安心 キケンのない社会をつくろうドコモが「#迷惑メール展」“みんなでシェア”のねらいは

2022年3月4日防犯

【重要】「再配達依頼のお知らせ」
宅配物をお届けに参りましたが、ご不在でした。
再配達の連絡先は、http://…。

こんなメールを受け取って、クリックしそうになったことありませんか。

1日に送信される迷惑メールは7億4000万通。(※2021年9月現在)
手口も巧妙化しています。
そんな中、NTTドコモが企画したのは迷惑メールの展示会、その名も「#迷惑メール展」です。

(首都圏局記者 金魯煐)

まるで本物のメール画面

NTTドコモが2月に立ち上げた特設サイト「#迷惑メール展」。
実際に送られた迷惑メールを再現する形で具体的な事例を紹介しています。

スマートフォンのメール画面のようなデザインで、自分のメールボックスを操作する感覚で見ることができます。

サイトを開くと「私も同じようなメールを受け取ったことがある」と感じる見覚えのあるタイトルや文面がずらり。

メール画面を下にスクロールすると、それぞれの手口の特徴や対処方法についても解説しています。

例えば、通販会社を装った「お支払い方法に問題があります」と書かれたメール。

これは支払い方法の認証エラーを理由に決済情報を再登録させて、情報を盗み取る手口だといいます。

対処方法としてURLはクリックせず、公式サイトの問い合わせ窓口を利用するよう求めています。

紹介されている迷惑メールは40通以上。
「通販」や「クレジットカード・銀行」「ETC」「携帯キャリア」など、カテゴリーごとに分類されています。

迷惑メールにひっかかったドコモ社員が発案

「#迷惑メール展」を企画した経緯やねらいについて、担当の松本英里子さんに聞きました。

NTTドコモ 松本英里子さん(モニター画面)と記者(右)
記者

企画したのはどんなきっかけで?

実は迷惑メールにひっかかったことがあるんです。
送られてきたメールからオンラインショッピングをしたんですが、それが悪質サイトだったようで商品は届きませんでした。

松本さん

まさか携帯電話会社で働いている自分がだまされるなんてと思いましたが、迷惑メールを少し遠い話と思っている人が結構いるのではと考え、「自分ゴト化」するきっかけを作りたいと企画しました。

記者

メール画面のようなデザインは?

使い慣れたスマホに届いたメールのように直感的に操作できれば説明がなくても楽しめますし、楽しいほうがシェアしてもらえるので啓発の効果が期待できると思ったんです。

松本さん

みんなでシェアしてみんなを救う

松本さんが今回の企画で意識したのは、「事例の紹介」ともう1つあります。
それは迷惑メールを「みんなでシェア」することです。

特設サイトのほかにツイッターアカウントも開設し、実際に受け取った迷惑メールをハッシュタグ「#迷惑メール展」をつけて投稿してほしいと呼びかけたのです。

するとメール画面のスクリーンショットとともに、「思わずクリックしそうになった」「こんなメールには気を付けてください」などと投稿する人が相次ぎ、フォロワーは1万人を超えました。

中には迷惑メールの不自然な表現や文面にツッコミを入れる投稿もあり、私も思わずくすっと笑ってしまいました。

例えばこちらの迷惑メール。

「佐川急便より 荷物のお届けに上がりましたが、宛先不明のため持ち帰りました。http://~」

投稿者は「宛先不明なのにお届けに上がったのか」というコメントとともにシェアしました。

「Amazonアカウントの情報更新のお願い~ カードの期限切れなどさまざまな理由で更新できませんでした。下からアカウントにログインし、情報を更新してください」

こちらのメールは、「『さまざまな理由で』って雑すぎないですか」というコメントとともに投稿されました。

NTTドコモ 松本英里子さん

担当の松本さんは「こんなメールあるある」という共感が広がったと感じています。

(NTTドコモ プロモーション担当 松本英里子さん)
「正直、迷惑メールというネガティブなものを楽しく啓発していいのかという葛藤はありましたが、予想を超える好意的な反響をいただきホッとしています。

シェアして被害を減らすという趣旨に賛同して『親に伝えよう』とか『家族で1回見てみよう』と皆さん同士で注意を呼びかけ合う言葉が見られたこともすごくうれしかったです」

巧妙化する迷惑メール どう防ぐ

記者

最近の手口の特徴や傾向は?

驚くほど悪質化、巧妙化しています。
例えばドコモの公式アプリに似せた偽のアプリをインストールさせて、正規アプリをアンインストールさせるものや、ウイルスに感染させたスマホを迷惑メールの発信源になるようにするものもあります。

松本さん

「メルカリ」さんや「ヤマト運輸」さんなど、お客様がよく利用するサービスや企業名を装うものも増えています。

松本さんが代表的な迷惑メール、4つの特徴を教えてくれました。

<代表的な迷惑メールの特徴>
興味をそそる、感情に訴える(これを見れば幸せなことが起きる、今すぐ見ないと損)
信用を利用する(国や政府、自治体、実在する企業を名乗る)
恐怖をあおる、行動をせかす(お金を払わないと裁判を起こす、端末がウイルス感染するなど)
リンク先の作りが巧妙(公式ページと見分けがつかない、信頼できそうなドメイン名使用)

記者

どんな点に気をつければ?

興味本位にクリックしてしまうと、迷惑メールの送信者に「この人はカモになるかもしれない」と狙われることもあります。
身に覚えがないものはとにかく無反応でスルーが鉄則です。

松本さん

アプリをインストールさせようとするメールもあるので、アプリは正規のやり方でアプリストアからダウンロードすることが大切です。
私も含めて誰もが迷惑メールの被害にあう可能性があります。
今回の企画が身近にあるリスクについて考えるきっかけになればありがたいです。

取材後記

迷惑メール展と聞いて、高齢者向けの啓発なのかなと勝手に思い込んでいましたが、松本さんによると被害は若年層から高齢者まで幅広い世代にわたっているそうです。

まさに「自分はだまされない」と慢心していたと反省。
数年前に「荷物をお預かりしています」というショートメッセージのURLをうっかりクリックしてしまったことを思い出しました。

迷惑メールを受け取るたびに「ひっかかるわけがない」と思っている私のような人が一番危ないのかもしれません。

この「#迷惑メール展」は2022年3月18日までの予定ですが、ドコモは引き続き公式サイトで迷惑メールについて情報提供を呼びかけるということです。

  • 首都圏局 記者 金 魯煐(きむ・のよん) 2022年入局
    通信社記者→海外放浪→PRプランナーを経て現職。
    銭湯とボードゲームとTWICEが好きです。

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