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「ガイジンと呼ばないで」外国にルーツの子どもたちへのいじめネットワーク報道部・木下隆児記者

外国にもルーツを持つ子どもたちをめぐるいじめで 取材に応じてくれた、ミシェル・ハーヴェルさん(22)。 アメリカ人の父と日本人の母を持ち、7歳までイギリスで過ごしました。
5月31日の記事(「私に子どもができたら・・・」)で、 いじめられた体験については詳しく書きました。 ただ、そこで書き切ることができなかった彼女のことばには、 私たちが考えていくべきヒントがあるように思います。

「ガイジン」ということば

外国にもルーツを持つ人たちを取材していると、「ガイジン」と小さいころから言われ続けている人が多いことに気付きます。中には、このことばに差別的な意味を感じ、嫌悪感を覚えている人もいます。

辞書で調べてみると、「外人」には次のような意味があります。
①仲間以外の人。疎遠な人。
②敵視すべき人。
③外国人。異人。(『広辞苑』より)

外国籍だったり、外国にもルーツがあったりする人たちに向けて言われる「ガイジン」は、③の「外国人」という意味だとみられます。一歩引いて見れば、「単純に日本にルーツがない人」という意味で使われているとも言えますが、外国にもルーツを持つ人たちの多くは、幼いころから友だちだけでなく見ず知らずの人からも毎日のように「ガイジン」と言われ、じろじろ見られ、「自分はみんなと違うんだ」という疎外感を覚えています。

ミシェルさんも、小さなころから「ガイジン」と言われ続けて嫌な思いをしてきたひとりです。高校で、古典や漢文を大好きになったというミシェルさん。ある日、古典や漢文を読むために覚えた返り点を、自分がよく言われて違和感を覚えていた「外人」という漢字に、振ってみたことがあります。

「人から外れる」

そういう意味にも読めることに気付いて、「私って人じゃないんだ、ひどいこと言われてたんだな」、心の中でそうつぶやいていました。

多様なアイデンティティー

外国にもルーツを持つ人たちを取材していてもう一つ感じることは、彼ら彼女たちのアイデンティティーの多様さです。国籍は日本になくても、日本にもアイデンティティーを感じている人、父親と母親の出身国が異なり、父親と母親の母国の両方にアイデンティティーを感じる人、「ガイジン」と言われ続けて、日本にもそれ以外の国のどちらにもアイデンティティーを感じられない人など。

よくよく考えれば当然のことで、そもそも「日本人」であるというアイデンティティーは、日本に住んでいるからと言って「持っているのが当たり前」ではありません。そんな「みんな違う」という当たり前のことから会話を始められることができないところに、ミシェルさんは息苦しさを感じる時があるそうです。

記事にも書きましたが、交際した男性は、ミシェルさんから意見を言われると「日本ではこうなんだよ」と言って日本人であるよう求め、交際した理由を聞くと「ハーフとつきあってみたかった」と「ガイジン」であるよう求めてくる。そんな、マジョリティーの都合のいいように私たちが生きなきゃいけないというのはおかしい。そう感じてきたミシェルさんは、自分のアイデンティティーについて、次のように話してくれました。

「私は日本とアメリカの両方の国籍を持っています、周りからは『どっちの国籍を選ぶの?』と聞かれます。でも、私の心の国籍は、誰かに決められるものでもないし、自由でありたいと思っています。私は日本の文化も大好きだし、着物も自分で着付けられます。一方で、生まれ育ったイギリスに戻りたいと思うこともあるし、考え方はイギリス人っぽいところもあると感じることも多いです。ルーツは、日本とアメリカにあるけど、中身はイギリス人。どれでもないし、どれでもある、そんな感じなんです」