副大統領候補テレビ討論 ペンス氏、ハリス氏の主張は

アメリカ大統領選挙に向けたペンス副大統領と野党・民主党の副大統領候補、ハリス上院議員のテレビ討論会。
2人の主張のポイントをまとめた。

目次

    新型コロナウイルス対応

    ハリス氏 「この数か月間で21万人が亡くなった。国民はこの国の歴史で最も大きな失敗を目の当たりにした。ペンス副大統領とトランプ大統領は、ことし1月の時点でコロナの危険性を知っていたにもかかわらず、その深刻さを過少評価し国民に知らせなかった」とトランプ政権の対応を批判。
    そのうえで「私たちは国民にワクチンを無料で提供するなどしてこの国を守る。バイデン氏はそれができる最高のリーダーだ」と述べた。

    ペンス副大統領 「トランプ大統領はアメリカ国民の健康を最優先に考え、中国からのすべての旅行者の入国を停止したが、バイデン氏はこの決定に反対していた」と反論。
    そのうえで「われわれは1億人以上を対象に検査し、数十万もの国民の命を救った。医療従事者に多くの物資を供給し、ワクチンの開発を進めている。年末までには数千万のワクチンを用意できるだろう」と述べた。

    ホワイトハウス出席者の相次ぐ感染確認

    討論会ではトランプ大統領が9月、ホワイトハウスで開いた連邦最高裁判所の判事を指名する記者会見の出席者に感染が相次いで確認されていることにも触れられた。

    ペンス副大統領 政権がマスクの着用などの対策を徹底しないのに国民はガイドラインを守るのかと問われ、「先月の催しは専門家の勧めに従って屋外で開催したし、参加者の多くは検査も受けていた」と釈明。
    そのうえで「トランプ大統領と私はアメリカ国民を信頼し、それぞれが自分に合った選択ができると信じている。バイデン氏とハリス氏はコロナ対策などで義務を負わせることを一貫して主張しているが、私たちは国民の自由を尊重している」と述べた。

    ハリス氏 「命を守るため、時には人が聞きたくないような真実を伝える勇気を持ってこそ、国民を尊重していると言える。無能な政権のせいで、国民は大きすぎる犠牲を払った」と批判。
    さらに「ワクチンの接種も公衆衛生の専門家が勧めるなら従うが、トランプ大統領に言われても接種しない」と述べ、政権がウイルス対策を政治的に利用しようとしていると痛烈に批判した。

    大統領に関する情報開示

    ハリス氏 「アメリカ国民は大統領の決定に何が影響を与えているのか、そうした決定が果たして国民にとって最善のものになっているのかどうかを知る権利がある。バイデン氏は長年隠し事が無く、率直、誠実であり続けている一方、トランプ大統領はすべてを隠している」と批判。

    ペンス副大統領 「大統領は税金に関する公開報告書は不正確だと言っているし、実際に、何千万ドルもの税金を納めている。財務情報はアメリカ国民が法に基づいて確認できるものとして公開している」と反論。

    経済政策

    ハリス氏 「バイデン氏はアメリカ経済の強さは労働者の強さにあると考えているが、トランプ大統領は富裕層がアメリカ経済を強くすると考えている。大統領は富裕層や大企業に利益になるような税制をつくったが、バイデン氏はインフラやクリーンエネルギーに投資し、国民のためにお金を使う」と述べた。

    ペンス副大統領 「われわれの広範な減税で、労働者を中心に賃金が改善した。新型コロナウイルスの感染拡大後もすでに1100万人の雇用が回復した。注目すべきことだ」とトランプ政権の経済政策の効果を強調。
    「バイデン氏が大統領になった場合は、初日から増税するだろう」と、バイデン氏が掲げる政策を批判した。

    ハリス氏 「事実ではない。バイデン氏は、年間の収入が40万ドル未満の世帯の税金を上げないことは明確にしている」などと反論し、激しい応酬に。

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    オバマケア

    オバマ前大統領が導入した医療保険制度、いわゆる「オバマケア」について。

    ハリス氏 「2000万人が保険に加入できるようになったが、トランプ大統領は制度を廃止しようとしている」などと訴えた。

    ペンス副大統領 「『オバマケア』は大失敗だった。トランプ大統領と私には保険制度を改善する計画がある」と反論した。

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    気候変動対策

    ペンス副大統領 「大統領と私は、強力で自由な市場経済によってより良い環境への進歩は続いていると確信している。バイデン氏とハリス氏は化石燃料を廃止し、シェールガスなどの採掘を禁止するとしている。パリ協定に戻ろうという彼らの政策はアメリカのエネルギー産業を壊し、雇用を失わせることになる」

    ハリス氏 「われわれは何百万人もの雇用を生み出す再生可能エネルギーに投資し、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標などを達成する。これまで私たちはトランプ政権が科学を信じないという姿勢を見てきたが、バイデン氏は気候変動に対応しながら同時に雇用を生み出していく」

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    連邦最高裁判所の判事指名

    先月、トランプ大統領が連邦最高裁判所の判事に、保守派のバレット判事を指名したことについても議論が交わされた。

    ペンス副大統領 「トランプ大統領と私は、バレット判事が連邦最高裁判所の判事に就任するのを待ちきれない。彼女はとてもそうめいで、その豊かな人生経験を生かしてくれるだろう」と述べ、今月12日から議会上院の司法委員会で開かれる公聴会での指名承認に期待を示した。

    ハリス氏 「次の大統領が誰になるのか決まるまで僅か27日で、すでに400万人以上が投票を終え、現在、投票している人もいる。私たちは、まず国民に大統領を決めてもらったうえで、その大統領が連邦最高裁判所の判事を決めるべきだと考えている」と述べ、来月の大統領選挙の当選者が判事を指名するべきだと改めて主張した。

    アメリカ社会の分断

    ペンス副大統領 「私たちは自由で開かれた討論の価値を信じ、称賛する。それこそが世界で最も自由で豊かな国を生み出したからだ。ハリス氏と私がここでしているように、この国では反対意見を述べたり、激しく意見を交わしたりするが、終わればアメリカ人として団結する」

    ハリス氏 「バイデン氏はこの4年間で国民の分断が進んでいることに心を痛め、大統領選挙への立候補を決めた。彼はこれまで人々の懸け橋となり、党派を超えて活動してきたと言われてきた。大統領になってもそうするだろう」

    対中国政策

    ハリス氏 「中国との貿易戦争によってアメリカの製造業は30万人の雇用を失い不況に陥った」などと、トランプ政権の対応を批判。

    ペンス副大統領 「バイデン氏は中国とたたかおうともせず、中国政府を支持してきた。われわれの政権は雇用を生んできた」と反論。
    さらに「中国には新型コロナウイルスの感染拡大の責任があり、トランプ大統領は、長年、アメリカにつけ込もうとしている中国に立ち向かってきた。中国からの渡航を止める決定をした際、バイデン氏はヒステリックだと反対した」などと述べた。

    外交政策

    ハリス氏 トランプ政権の外交政策について「トランプ大統領は友好国を裏切り、世界の独裁者を受け入れた。ロシアもそうだ。イランの核合意の離脱をみても、トランプ大統領の一方的で孤立主義的な外交アプローチでアメリカの安全が損なわれている」などと厳しく批判。

    ペンス副大統領 「トランプ大統領のリーダーシップでアジア太平洋地域の国々とのつながりを強めたほか、イスラミックステートの脅威を取り除いた」などとトランプ政権の実績を強調。

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    人種差別問題

    ハリス氏 ことし5月に黒人のジョージ・フロイドさんが白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件について「事件をきっかけに人種、年齢、性別に関係なく多くの人が法の下での平等な正義を求めて訴え、私もデモに参加した。われわれは、大切だと考える価値観のためには常に闘い続けなければならない」と述べた。
    さらに「警察改革が必要だ。私たちが政権についたら、法を犯した警察官を記録する制度を作り、私立刑務所や保釈金を廃止する」と述べ、かつてカリフォルニア州の司法長官を務めた経験を踏まえ、構造的な差別の解消に向けた対策を講じる考えを示した。

    ペンス副大統領 「フロイドさんに起きたことは弁明の余地もなく、裁きが下されるだろう。ただ、その後の過激な暴力行為も許されるものではない」と述べ、一部で起きた破壊行為や略奪を批判。
    そのうえで「バイデン氏は『警察はマイノリティーに対して潜在的な偏見を持っている』と言うが、ひどい侮辱だ。ハリス氏もかつて議会上院で、警察改革の法案の通過を妨害した。治安の確保と、黒人やマイノリティーへの支援は両立するし、トランプ大統領と私は警察とともにある」と述べ、トランプ大統領が掲げる「法と秩序」を強調。

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    今回の選挙は…

    討論会では、トランプ大統領が選挙後の平和的な政権交代を拒否した場合どうするか司会者が質問したが、2人は明確には答えず。
    そのうえで、今回の選挙について…

    ハリス氏 「私たちは、共和党の重鎮も含め、党派を超えてこれまでにないくらい幅広い人たちから支持を得ている。なぜなら彼らはこれが誠実な民主主義をホワイトハウスに取り戻すための闘いだと分かっているからだ。私たちが投票し、声を上げれば、私たちは勝つ。早く投票してください」と人々に投票を呼びかけた。

    ペンス副大統領 「民主党は大統領を弾劾するなど、この3年半かけて前回の選挙結果を覆そうとしてきた。バイデン氏とハリス氏が規則を変え、有権者の不正行為を大量に生み出すおそれのある郵便投票の制度を作ることを阻止するために、トランプ大統領と私は日々法廷で闘っている」と述べ、民主党が呼びかけている郵便投票は不正につながると改めて主張した。