世論調査 価値観の変化は

今回の世論調査ではさまざまな価値観についても同じ方法で質問しました。

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夫婦の名字や同性どうしの結婚(いわゆる同性婚)に関する結果について、民法が専門で家族の問題に詳しい棚村政行 早稲田大学教授に聞きました。

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Q 今回の結果をどう分析しますか?

「夫婦は同じ名字を名乗るべき」と考える人が前回調査に比べ20ポイントも減り、同性どうしの結婚を認める人が過半数にのぼったことは家族や婚姻の形の変化を社会が受け入れていることの表れだと感じます。この間、女性の社会進出はめざましく共働きの家庭も増える中で、女性も社会で目標を持ち男性と切磋琢磨して働くという雰囲気や意識が一般化してきました。こうした社会全体の変化が「夫は仕事で妻は家事育児」というこれまでの伝統的な家族や婚姻のあり方から対等なパートナーシップのような関係性を認める意識の変化に結びついているのだと考えられます。また、世代別にみると、家族の「形」を重視している年配層に対し、若い人たちは家族が自由に多様化することをよしとする傾向が顕著です。40代50代にも意識の変化がみられます。結婚しても働くのが当たり前で女性だからと差別されることはないという意識が広がりつつあるのでしょう。今回は結果として夫婦は同じ名字であるべきという人が上回っていますが、数年後には逆転することが予想されます。

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Q 今回初めて調査を行った男性どうし女性どうしのいわゆる「同性婚」については「認めるべき」という回答が過半数を超えました。これはどう評価しますか?

正直言って驚きました。同性婚に関する議論が先んじて行われてきた欧米の調査でも賛否は拮抗しています。従来は結婚の大きな目的は子どもを産んで育てることであり、男女に限られるものだという考えが一般的でした。この考え方を打破するために欧米では性別にこだわらないパートナーシップ制度を導入するなど段階を踏んで時間をかけて徐々に支持が広がり、ようやく同性婚が認められてきました。ところが日本では同性婚という言葉さえ知られていなかったのにここ数年の間に急速に認識が広まり、理解され受け入れられるというところまできたことになります。
ものすごいスピードで理解が広まった背景には、身近な自治体や職場で性的マイノリティ、いわゆるLGBTの人たちへの取り組みが具体的に動き始めたということがあると思います。2003年に国会で性同一性障害特例法が成立し、その後、東京・渋谷区や世田谷区などが同性のカップルを公認するパートナーシップ制度を設けました。家族同様のサービスを提供する企業も増えています。こうした動きに伴いこれまで差別や偏見を恐れて声をあげられなかった当事者の人たちが積極的に自分たちの存在や主張を述べるようになりました。その声がメディアでとりあげられ、若い人たちを中心に違和感なく交流や相互理解が深まりつつあります。こうした社会の流れが調査結果に如実に表れたといえるでしょう。

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Q 家族に関する価値観の変化と施行70年を迎えた憲法には関わりがあるでしょうか?

国民主権や基本的人権の尊重、平和主義という憲法の理念が浸透し、国民の生活や家族のあり方にも影響を与えていると思います。決まった形を押しつけられるのではなく、憲法が示す自由や平等、異なるものに対する寛容さという理念に沿った形で婚姻や家族が何かについて若い人を中心に考え始めているのだと思います。
昔に比べて家族は小さく弱くなっています。子育てや介護の問題も、家族の中で負担を背負い合うという考え方から家族をどう社会が支えるかという方向にシフトしています。家庭における個人の尊厳と両性の平等を定めた憲法24条についても改正の意見がありますが、社会の現状や一般国民の意見を反映する形で議論を進めてほしいと思います。