米中対立がどう影響? 争点の貿易政策

大統領選挙の争点の1つが、貿易政策。
歴史的に、民主党は貿易政策では保護主義的で、共和党が自由貿易推進派だった。しかし、これが近年、変わってきている。

トランプ大統領は就任後、アメリカ第一主義を鮮明にし、ほかの国からの輸入品に高い関税をかける保護主義的な貿易政策を次々に打ち出してきた。

農家や労働者に恩恵をもたらそうと、海外からの農産品や工業品の輸入を減らして、アメリカ産品の国内流通を増やす一方、企業に対しては、海外に移転した工場をアメリカ国内に戻すことを求めてきた。

ところが、10月に発表されたアメリカの製造業の景況感を表す代表的な経済指標が10年ぶりの低い水準に落ち込んでいる。

最大の原因は「中国」だ。

中国 習近平国家首席

トランプ大統領は、貿易赤字の解消するとして、最大の輸入相手国、中国からの輸入品を対象に関税を次々にかける措置をとってきた。5月には、中国からの輸入品のおよそ半分に対して最大25%の関税上乗せを実施するなど強硬姿勢を強めている。

しかし、トランプ大統領が仕掛ける貿易摩擦によって、逆に中国からアメリカ産の製品に高い報復関税をかけられたり、海外に供給網を築いていた企業が戦略の見直しを迫られたりするなど、国内経済を守るはずの政策に国内から激しい反発も出ている。
中国製の生活用品も高関税の対象にしたことで、値上がりという形で家計が圧迫される懸念も強まっている。

ニューヨークの百貨店にもたくさんの中国製衣料品が並ぶ

こうした対中貿易政策の負の影響が再選の障壁になる可能性もある。

ただ、アメリカと中国の対決は貿易だけにとどまらず、次世代技術や軍事・安全保障問題の分野にも広がっている。トランプ大統領としては貿易赤字を減らすだけではなく、中国の経済力や技術力の発展を押さえつけたいというねらいもあるのだ。

一方、民主党候補者の貿易政策をめぐる主張にはばらつきがある。

トランプ大統領の貿易政策を批判する候補者がいる一方で、民主党は歴史的に保護主義的な政策を掲げてきただけに、中国に強硬な姿勢を持つ候補者も数多くいる。

最有力候補のバイデン前副大統領は「中国への追加関税は、唯一の解決策にはならない。トランプ大統領の政策は古い」と、トランプ政権の貿易政策を批判し、中国に対してやや温和な姿勢を示している。

しかし、ウォーレン上院議員やサンダース上院議員は、アメリカの過去の自由貿易を批判していて、トランプ大統領と同様に中国に対しても強硬な立場をとっている。

(ワシントン支局記者 吉武洋輔)