1日100人が犠牲に
「1日およそ100人」。
アメリカで去年1年間に銃が使われた自殺や事件などで命を落としたのはおよそ4万人。
1日におよそ100人が犠牲になっている計算だ。
ただ、合衆国憲法で銃の所持が認められているアメリカにあって、銃規制は進んでおらずトランプ大統領も及び腰だ。
大統領選挙に向けて与野党が激しい論戦を繰り広げる争点の1つとなっている。
増え続ける“乱射事件”
去年8月、南部テキサス州のエルパソにある小売店で男が銃を乱射、メキシコ人8人を含む22人が死亡した。
メキシコとの国境が近く、多くの移民が暮らす街で起きた事件。
事件を起こした白人の男は「メキシコ人を狙った」と供述していて、人種や宗教上の偏見に基づいた「ヘイトクライム」だったとみられている。
アメリカの調査機関によると、こうした乱射事件など、銃で4人以上の死傷者が出た事件は、去年1年間でおよそ400件にのぼり、過去6年で最悪を更新した。
規制に消極的なトランプ大統領
トランプ大統領は就任後、銃規制に前向きな考えを示したこともあったが、2018年、アメリカ有数のロビー団体、NRA=全米ライフル協会の年次総会に出席した際には「銃を持つ権利を守る」と発言し、その後、規制は進んでいない。
NRAは銃の規制強化に強く反対する共和党の有力な支持基盤で、トランプ大統領としても無視はできない。
最近ではウクライナ疑惑が発覚したのを境に、トランプ大統領は保守派の協力を得ようと銃規制により後ろ向きになっていると、アメリカのメディアは指摘している。
銃規制 競う民主党候補
一方の民主党候補は、競い合うように独自の銃規制を訴えている。
バイデン前副大統領をはじめとした多くの候補者は、銃の購入者に対する審査の厳格化や、殺傷能力の高い銃の製造や販売を禁止する政策を求めている。
さらに、リベラル色の強い左派の候補として知られるウォーレン上院議員は、銃によって命を落とす人を80%減らすとして、銃や弾薬に対する課税の引き上げも訴えている。
銃持ち込み禁止は違法?司法判断にも注目
銃規制の是非に向けた議論が活発化する中で、ある司法の判断にも注目が集まっている。
ニューヨーク市は治安上の理由から、公共の場などに許可無しで銃を持ち込むことを禁止する条例を制定しているが、これについて銃を持つ権利を主張する団体が憲法に違反しているとして裁判を起こしているのだ。
連邦最高裁判所は、大統領選挙を前にしたことし6月までに判断を示す見通しで、銃規制をめぐる議論に大きな影響を与える可能性もある。
銃規制が再び焦点となる今回の大統領選挙。
国を二分してきた問題に、進展はみられるのか注目される。
(国際部記者 紙野武広)