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自治体から“就学拒否”にあって学校に行けない子どもたちネットワーク報道部・和田麻子記者

「自治体から事実上の就学拒否にあい、学校にいけなかった子どももいます」
こう話してくれたのは、東京都内にある外国ルーツの子どもたちを支援する日本語教室の担当者です。 その教室には、自治体による事実上の就学拒否にあい、たどりつく子どもが少なくないというのです。

「日本語わかるようになってから来て」

「ネパール語の通訳がいないから、学校生活も大変でしょう。日本語がわかるようになってから、もう一度来て下さい」

東京・昭島市の教育委員会の窓口で、職員から突きつけられたというこの言葉。

ネパール人の母親のダンゴル・シャンティさんは、途方に暮れたといいます。

「ショックでした。中学校で勉強できないと思い、すごく心配しました」

5年前、ネパールで生まれ育った次女のラビナさんを呼び寄せ、家族で新しい生活を始めようとした、やさきのことでした。

ラビナさんは当時、中学1年生。
ラビナさんは、日本語がほとんどわかりません。

職員は、ネパール語の通訳がいないと“かわいそう”だから受け入れられないというのです。

困ったシャンティさんがたずねると、職員は「どこかで日本語を学んで欲しい」。

知人のつてを頼り、やっとの思いで、外国ルーツの子どもたちを支援する日本語教室にたどりつきました。

ラビナさんはここで4か月間、いちから日本語を学び、市立中学校に進むことができました。

母親のシャンティさんは、こう話しています。

「本当に感謝しています。教室が見つけられなかったら学校には行けなかったと思う」

“不就学”珍しくない?
自治体の“思いやり”があだに

実は、外国からきた児童・生徒が「不就学」に陥るケースは珍しくないといいます。

ラビナさんが通った、NPO法人が運営する東京・福生市の日本語教室「YSCグローバル・スクール」では、多くの外国ルーツの子どもたちを支援しています。

これまでに支援した子どもたちは30か国以上、700人近く。

年々、増加傾向にあるといいます。

教室の責任者を務める田中宝紀さんは、警鐘を鳴らします。

「私たちのような民間の支援の場につながった子どもたちは、学習の機会を得られますが、『日本語ができるようになってから』と言われた時点で諦めてしまったり、地域に日本語を教えてくれる場所がなかったら、そのまま学校に行かず、自宅にこもって過ごすようになったかもしれません」

「自治体の“思いやり”が結果として、教育の機会を失わせてしまう。この現実をもっと知って欲しい。国は、自治体任せではなく、受け皿となる公立学校の受け入れ体制を全国的に進めるべきです」

自治体 多国籍化で悩み

昭島市の教育委員会は、どう受け止めているのか。担当者に話を聞きました。

「当時対応した職員を特定できず、事実関係を確認できない。また、現在は、適切に就学の手続きにあたっています」

一方で、担当者は、多国籍化する子どもたちへの対応に、悩みを抱えていました。

「日本語の指導が必要な子どもたちには、母国語を話す指導員が授業の通訳をするなど、指導にあたっています。最近は多国籍化が進み、指導員の確保が難しいのが、大きな課題です」

学べる環境を

現在、定時制高校2年生のラビナさん。

日本語を話せるようになり、友だちもたくさんできました。

将来、フライトアテンダントになる夢をかなえようと、日々勉強しています。

「たくさんのことばを話せるようになって、困っている人を助けたい。勉強は、未来を明るくしてくれるから、がんばりたいです」

そして、こう話しました。

「これから日本に来る外国の人たちが、私たちのように困ることがないよう、心から願っています」