LGBTは“個人の自由”?“宗教の自由”?

ゲイの客から「ウェディングケーキを作ってほしい」と依頼されたパティシエが、宗教的、道徳的観点から、それを断ることは合法なのか、それとも、差別なのかーー。

アメリカの花屋やケーキ屋、それに結婚式の招待状のデザイナーまでもが、同性愛者の客の要望に応えることが、自分たちの「表現の自由」や「宗教の自由」に反すると依頼を拒否。
これに対して、同性愛者の客は、性的な指向に基づく「差別だ」と主張し、州政府とともに、法廷で争っている。

アメリカでは2015年に、連邦最高裁判所が男性どうしや、女性どうしが結婚する同性婚をすべての州で認める判断をし、全米で同性婚が事実上、合法化した。

判決を受けて「虹色」にライトアップされたホワイトハウス(2015年6月)

しかし、性的マイノリティーの人々への「差別」や「権利の平等」などにおいて、論争は続いている。

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとって「LGBT」の総称で呼ばれている性的マイノリティーの人々の権利をめぐって、主張は分かれている。

リベラル派は、LGBTは、個人の権利や自由の問題だと主張する一方、保守派は、こうした人々の権利を認めることは、キリスト教の伝統的な性の道徳観に基づく信仰の自由や、発言の自由を妨げると主張。
時に、感情的な論争に発展することもあり、長年、選挙の争点の1つとなってきた。

トランプ大統領は、選挙に当選する前は、LGBTの権利を守ると公言していたが、大統領に就任して以降、みずからの支持基盤である保守派の要望に応えるように、LGBTの権利を後退させる政策を進めている。
例えば、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの子どもが、学校で自分が望む性別のトイレの使用を認めた、オバマ政権時代に策定された指針を破棄した。
また、トランスジェンダーの人たちの、軍への入隊を禁止した。

一方、民主党の候補者たちは、トランプ大統領の政策が「差別的」だなどとして激しく非難するとともに、トランプ大統領が導入したトランスジェンダーの人たちの軍への入隊を禁止する政策を破棄するなど、LGBTの権利を拡大する政策を訴えている。

世論調査を見ると、2004年に同性婚に「反対」と答えた人は60%いたのに対し、2019年には61%が「賛成」と答えていて、同性婚に対する意識が急速に変化している。
特に、20代から30代のミレニアル世代の74%は、同性婚に「賛成」と回答していて、LGBTの権利拡大に前向きだと言われている。

LGBTの権利拡大は、個人の自由なのか、宗教の自由なのか。
2020年の選挙戦でどこまで大きな争点になるか、注目。

(国際部記者 濱本こずえ)