雪が降っていた12月の夜。
パトロール中の警察官は雪だまりにはまっていた軽自動車を見つけた。
シートは後ろに倒され、母親と幼い2人の子どもが川の字で横たわっている。
近くに置かれているのは、火のついた練炭だ。子どもたちの意識はある。
「自殺しようとしたのか?」
警察官が尋ねると、27歳の母親は無言でうなずいた。
なぜ母親は9歳の長男と5歳の長女を連れて“死”を選ぼうとしたのか。
周囲からの「もう少し頑張ろうね」という言葉を母親はどう受け止めたのか。
裁判を通して見えてきたのは、コロナ禍で多くの問題に直面し、孤立した家族の姿だった。
(前橋放送局記者 兼清光太郎)