1:トランプ大統領の支持率の低さ
アメリカの選挙情報をまとめた「リアル・クリア・ポリティクス」によると、各社の世論調査の平均値で、トランプ大統領の支持率は2017年の就任以降、1度も50%を上回ったことはない。
対抗する民主党からは、バイデン前副大統領やサンダース上院議員のような「ベテラン政治家」が立候補している一方、全米での知名度がそれほど高くない若い候補者も目立つ。
専門家は、「歴代の大統領で、これほど支持率が低い状態が続いている大統領はいない。トランプ大統領が相手なら、多少知名度が低くても、世論次第で、選挙に勝つこともあり得ると考えた候補も多いのではないか」(慶応大学・渡辺靖教授)と分析する。
2:トランプ大統領の政策
トランプ大統領は、アメリカ第一主義を掲げ、経済では保護主義的な政策を貫き、移民を排斥する政策を続けている。
また、「LGBT」と呼ばれる性的マイノリティーの人たちになどに対しても、厳しい政策を進めている。
一方の民主党の候補者を見てみると…
ジャマイカとインドからの移民の子として生まれた移民2世のハリス氏、同性愛者であることを公表しているブティジェッジ氏、台湾出身の両親のもとに生まれた移民2世のヤン氏と、ダイバーシティに富んでいる。
そして、民主党の候補者たちは、富裕層への増税や国民皆保険の導入、「ベーシックインカム」の導入などを公約に掲げ、貧困層への対策を打ち出す候補者も少なくない。
専門家は、「アメリカ社会は南北戦争以来の二分化の時代を迎えていて、その一端はトランプ大統領だ。トランプ大統領に反発する人たちの受け皿として名乗りを上げる人が多いのではないか」(上智大学・前嶋和弘教授)と分析する。
3:民主党内での分断
アメリカ全体を見ると、保守層とリベラル層の政治的な対立が、社会の分断を深めている。さらに、民主党を見ると、中道・穏健派とプログレッシブと呼ばれる進歩派の間でも、対立が明確化してきている。
こうした背景が、より多くの人が立候補する土台をつくっているとの指摘もある。
また、各候補が、おのおのSNSを使うなどして、みずからの主張を有権者に伝えやすくなってきていることや、選挙資金の集め方が小口の献金になっていることから、資金面や選挙運動面からみても、立候補しやすい現状があるとも指摘されている。
4:立候補するまたとないチャンス
民主党内では、再選を目指す大統領がいるわけではない。
候補者ひとりに注目や期待が集中しているわけでもない。
そして、共和党の相手は、支持率が高くはないトランプ大統領であること。こうした背景もあると、見られている。
(国際部記者 山尾和宏)