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アメリカを二分する争点 妊娠中絶

大統領選挙の争点の1つが、妊娠中絶問題。

「妊娠中絶」の是非は、アメリカ社会を二分してきた。

連邦最高裁判所は、1973年、女性が妊娠中絶をする権利を認める判決を言い渡した。ところが2019年に入って、全米の9つの州で妊娠中絶を禁止したり、制限したりする法律が相次いで成立。

南部アラバマ州では、母体や胎児の命に危険が及ぶ場合を除き、すべての妊娠中絶を禁止する、全米で最も厳しい州法が成立。

これに対して、「中絶は女性の権利だ」と訴える人たちは、全米でデモを行ったり、大規模な集会を開いたりしている。

妊娠中絶の禁止や制限をしている州法のほとんどは、現在、連邦裁判所や州の裁判所によって差し止められていて施行されていない。今後の裁判所の判断次第で、州法が施行されるかが焦点。

厳しい州法が成立した背景には、トランプ大統領を支持する「キリスト教福音派」の存在がある。

アメリカ国民の4分の1にのぼると言われる「福音派」は、聖書に書かれていることを厳格に守り、妊娠中絶は神の教えに反するとして反対している。

トランプ大統領は福音派を意識して、たびたび中絶反対の立場を示し、「極左の連中は妊娠後期の中絶まで容認し崩壊しようとしている。命のために団結し、来年の選挙に勝とう」と述べている。

一方の民主党の候補者たちは、妊娠中絶を「女性の権利」だと支持している。 このうち、2019年6月に、南部サウスカロライナ州で開かれた集会の中で、サンダース上院議員は「私は昔からずっと中絶の権利を100%認めている」と話し、バイデン前副大統領は「中絶の権利を認める法律を作ろう。そうすれば何も恐れることはない」と呼びかけた。
また、ウォーレン上院議員は「中絶の権利を守るために、ともに立ち上がろう」と訴えた。

(アメリカ総局記者 及川利文)