安心 キケンのない社会をつくろう熱中症リスクだけじゃない ~水辺でのマスクは危険 その理由は

2022年7月6日事故 子ども

例年よりひと足早くやってきた夏。

厚生労働省は、熱中症予防のため、人との距離が確保できる場合などは、屋外ではマスクを外しましょうと呼びかけています。

でも、コロナ禍でマスク生活に慣れた子どもたちの中には、外そうと呼びかけられても外さない子も。

水遊びが増えるこれからの季節、子どもは公園の池など足がつく浅い場所でも溺れる危険があります。

さらに、水辺ではマスクを着けたままだと、熱中症に加えて他にも命の危険があるんです。

子育て中の2人の親が取材しました。

(NHK事件記者取材note編集部 黒川ちえり/ネットワーク報道部記者 藤島新也)

思わぬマスクの危険性

最近では屋外で外すことも増えている新型コロナウイルス感染対策のマスク。

厚生労働省も「夏場にマスクを着けていると熱中症のリスクが高くなる」として注意を呼びかけています。

でも、コロナ禍での習慣からか、外でもマスクを着けて歩く子どもを今もよく見かけます。

私(黒川)も外を歩くとき、子どもたちに「今は外そう」と声をかけるものの、場所に応じて着脱する方が面倒なようで、着けたままのこともしばしば…。

このマスク、熱中症リスクが高まるとされるだけでなく、水辺に近づくときに着けたままだと、いつも以上に命の危険があるという指摘があります。

各地の水難事故について調査・分析している水難学会の会長で、長岡技術科学大学大学院の斎藤秀俊教授です。

先生、マスクを着けたままだと具体的にどんな危険があるんですか。

もし、マスクを着用したまま水に落ちると、マスクをしていないときより溺れて命を落とす危険性が高まります

斎藤教授

斎藤教授が見せてくれたのはある実験の写真です。

➀大人の男性がウレタン製のマスクを着けて水の中に落ちた想定です。

➁男性は落水したあと、すぐに顔を上に向けて浮く姿勢を取りました。

➂ところが、顔は水面に出ているのに呼吸が全くできませんでした。この後、すぐに立ち上がってしまったそうです。

この男性は、長年、水難事故を防ぐための教室を開いている、いわば水に浮くスペシャリスト。その男性でも浮いていることができなかったそうです。

そして、斎藤教授によると、その原因はマスクにあるということです。

マスクをしたまま水に落ちてしまうと

斎藤教授 『水面から顔を出しても水の中にいるのと同じに』
マスクが濡れると水を吸収して顔と密着します。そのとき、マスクと顔の隙間にも水が入り込みます。こうなると、顔が水面に出ていても、水の中にいるのと同じ状態になってしまいます。ですから呼吸をしようと思っても、それは水の中で息をしようとしているのと同じなんです。不織布など他のタイプのマスクでも同様のリスクがあります。

なるほど。よくわかりました。

でも、先生、ちょっとくらいなら水を吸い込んでも大丈夫なんじゃないかと思ってしまいます。

長岡技術科学大学大学院 斎藤秀俊教授

斎藤教授 『呼吸に1回失敗するだけで溺れてしまうリスク』
多くの人がそう考えているのではないかと思いますが、実は、呼吸に1回失敗しただけで溺れて亡くなってしまうことがあります。

最初に息を吸い込もうとした瞬間、マスクと顔の間の水や、マスクにしみこんだ水を一気に吸い込んでしまい、気道に水が入ります。すると、咳き込んでしまって呼吸どころではなくなります。パニックにもなり、呼吸できなくて溺れます。たとえ、足がつく場所でも、最初の呼吸に失敗すれば溺れる危険があると覚えておいてください。

公園にも危険が…

海や川だけでなく、水遊び場のある身近な公園にも危険は潜んでいます。

ママ友の間で「じゃぶじゃぶ池」と呼ばれるちょっとした水辺が公園などには結構ありますし、夏に限らず通年で遊べる水上アスレチックのある公園もあります。

暑い日にはこうした場所で子どもたちを遊ばせる人も多いのではないでしょうか。

先生、子どもたちの足がつくくらい水深が浅い場所でも危険はあるのでしょうか?

斎藤教授 『マスクをしたとたん危険な水辺に』
マスクをしていなければ、なんてことない水辺であっても、マスクをしたとたんに危険な水辺になります。そもそも子どもは水深が浅い場所でも溺れて亡くなるケースは後を絶ちません。その上、マスクをしていれば、溺れてしまう危険性が増すことを理解して欲しいです。

確かに過去には家庭用のプールや公園の噴水など、水深が浅く足がつくような場所でも、子どもが溺れてしまうケースが相次いで起きています。

安全に楽しむためには?

では、どんな点に気を付けて水遊びをしたら良いのでしょうか。

斎藤教授 『見守るのでなく“一緒に遊ぶ”』
大事なのは「目を離さない」ではなく「一緒に遊ぶ」こと。子どもが水の中に入ったり水辺で遊んだりするときには、一緒に遊んでください。小学校入学前の子どもの場合は絶対に。小学校低学年くらいでも安全な遊び方がわからない子もいるので、子どもの事情に合わせて、一緒に遊ぶように心がけてください。

斎藤教授 『水に入るときは必ずマスクを外す 外せないときは近づかない』
どんなに水深が浅くても、水に入って遊ぶときは必ずマスクを外してください。水に入るつもりがなくても、子どもは動き回っているうちに誤って落ちてしまうこともあります。ですから、水辺に近づくときにはマスクをしないのが本当は良い。

でも、新型コロナウイルスの関係で、周辺に人がいて密のような状態になり、マスクを外せないこともあります。その場合には、水辺には近づかない、という判断もあると思います。

でも先生、全く水辺に近づかないのも難しい気がするのですが?

斎藤教授 『お子さんに危険性を知らせ、万一に備えてライフジャケットを』
まずは、マスクをしたまま落水したら危険があると知ること。そして、子どもに、もし水に落ちたらすぐにマスクを外すように伝えることが大切です。また、万が一に備えて、水辺で遊ぶときにはライフジャケットを着けるように徹底してください。

熱中症予防のためにも、そして水辺で命の危険に遭わないためにも、屋外でのマスク着用は注意が必要です。

厚生労働省は子どものマスク着用について次のように呼びかけています。

まもなく始まる子どもたちの夏休み。

熱中症や水辺のリスクに十分注意しながら、元気いっぱいの子どもたちに思いっきり水遊びを楽しませてあげたい。

私もずぶ濡れ覚悟で一緒に遊んで、楽しい夏の思い出作りができればいいなと今回の取材を通じて思いました。

  • NHK事件記者取材note 編集部 黒川ちえり 9歳と6歳のやんちゃな男児の母
    事件や事故から子どもを守るヒントを知りたい

  • ネットワーク報道部 記者 藤島新也 2009年入局
    盛岡局、社会部を経て現職
    災害報道やデータ分析を担当
    4歳になる娘との散歩が楽しみ

  • 安心 キケンのない社会をつくろう

    歩道での“自転車の危ない”をなくしたい事故

    歩いているとき自転車にヒヤッとしたことはありませんか?歩行者のすぐ横を通り抜けていったり、バランスを崩してぶつかりそうになったりする自転車を見かけたことは?実は自転車と歩行者による事故の4割以上が歩道で起きているんです。

    2021年2月25日

  • 安心 キケンのない社会をつくろう

    ”危険なバス停” 全国で1万か所以上も事故

    横断歩道や交差点の近くにあり、交通事故の危険性があるバス停を国土交通省がまとめたところ、全国で1万か所に上ることが分かりました。

    2021年4月2日

  • 安心 キケンのない社会をつくろう

    重さ100キロのタイヤが突然外れて事故に… あなたの車大丈夫ですか 事故

    道を歩いていたら、車に乗っていたら、突然重さ100キロの黒い物体が迫ってくる。それは走行中の車から外れたタイヤです。過去には命を奪われたケースも。

    2021年3月12日