日米同盟破壊も選択肢?
「日米同盟を壊すのは、トランプにとって必ずしも悪い考えではない」
「割に合わないという判断をしたら、在日米軍の撤退も検討するだろう」
ことし7月、トランプ大統領の元側近、ボルトン前大統領補佐官をインタビューした際に飛び出たことばだ。
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「アメリカ第一主義」を貫くトランプ大統領。
アメリカが主導してきた数々の国際的枠組みから距離を置き、同盟国との協力関係にも疑問を投げかける「トランプ流の孤立主義」ともいえる外交姿勢は、日本を含む外交関係者の反発を招きながらも、アメリカ国内では一部で支持を得ていることも確かだ。
アメリカ国内で、国際協調よりも自国第一主義、グローバリズムよりもナショナリズムを支持する一定の層は、トランプ大統領がゼロから作り上げたわけではない。
むしろこうした層が顕在化したことで、トランプ大統領が誕生したと言っていいだろう。
一方で、バイデン氏は同盟国との関係を重視し、日本との同盟の深化を目指すとしている。
だが、いみじくも「アメリカは世界の警察官であり続けることはできない」と言ったのは、バイデン氏が副大統領として支えたオバマ前大統領だった。
時代が変われば、同盟国に対する国民の考え方も変わるのだろうか。
国のリーダーが変わる節目などを契機に、同盟関係も形を変えるのかもしれない。
どちらの候補者が当選したとしても日米同盟への影響を注視する必要があるだろう。
トランプ政権も難儀だがバイデン政権よりはいい?
バイデン氏は議会上院の外交委員長を務め、長年、アメリカ外交の中心にいた。
しかし、バイデン政権になれば、トランプ以前の伝統のアメリカ外交に戻るという予想は、短絡的すぎるように思える。
ことし4月、アメリカの政治専門誌に掲載されたエッセーが外交関係者の間で話題となった。
匿名の作者が「日本政府高官」を名乗っていたのだ。
さらにこの「高官」は「日本外交にとってトランプ政権は問題だらけだが、オバマ時代に戻るよりはよっぽどいい」と主張し、オバマ前政権で副大統領を務めたバイデン氏が大統領になれば、日本外交にとって都合が悪くなると示唆している。
その理由が対中政策だという。
オバマ政権が中国との関係を重視した結果、中国の軍事拡大を許し、沖縄県の尖閣諸島がある東シナ海や南シナ海での緊張を高めたという主張だ。
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しかしこの論考には多くの反論がある。
外交専門家の間で、バイデン氏が政権をとったらアメリカの対中政策が目に見えて軟化すると見ている人はそう多くはない。
中国に好意的な態度を見せていたオバマ政権初期と今とでは時代が違うからだ。
最新のシンクタンクの調査では、アメリカ人の大半は党派を問わず、中国に対して良い印象を持っていない。
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こうした世論を背景に、トランプ大統領が再選されても、バイデン氏が当選しても、中国への外交政策は、強硬なものにならざるをえないというのが、大方の外交専門家の見方だ。
予測不能な大統領はリスク?
大統領選挙でどちらの候補が当選しても、アメリカの外交方針は大きくは変わらないのではないかと述べてきたが、違いがあるとすれば何だろうか。
両者の決定的な違いは政策の「予測可能性」だという分析には、多くの人が納得するのではないか。
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アメリカの情報機関は8月、中国が「予測不可能なトランプ大統領の勝利を望んでいない」として、再選を阻むために選挙に干渉していると指摘する声明を発表。
予測ができないトランプ大統領の言動の数々に振り回されるのは中国だけではない。
水面下での調整を好まないトランプ大統領の劇場型外交は、日本の外交政策にも経済界にとってもリスク要因になりうる。
日本外交の宿命
「トランプ/バイデンの個人的な好き嫌いはあるが、大統領選挙の結果がどうなろうと、準備をしておくのがわれわれの仕事だ」
在米日本大使館にいる外交官と大統領選の話をすると、必ずと言っていいほど聞くことばだ。役人の優等生的な建て前のようにも聞こえるが、おそらく外交官としての偽らざる本音なのだろう。
日本にとってアメリカは唯一の同盟国、仲間だ。
トランプ大統領はさまざまな同盟国に「仲間をやめるぞ」「手助けを止めるぞ」というメッセージを送ってきた。
しかし、日本は、仲間のことばや考えが気に入らないからといって簡単に縁を切るわけにはいかない。大統領が誰であろうが、そのアメリカとつきあっていかなければならない。
大統領選挙の行方は日米関係にどのような影響を与えるのか。
そこには日本の時の政権の柔軟性や瞬発力もまた重要な要素になるのではないだろうか。