大統領選挙の年は株価は上がる?

ゴーン被告の日本出国や緊迫するアメリカとイラン情勢など、年始から大きなニュースが出ているが、2020年、大統領選挙の年のマーケットは、すでに始まっている。
ことしのニューヨーク株式市場ダウ平均株価はどう動くのか。

第2次世界大戦後、選挙のあった年を見ると、前回選挙の2016年を含め、18回中13回が「値上がり」。確率で言うと、72%という高さになる。
やはり、景気には配慮したいという候補者たちの考えがあるから、だろう。

とりわけ、現職のトランプ大統領にとっては、目に見える(唯一の?)実績でもあり、大事にしたいはず。
日本や世界経済にも大きな影響を与える、ことしのニューヨーク株価の動向について考えてみたい。

目次

    平均すると値上がり率は5%弱

    このグラフは、過去18回の大統領選挙の年のダウ平均株価の上昇(下落)率をまとめたものだ。
    1948年の「奇跡の逆転」と言われたトルーマン大統領の再選から、前回選挙まで。
    平均すると、値上がり率は5%弱になる計算だ。

    値下がりが目立つ(-33%)2008年は、そう、リーマンショックの年。

    前回のトランプ大統領が初当選したときは13%上昇と、かなり値上がりしているが、調べてみると、トランプ氏の当選が決まってから年末にかけて急激に値上がりしている。
    やっぱり彼は、ウォール街に期待されているのだ。

    こんな統計もある。

    ダウ平均株価は「値上がりすると2年以上は続く」というもの。

    2018年が値下がりなので、去年の値上がりは、ことしも続くということも言える。
    こうしたはっきりした根拠がないもののパターン化された特徴的な動きを、株式市場では「アノマリー」とも呼んでいる。

    「米中はリスク」も大きな動きなし?

    ウェルズ・ファーゴ インベストメント インスティチュート ダレル・クロンク会長

    アメリカの大手金融グループ「ウェルズ・ファーゴ」の投資家向け専門会社のトップ、ダレル・クロンク氏にインタビューした。
    依然、最大のリスクである米中貿易交渉について、彼に聞くと…

    「この問題は長期にわたるもので、ことし中に何らかの結論が出るとは考えていない。11月の大統領選挙が終わるまで、具体的な成果が出てくることはないだろう」

    つまり、こうだ。

    トランプ大統領が株価を意識するのであれば、去年のように株価を乱高下させる言動はなるべく慎みたい。
    「選挙が終わるまで休戦」というのが、トランプ大統領にとっては無難だろう、というのだ。

    トランプ大統領の落選を中国が望むとすれば、選挙直前にちゃぶ台返し!いう見方もあるが(逆に、トランプ大統領が「対中関税すべて無くす!」というウルトラCをするとか)、基本的には、選挙後まで「なぎ」の状態が続くというのが金融街の見方と言える。

    民主党大統領が誕生したら…

    富裕層への増税や、IT大企業の解体までも打ち出す候補がいる民主党。

    民主党・ウォーレン候補

    先日、ニューヨークでは、とあるヘッジファンドのトップが「そんな人が大統領になったら、株価は25%は下落する」と真顔で話していた。
    ウォール街にとっては、株価を気にしてくれるトランプ大統領はウェルカムなのだ。

    もちろん、選挙が近づき、政策もより具体的に見えてくれば、民主党政権であっても政策が信任され(「ご祝儀相場」も含め)、株価上昇も無いとは言い切れない。

    選挙は11月3日

    日本では、「東京オリンピック・パラリンピック後は、景気をけん引する要素が無くなり、景気減速が加速するのでは」という心配が根強い。

    一方、アメリカも、実はそうなのではないかとも思う。
    トランプ大統領が再選しようが、民主党が政権を奪還しようが、選挙後から2020年末までは2か月あるし、勝利した政権がしばらく続く。

    マーケットは、ことしだけが勝負ではない。
    何より持続可能性のある景気の拡大を望んでいて、それにしたがって株価は動く。
    それは、新たな大統領を選ぶアメリカの有権者も同じだ。

    アメリカ総局記者

    野口 修司

    1992年入局。
    政治部、経済部、ロンドン支局などをへて
    BS1『経済フロントライン』キャスター。
    2018年からニューヨーク駐在 主に経済を担当。