証言 当事者たちの声【ことしの重大事件】安倍元首相銃撃事件 奈良県警本部長会見全文

2022年12月28日事件

ことしの重大事件、安倍元総理大臣銃撃事件。

警備の検証結果を踏まえ辞職した奈良県警の本部長が、ことし8月の最後の会見で語ったこととは。

全文を掲載します。

冒頭コメント全文

奈良県警本部長の鬼塚でございます。本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。

改めまして、本年7月8日、県下、近鉄大和西大寺駅北側ロータリー付近にて選挙演説中であった安倍元内閣総理大臣が銃撃され、お亡くなりになられたことに対しまして、哀悼の誠をささげますとともに、ご遺族をはじめ多くの関係者の方々に対し、衷心よりお悔やみを申し上げます。

また、このたびの事案により、県民、国民の皆さま方をはじめ国内外の多くの方々にも、多大なるご不安、ご心配をおかけすることとなり、心よりおわび申し上げます。

このたびの事案は、奈良市内居住の男41歳が、第26回参議院議員通常選挙の応援演説のため当県を訪れていた警護対象者でございました、安倍元内閣総理大臣を手製の拳銃のような物を発砲し、殺害したものであります。

当県警として、所要の体制を確立し、警護警備を実施していた最中に発生したものであり、県下の治安責任を有する警察本部長として、重大かつ深刻な事態を招いたことに対し、責任を痛感しているところであります。事態の重大さに鑑み、国家公安委員会および警察庁長官に対して辞職を願い出ましたところ、本日ご承認を頂いたところであります。

本事案発生以降、国家公安委員会および警察庁において、検証、見直しが行われ、本日、警護予測の体制をはじめとする警護の強化方策が取りまとめられたものと承知しております。

本事案を防ぐことができなかったことを猛省し、このたび示された諸対策を直ちにかつ着実に実践しながら、新たな警護体制を構築していくことを奈良県警察としてお誓い申し上げます。

私からは以上であります。

質疑応答

(質問)
辞職に至った思いをより詳しく教えて下さい。
(鬼塚本部長)
7月8日の事案発生以来、私自身、個人的に敬愛する安倍元内閣総理大臣がお亡くなりになったとの知らせを受けて、私自身、計りきれない衝撃と責任の重さに押しつぶされそうになる毎日でありました。
その間、辞職の決断に一切の迷いやしゅん巡がなかったわけではありませんが、冒頭、申し上げたとおり、事態の重大さに鑑み、職を辞して責任を取るべきであると判断するに至ったわけです。

(質問)
「迷いやしゅん巡」の意味について教えて下さい。
(鬼塚本部長)
7月の9日だったと記憶しておりますが、その時点において、事案の解明と警護上の問題を確認し、立て直していくことが私の責任であり、県民、国民の皆様に対する責任であり、多くの関係者の方々、ご遺族の方々、なによりもお亡くなりになられた安倍元内閣総理大臣に対する最大の弔いであり、責任であるとも申し上げました。
当然ながら、家族もおりますし、辞職をすることが全てにおいて責任を果たすことになるのかという点についても深く考えましたが、私自身の責任の取り方として、このタイミングを区切りとして、職を辞して責任をとることが最良の判断であると考えるに至ったわけであります。

(質問)
3点うかがいます。
まず、辞任を決めたのはいつごろでしょうか。
次に、警護の最大の問題はどういったものでしょうか。
最後に、辞任されたあと鬼塚本部長はどうされるのか。
以上、3点について伺います。
(鬼塚本部長)
まず決断の時期というご質問に関しては、時期について正確に申し上げることは大変困難ではありますが、事案発生以来、深く考え、悩み苦しみながらも、家族をはじめ支えてくれる方に相談をいたしまして、繰り返しになりますが、事案の重大さと深刻さ、管轄責任を有する警察本部長としてこれより責任をとるべき道はないと考えた次第であります。

警護上の問題点、最大の要因については、すでに警察庁から発表された検証見直しの報告書の中に記載されているとおり、被疑者の背後からの接近を許してしまったことに尽きるわけですが、その要因の詳細についてはすでに報告書に記載され内容も公表されておりますので、そのとおり理解いただければと思います。

3点目の今後のことにつきましては、本日まだ、辞職の承認を頂きましたが、発令の日付は8月30日となっておりますので、まだ5日、やらなければならない仕事も残っており、本部長として責任を持ってそれを済ませた上で、家族の待つ東京に戻ってゆっくり考えたいと思います。

(質問)
今回、辞職をもって責任をとられるということですが、具体的にどこに責任を感じていますか。
また、(以前の警護)計画を踏襲させてしまったことについては、どう考えていますか。
(鬼塚本部長)
今回の警護上の責任において大きく、現場における警護の問題と警護計画上の問題が指摘されておりますが、警護計画、承認したことはもちろんのこと、県下において行われていた、奈良県警の責任において行われていた警護上生じた深刻かつ重大な結果に対して、管轄責任を有する本部長として責任をとるということであります。

計画の作成自身については結果的に踏襲との記載があり、それもそのとおりではありますが、通常計画を作成するにあたっては以前の計画を参照するのもまた当然のことではあると考えています。問題は、その時々の警護に与える各種の影響を十分に考慮できていたかどうか。今回、当該警護計画書の作成にあたっては、その点は十分ではなかったと評価されており、私自身もそのように理解しております。

(質問)
警察庁から検証結果が発表されましたが、奈良県警として改めて、当日の警護体制を教えて下さい。
(鬼塚本部長)
今回警護に関しましては、すでにご案内のとおり所要の体制で警護にあたっており、現場には10数名の警護員を含む警察官が配置されて、警護にあたっていたことでございます。その後、検証の過程において、私自身も含めて検察庁の検証チームの聴取を受け、関係の書類を全て提出し、県警で把握した内容も含めて、すべて警察庁に報告をした上で今回の検証見直し報告書が作成されておりますので、いま申し上げたような点についてもすべて公表された報告書の中に反映されているものと理解しております。

(質問)
本部長として二度と同じことが起こらないように、「今後こういうところに留意してほしい」などの思いはありますか。
(鬼塚本部長)
見直しについては報告書の中にもございますし、その問題を発生させた当県警としては、それ以上にさらにしっかりとやっていかなければならないと思いますが、およそ警護活動というのは国の民主主義社会の根幹を支える極めて重要な警察活動でありますので、改めてそのことを胸に刻んで、二度とこのようなことが起こらないようにしていかなければならない。

会見終了後

鬼塚本部長は会見終了後、席を立ち上がり、以下のように述べたあと、深々と頭を下げました。

(鬼塚本部長)
皆さま、本当にありがとうございました。
力及ばずこれで県警を去ることになりますが、奈良県警は必ず信頼を取り戻して、県民の国民の皆様のお役に立てるように歯を食いしばってやっていきますので、ぜひ応援をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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