お知らせ

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「2021年衆院選の『1票の格差』は憲法違反か?」の記事を掲載しました。
09/30
「国民審査後の主な裁判」を更新しました。

国民審査とは

「社会の審判」である最高裁判所の裁判官たちがフェアでなければ、
社会がゆがみます。それを私たちがチェックするのが国民審査です。

三権の1つ、「司法」の「結論」は最高裁判所が示します。ほかの裁判所が異なる判断をすることは事実上できません。
国の法律が憲法に違反していないか、行政の対応に問題がないかを審査する役割もあります。
こうした強い権限を持つ15人の裁判官たちがそれにふさわしいかどうか、私たちが投票という形で審査し、結果によっては辞めさせられる制度が、憲法で定められた国民審査です。今回は15人中、11人が審査対象です。

国民審査の開票結果 
全員が「信任」

氏名 「×」の数 「×」の割合
深山 卓也 4,473,315 7.82%
三浦 守 3,813,025 6.67%
草野 耕一 3,821,616 6.68%
宇賀 克也 3,911,314 6.84%
林 道晴 4,397,748 7.69%
岡村 和美 4,149,807 7.26%
長嶺 安政 4,138,543 7.24%
安浪 亮介 3,384,687 5.92%
渡邉 恵理子 3,468,613 6.07%
岡 正晶 3,544,361 6.20%
堺 徹 3,539,058 6.19%
合計 42,642,087 6.78%
前回(2017年) 30,667,517 7.99%


今回の国民審査の結果、全員が「信任」されました。
国民審査の制度に詳しい明治大学政治経済学部の西川伸一教授は次のように解説しています。
「裁判官ごとに見ると、投票行動に特徴がみられる。対象となった11人のうち罷免を求める割合が7%を超えた4人は、いずれも夫婦別姓をめぐる判断で『民法の規定は憲法に違反しない』という結論に賛同していた。一方で6%台やそれ未満の人は『憲法違反』と判断、または当時、就任していなかった。夫婦の名字をめぐる議論は身近なテーマで、選挙の争点の1つにもなっていて、1%の差が生じたのは決して偶然ではなく、それぞれの裁判官の判断が投票行動に影響した可能性が高いと考えられる」

都道府県別の「不信任」の割合
(クリックするとPDFが開きます)


西川教授は「今回は就任したばかりで最高裁での仕事ぶりが十分に分からない裁判官が4人も審査の対象となるなど、制度の課題は多い。国民審査をより質の高い制度にするための議論が必要だ」とも指摘しています。

過去(1949年~2017年)に行われた国民審査の結果。

どうやって審査する?

審査できるのは18歳以上の選挙権を持つ人です。衆議院選挙にあわせて審査します。

投票所で選挙の投票用紙と一緒に国民審査の投票用紙が渡されます(期日前投票の場合も同じです)。
投票用紙には、最高裁に就任してから一度も審査を受けていない裁判官、または審査から10年以上経った裁判官の名前が書かれています。
今回の審査は前回29年の衆院選以降に就任した11人が対象です。これまでで2番目に多くなっています。11人の裁判官にとっては「最初で最後の審査」となります。


投票では、辞めさせたい人がいた場合に「×」を書いてください。
「×」が有効投票の過半数に達した裁判官は罷免されます。
「○」などほかの印や文字を書くと投票そのものが無効になります。
また白紙で投票したときは「全員信任」となります。
投票率が1%を下回った場合は過半数に達しても罷免されません。
投票の結果は衆議院選挙の結果とともに公表されます。

知っていますか?
国民審査の「豆知識」

大事な投票と分かっても・・・
判断材料は?

投票日の前に、裁判官の経歴や担当した主な裁判が書かれた「公報」が各世帯に配られます。
このNHKサイトにも、審査対象の11人の裁判官のプロフィールや主な裁判の情報を掲載しています。例えば自分の関心のある分野の裁判をクリックして、それぞれの裁判官がどのような判断を示し意見を述べたかを見たり、裁判官の個人の経歴を見たりして、さまざまな情報をもとに判断につなげてください。

過去に罷免は「ゼロ」。
「情報が少ない」という指摘も

戦後にこの制度ができて以来、罷免された裁判官は1人もいません。これまでで「×」の割合が最も多かったのは、1972年に審査を受けた下田武三裁判官の15.17%でした。最近は10%を下回っています。
「制度の意義の周知や判断材料になる情報が少なく、形骸化している」という指摘もあり、国会で制度の改正が議論になったこともあります。

クリックするとPDFが開きます

もともとはアメリカの制度?

国民審査の制度は戦後に憲法を制定する過程で、アメリカのミズーリ州などで導入された制度を参考に考案されました。州知事が諮問委員会から示されたリストをもとに裁判官を任命し、その後、住民の投票による審査を行う仕組みです。ちなみにアメリカの連邦最高裁には、こうした国民が審査をする制度はありません。

ショート動画解説・国民審査とは?