政治に最も必要なのは金

「政治には2つ大切なものがある。1つ目はお金。2つ目が何だったかは思い出せない」

このことばは、第25代アメリカ大統領、ウィリアム・マッキンリーを当選に導いたオハイオ州の上院議員、マーク・ハンナ氏が残したとされる。
アメリカの大統領選挙にとって、資金力がいかに大切かを物語っている。

前回のアメリカ大統領選挙で、共和党のトランプ陣営と民主党のクリントン陣営が集めた選挙資金の総額は、およそ9億3620万ドル、日本円にしておよそ1013億7520万円にのぼる。

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    なぜ、こんなにお金が必要なのか

    理由はいくつかある。

    1つは、全米の各州で行われる予備選挙など経て、全国党大会で党の大統領候補として指名を獲得するまでに2年近くかかるなど、選挙の期間が長いこと。

    また、アメリカは国土が広いため、地方への遊説など選挙活動が広範囲に及び、移動資金が必要なことがある。

    しかし、最大の理由は宣伝広告費の拡大。

    候補者は有権者に広く支持を呼びかけるため、テレビコマーシャルなどを放送する。

    以前は、宣伝の方法が地上波のテレビ放送しかなかったが、ネットメディアやSNSの普及で、広告を載せることができる媒体が無数に増えたことが影響している。

    候補者たちは、支持を呼びかけたい有権者に、より効率的にアプローチするため、情報分析をする会社に有効な宣伝方法の調査を依頼するなど、多額の資金をかけて戦略的に広告を打っている。

    選挙資金の出どころは?

    では、広告宣伝費に使われる膨大な選挙資金は、いったいどこからくるのか。

    その正体は、「スーパーPAC(パック)」と呼ばれる団体。

    以前は、テレビなどの広告は候補者陣営の政治団体が制作し、団体への献金は個人からに限定され、その上限は年間5000ドルに限られていた。

    しかし、2010年に、連邦高等裁判所は候補者から独立した政治団体への献金に金額の上限を設けるのは自由を尊重するアメリカの建国精神に反するなどとして、憲法違反だと判断。

    このため、資金力のある個人や大企業から政治資金をいくらでも集められるようになった。

    アメリカ政治に詳しい専門家の間では、今回の大統領選挙では過去最大の選挙資金が投入されるとみられていて、その金額がいくらになるのか、注目が集まっている。

    (国際部記者 山田奈々)