驚いたのは600人の人がこんなにつらい状況だったのかということです。これだけ自由なことばでつらさを訴えてくれたので、本当に胸に迫ると思います。これを見て、解決する手段をお持ちの方に、どうにか一緒にやっていただけたらと思います。いろんな場面で彼女たちは絶望しているので、変わるといいと思っています」(市倉さん)

私自身、4歳と1歳の育児中です。アンケートを読んでいると、多胎育児の大変さがリアルに迫ってきて、涙が出たり、絶句したり。これまで当事者が声を上げることが難しく「可視化」されてこなかった、多胎育児にどんなサポートが必要なのか。悲しい事件や事故をなくしていくために、真剣に考える必要があると思いました。

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