移民国家の最大の問題は「移民」

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    世界最大の「移民国家」アメリカにとって、移民問題は大統領選挙の争点の1つ。

    移民は地位を脅かすのか?

    アメリカの世論調査機関ピュー・リサーチセンターの推計によると、外国からアメリカに移り住んだ移民は、アメリカの全人口の14%にあたる4400万人以上にのぼる。
    このうち、1000万人以上が不法移民だとされている。

    アメリカが成長を続けてきた背景には、世界中から絶えず受け入れ続けてきた移民が、アメリカ経済の底辺を担ってきた側面がある。
    しかし、新たな移民の増加によってアメリカの人口構成も変わり、低賃金で働く移民に仕事を奪われかねないと感じる低所得者をはじめとする人たちの間には、自分たちの地位が脅かされているという危機感がある。

    こうしたことなどから、アメリカの調査会社のギャラップ社が行う月例の世論調査で、最近では「移民問題」をアメリカの最も重要な問題として挙げる人が最も多い。

    トランプ大統領の不寛容政策

    トランプ大統領は、不法移民に不満や憤りを感じている人たちに訴えるために、「不寛容政策」と呼ぶ強硬な移民政策を掲げ、政権発足直後から大きな論争を巻き起こしてきた。

    トランプ大統領は就任からまもなく、テロ対策の一環として中東の国々などからの入国を制限する大統領令に署名。

    また、拘束した不法入国者を、強制送還するかどうか決まるまでいったん釈放していたオバマ前政権の政策を問題視し、取締りを強化。
    拘束した場合は釈放せずに刑事裁判にかけるよう政策を改めた。

    不法移民対策でトランプ大統領は、大統領選挙の公約に掲げた「国境の壁」の建設に強いこだわりを見せている。
    巨額の建設予算をめぐり、野党・民主党との激しい対立が続き、予算が成立せず、2018年末から1か月以上にわたって、過去最長となる政府機関の一部閉鎖が続く事態となった。

    2019年に入ってからトランプ大統領は、全米で不法移民の摘発を強化し、大統領選挙を意識して、不法移民を厳しく取り締まる姿勢を強調している。

    政策の復活目指す民主党

    一方、民主党の候補者たちは、いずれも、トランプ大統領の移民政策を「非人道的だ」などと厳しく非難するとともに、オバマ前政権が導入した、不法移民の子どもの強制送還を猶予する政策=DACAを復活させることなど、移民の権利に理解を示す政策を訴えている。

    (ワシントン支局記者 栗原岳史)