社会保障 どうなる?「オバマケア」

目次

    国を二分する医療保険の論争

    足をけがして手術代700万円?

    日本では考えられないが、アメリカで実際に起きている問題だ。
    日本と異なり、国民皆保険制度が導入されていないためだ。

    背景には「国に依存しない」という根強い考え方がある。
    国民は基本的に、民間の保険に加入している。
    ただ、保険料を払えないことなどを理由に、一時最大でおよそ5000万人、国民の実に6人に1人が無保険の状態にあったと言われている。

    こうした医療保険の在り方は、共和・民主両党の間で長年、論争になってきた。

    民主党の悲願「オバマケア」

    2010年春、オバマ前大統領は歴代の民主党政権が悲願としてきた、医療保険改革法を成立させた。
    いわゆる「オバマケア」だ。

    2014年に導入されたこの法律は、中・低所得者層に対する政府の補助を拡大し、保険会社が持病を理由に加入を拒否できないよう規制を強化した。
    これによって、新たに2000万人が保険に加入できるようになったと言われている。

    今回の大統領選挙では、民主党の候補者たちの間に、この「オバマケア」をめぐって温度差がある。

    (左から)サンダース氏、バイデン氏、ウォーレン氏

    左派のウォーレン氏やサンダース氏は、制度を拡大して国民皆保険を導入するべきだと主張。
    これに対しバイデン氏は、オバマ前大統領の後継者を自認する立場から、制度の継続を訴えている。

    撤廃目指すトランプ大統領

    一方、トランプ大統領は、「オバマケア」は巨額の財政負担を強いるもので、保険に加入するかしないかを決める個人の自由も奪うことになるなどとして、就任当初から撤廃を訴えている。
    まだ完全な撤廃には至っていないが、税制改革に合わせて「オバマケア」の一部を見直し、加入の義務を事実上廃止したとしてみずからの成果を強調している。

    「オバマケア」をめぐっては、全米各地で「制度自体が違憲だ」と訴える裁判も起きていて、最終的に連邦最高裁判所がどう判断するか注目されている。
    こうした中、トランプ大統領は「オバマケア」が違憲と判断された場合、よりよい保険制度を提案すると表明し、支持を呼びかけている。

    (国際部記者 岡野杏有子)