電車内で喫煙を注意した高校生が相手から暴行を受けて顔を骨折する大けがをした事件。
高校生にはぜんそくの持病がありました。
約5分間にわたって暴行を受けましたが、助けに入った乗客はいなかったといいます。
皆さんはこの事件どう受け止めましたか。
(宇都宮局記者 齋藤貴浩)
※8月10日更新
2022年1月27日事件 社会
電車内で喫煙を注意した高校生が相手から暴行を受けて顔を骨折する大けがをした事件。
高校生にはぜんそくの持病がありました。
約5分間にわたって暴行を受けましたが、助けに入った乗客はいなかったといいます。
皆さんはこの事件どう受け止めましたか。
(宇都宮局記者 齋藤貴浩)
※8月10日更新
この事件について、SNSにはさまざまな意見が書き込まれました。
警察への取材をもとにした事件の経緯です。
-1月23日の日曜日の昼ごろ、JR宇都宮線の列車内-
高校2年の男子高校生が、同じ車両の優先席で加熱式たばこを吸っていた当時28歳の飲食店従業員の容疑者に声をかけます。
たばこを吸うのをやめてもらえませんか
なんだお前
注意されると立ち上がって高校生に詰め寄り、どなり始めた容疑者。
高校生は手のひらをかざして制止するような姿勢を取り、こう告げます。
離れて下さい
それに対し…。
「手を出したな」
逆上して高校生の顔を足で蹴ったり殴ったりする暴行を加えます。
騒ぎを知った車掌が駆けつけて「お客様やめてください」と声をかけますが、暴行は止まらなかったといいます。
そして列車が駅のホームに着くと、容疑者は高校生をホームに引きずりおろしてさらに暴行を加え、駅員が止めに入ってようやくやめたということです。
暴行は約5分間にわたり、高校生は顔の骨を折るなどの重傷を負いました。
その後の警察の調べで、高校生にはぜんそくの持病があったことがわかりました。
受動喫煙を避けるために「たばこを吸うのをやめてほしい」と伝えたというのです。
一方、逮捕された容疑者は、調べに対し、「正当防衛だった。相手がけんかを売ってきたのでやりかえしただけだ」などと供述しているといいます。
これについてSNSでは…
この事件の裁判で、宇都宮地方裁判所栃木支部の判決は。
「約5分間にわたって、攻撃意思のない被害者に対して一方的に執ようで相当強度の暴行を加えている。動機および経緯に酌量すべき点はなく、態様も非常に悪質である。被害者は多大な肉体的、精神的苦痛を被っている」
こう指摘して、被告に懲役2年の実刑判決を言い渡しました。
同じような場面に遭遇した場合、どのように対応したらいいのでしょうか。
JR東日本は、列車内にある「SOSボタン」を活用してほしいといいます。
「SOSボタン」は多くの場合、乗降口の扉の横に設置されていて、このボタンを押すと乗務員と連絡をとることができ、状況に応じて乗務員が駆けつけたり通報したりするということです。
ボタンを押して電車を止めてしまうことをためらう人は少なくないと思いますが、JRは「危険だと感じたら、ためらわずに押してほしい」としています。
また犯罪行為を目撃した場合は、警察に直接110番通報するのも方法のひとつです。
専門家にも話を聞きました。
防犯対策に詳しい日本防犯学校副学長の桜井礼子さんは「SOSボタン」について、「相手を刺激しないように隣の車両のボタンを押すのがポイントです」と話しました。
また危機管理や防災について研究している危機管理教育研究所代表の国崎信江さんは、電車内での事件が相次いでいることを踏まえ、次のように述べました。
「今回のような行動をとる人は、刃物や液体を持ち歩いていることも想定されます。危険なものを所持しているかもしれないというイメージを持つことが必要です。今後、鉄道会社などにはモニターや監視カメラを通して車内の異常を感知できるシステム作りが求められるのではないでしょうか」
私自身、同じ宇都宮線を利用することがありますが、ふだん静かな路線だけにショックを受けました。
JR宇都宮駅前で利用客に事件について話を聞くと、「自分がその場にいたらどうしただろう」と自分事に置き換えて考えていた人が多くいました。
女子大学生
「注意することは間違っていなかったと思うが、正しいことを言ってもこういうことが起きてしまうのが怖い。自分だったら注意する勇気は出なくて、車両を移動するなど、逃げることを先に考えると思う」
男子高校生
「迷惑行為を見かけても関わりたくないので、無視してしまう時があるが、困っている人がいたら手伝いたい。ルールを破って悪いことをしている人には自信を持って指摘できたらいいと思う」
30代男性
「高校生だけで処理するのは難しかったと思う。実際にその場面に行かないと何とも言えないが、誰も助けてあげられなかったのは残念で、声をかけてあげられればよかったと思う」
正しいことをした高校生がルールを破った大人に暴行を受けるという理不尽な事件。
自分だったら何ができただろうと考えると、正直何もできなかったかもしれないとも思います。
いざというときに何ができるのか、そして何をすればいいのか。
知っておくことが大切だと改めて感じました。
宇都宮局 記者
齋藤貴浩 2021年入局
警察・司法担当
趣味は休日のモーニングと温泉巡り
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