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総理大臣公邸に幽霊? ~質問主意書は何のため

『質問主意書』という内閣に文書で質問を行う制度。口頭での質問機会が限られた議員、主に野党議員にとっては、大事な制度です。しかし、霞が関の官僚たちにはどうも不評のようです。しかも、「不毛なものが多い」という声も。「総理大臣公邸に幽霊がでるのか」といった、ちょっと驚きの質問もあったそうです。(社会部記者 中村雄一郎)

総理大臣公邸に幽霊!?

この制度、いったい大事なのか、それとも不毛なのか、それを考える前に、さきほどの総理大臣公邸の質問を全文ご覧ください。

「旧総理大臣官邸である総理大臣公邸には、二・二六事件等の幽霊が出るとの噂があるがそれは事実か。安倍総理が公邸に引っ越さないのはそのためか」(2013年5月15日)

質問をした議員の問題意識は「公費が使われている総理大臣公邸が十分に活用されていないのではないか」というものだったそうです。しかし、官僚が“不毛”だと感じるのもうなずける内容です。

答弁は、「お尋ねの件については、承知していない」というものでした。

修正でがっかりすることも

一方、質問への不満より、それに対する内閣の答弁書に問題があるのではと指摘する官僚もいました。ある20代の官僚は、せっかく丁寧に作った答弁書を“あるところ”に修正されたと証言します。

(20代官僚)「内閣法制局から『ここまで丁寧に答えなくてよい』と指摘され、全く内容がないものになってしまったのです。せっかく苦労して書いたのに、がっかりしました」

質問主意書に対する答弁書は、各省庁の担当者が作った後、内閣法制局が審査することになっています。内閣法制局といえば、“法の番人”とも呼ばれるところ。そこで、なぜか内容が「換骨奪胎」されたというのです。

何より、答弁書は閣議決定を経て、内閣総理大臣名で出される、大変重みのあるもののはず。どうやら、主意書を出す議員の側だけでなく内閣の答弁書にも問題がありそうです。

質問主意書、どの議員が多い?

それでは、ここでこの質問主意書を誰がどのくらい提出しているのか調べてみました。(平成29年1月の第193回国会以降)こちらが、提出本数で上位10人のランキングです。まずは衆議院から。

500人近い衆議院議員のうち、質問主意書を出したことがあるのは91人。総本数は1513本で、その6割を上位10人が占めています。顔ぶれを見ると旧民主党がほとんどです。

社会保障を立て直す国民会議の松原仁さん(東京比例)も、去年5月まで民主党や希望の党に所属していました。唯一の例外は仲里利信さん(沖縄4区)。会派に所属しておらず、口頭の質問の機会が制限されていたためと見られます。

続いて、参議院です。

240人余りの参議院議員のうち、質問主意書を出したことがあるのは50人。総本数は676本で、上位10人が8割を占めています。衆議院と同じく、顔ぶれを見ると旧民主党がほとんどです。自民党の藤末健三さんももともとは民主党(全国比例)でした。

ランキング1位の議員に聞いた

野党の中でも、比較的質問の時間が確保された野党第一党が積極的に活用していた状況が分かります。そこで、衆議院のランキング一位で、いま立憲民主党の政調会長、逢坂誠二さん(北海道8区)に、この質問主意書の問題、ずばり聞いてみました。

逢坂誠二議員(右)

(記者)かつては年間100本から200本だったのが、10年ほど前から急増し、今は1000本前後に。これはどうしてでしょう?

(逢坂議員)「平成18年から急増したのは、“質問主意書のキング”として知られる鈴木宗男さんが多く出していたからでしょう。私も多く出すほうですが、いまは活用する層が広がっていると感じます」

(記者)なぜ活用が広がっているのでしょうか?

(逢坂議員)「野党の質問時間が限られる中で、今、委員会の中でほとんど答えないということが繰り返されています。モリ加計の時もそうでしたよね。一方、質問主意書には必ず答えなければならないというメリットがあります。また、通常の質問だと、官僚が所管を押しつけ合って、なかなか回答が出てこないケースもあります」
「私の事務所にもよく官僚が質問取りに来るのですが、『質問されても所管じゃないと答えますよ』と言われたり、『どっちに質問したいんですか』と逆に聞かれたり。質問主意書は、そうした押し問答せずにできるメリットがあります」

(記者)その効果とは?

(逢坂議員)「質問主意書を出すことによって、政府の判断を促したケースはいくつもあります。技能実習生が福島の除染に従事していることはおかしいと思って質問したところ、回答が来る前に政府から『除染への従事は不適切』だという発表がありました。同様なケースは、ほかにもあります。政府としては野党に言われて直したみたいになるので、その前に先んじて発表するわけです」

(記者)しかし、官僚からは“不毛な質問”が多いという意見もあります。

(逢坂議員)「もちろん官僚の負担になっていることは分かっています。しかし、質問をすることしか野党議員は武器がないですから。与党議員は、政府に対して、委員会以外にもさまざまな要求をして閣議決定前に、情報を持っています。私たちも負担にならないよう改善に取り組んできたつもりです」

こう話した逢坂さん。最後にさきほど触れた“内容のない答弁書”について、こう言及しました。

(逢坂議員)「委員会だけでなく質問主意書の答弁も非常に雑になっています。『おたずねの趣旨が明らかではない』とか、理由を示さずに『そのような懸念は当たりません』とか。質問主意書の制度そのものは非常に重要なものですが、こんな答弁書だと、時間の無駄使いだなと思われるでしょう」

皆さんはどう考えますか?

質問主意書に対しては、取材したある与党議員も「いちいち調べさせられて、たまらないという官僚の気持ちはよく分かるが、野党の政治家は主意書がないと政府の政策を知る手段がない」とその意義は認めていました。

この問題、皆さんはどう考えますか?どうすれば官僚の負担は軽減されると思いますか?こちらまでご意見をお寄せください。

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