2022年10月18日
プーチン大統領 ロシア ヨーロッパ 注目の人物

プーチン大統領演説全文 ウクライナ“4州併合”を一方的宣言

ウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領。
2022年9月30日、モスクワのクレムリンで演説し、ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州、南部ザポリージャ州とヘルソン州の、あわせて4つの州をロシアに併合することを一方的に宣言しました。
約37分にわたる演説の全文は以下のとおりです。

プーチン大統領演説 全文

ロシア国民の皆さん、ドネツク人民共和国とルガンスク(ルハンシク)人民共和国の国民の皆さん、ザポロジエ(ザポリージャ)州とヘルソン州の住民の皆さん、下院・上院議員の皆さん。

ご承知のとおり、ドネツク人民共和国、ルガンスク(ルハンシク)人民共和国、ザポロジエ(ザポリージャ)州、ヘルソン州で住民投票が実施された。総括が行われ、結果が判明した。人々はみずから選択を行った。明快な選択だ。

きょうわれわれは、ドネツク・ルガンスク(ルハンシク)両人民共和国、ザポロジエ(ザポリージャ)・ヘルソン両州をロシアに受け入れる条約に調印する。連邦議会が、新たな4つの地域をロシアに受け入れ、新たな4つの連邦構成主体を形成する憲法的法律を、支持すると確信している。これは何百万もの人々の意思だからだ。

2022年9月30日 モスクワ クレムリンでの調印式

そしてこれはもちろん彼らの権利で、国連憲章第1条に定められた彼らの不可侵の権利だ。この条項は「人民の同権と自決の原則」が明記されている。

繰り返すが、これは人々の不可侵の権利である。歴史的な一体性に基づく権利で、古代ルーシの時代からロシアを築き守ってきたわれわれの祖先は、この権利のもと何世代にもわたり勝利を収めてきた。ここ“ノボロシア(新しいロシア)”では、ルミャンツェフ、スボーロフ、ウシャコフが戦い、エカテリーナ2世やポチョムキンが新たな都市を建設した。大祖国戦争の頃には、われわれの祖父や曽祖父たちが決死の覚悟でここにとどまった。

われわれは、「ロシアの春」の英雄たち、2014年ウクライナで起きたネオナチのクーデターに屈しなかった人たち、母語を使い自分たちの文化や伝統、信仰を守る権利、生きる権利のために亡くなったすべての人たちをいつまでも記憶するだろう。

この人たちは、ドンバスの戦士であり、「オデーサのハティニ(虐殺)」の殉教者であり、キエフ政権が仕組んだ非人道的なテロ行為の犠牲者、志願兵や民兵だ。市民、子ども、女性、老人、ロシア人、ウクライナ人、実にさまざまな民族の人々だ。

ドネツクの人民の本当の指導者アレクサンドル・ザハルチェンコ。司令官のアルセン・パブロフとウラジーミル・ジョガ、オリガ・コチュラ、アレクセイ・モズゴボイ。ルガンスク(ルハンシク)人民共和国の検察官セルゲイ・ゴレンコ。空挺兵ヌルマゴメド・ガジマゴメドフと、特別軍事作戦中に勇敢な死を遂げたわれわれのすべての将兵たちだ。

この人たちは英雄だ。偉大なロシアの英雄たちだ。彼らに黙祷をささげよう。

ドネツク・ルガンスク(ルハンシク)両人民共和国、ザポロジエ(ザポリージャ)・ヘルソン両州の何百万もの人々が行った選択の背景にあるのは、われわれの共通の運命と1000年の歴史だ。この精神的なつながりは人々が子へ孫へと伝えてきた。いかなる試練があろうと、ロシアへの愛を長年貫いてきた。

われわれのこの思いを壊すことは、誰にもできない。だからこそ年長者も、ソビエト崩壊の悲劇の後に生まれた若者も、われわれの統一と、共に歩む未来に票を投じたのだ。

1991年、ベロベーシの森で、当時の党エリートは市民の意思を問わずにソビエト連邦の解体を決定し、人々は一瞬にして祖国から切り離された。国家としての同一性が生きたまま引き裂かれ、分割され、国家的な破局となった。

革命後、ソビエト構成共和国の国境が秘密裏に切り分けられたように、ソビエトの最後の指導部は、1991年の国民投票で大半の人が直接示した意思に反し、われわれの偉大な国を崩壊させ、国民にただその事実を突きつけた。

おそらく彼らは、自分たちが何をしていて、最終的にそれがどんな結果をいやおうなくもたらすのか、完全に理解してはいなかった。しかし、もはや重要ではない。ソビエトはなく、過去を取り戻すことはできない。今日のロシアにとってはもう必要なく、われわれはそこを目指していない。

しかし、自分の文化、信仰、伝統、言語をもってみずからをロシアの一部とみなし、先祖代々何世紀にもわたって統一国家で暮らしてきた何百万もの人々の決意より強いものはない。真の歴史的祖国に帰ろうという、こうした人々の決意より強いものはない。

8年の長きにわたり、ドンバスの人々はジェノサイドや砲撃、封鎖にさらされてきた。ヘルソン州とザポロジエ(ザポリージャ)州では、ロシアとロシア的なものすべてに対する憎悪を人々の中に植え付けることが、犯罪的な形で試みられた。

今も「住民投票」の際、キエフ(キーウ)政権は学校の教師や選挙委員会で働く女性たちを、制裁や死で脅した。意思表示をしようと投票所に来た何百万もの人々に迫害を加えると威嚇したのである。

しかしドンバスとザポロジエ(ザポリージャ)、ヘルソンの人々は屈さず、みずからの声を届けた。

キエフ(キーウ)政権と西側にいる本当のあるじには、私の言うことに耳を傾け、皆が記憶にとどめてもらいたい。

ルガンスク(ルハンシク)とドネツク、ヘルソンとザポロジエ(ザポリージャ)に住む人々は、永遠にわれわれの国民となるのだ。

われわれはキエフ(キーウ)政権に対し、砲撃を、すべての戦闘行動を、彼らが2014年にすでに始めていた戦争を、ただちに止めて交渉のテーブルに戻るよう求める。

われわれにはその用意があり、何度も言ってきた。

しかし、ドネツクやルガンスク(ルハンシク)、ザポロジエ(ザポリージャ)、ヘルソンの人民の選択について議論はしない。選択はなされた。ロシアはそれを裏切らない。今のキエフの指導者は、人々のこうした自由な意思表明には敬意をもって接しなくてはならない。そうするほかない。それだけが平和への道となる。

われわれは、あるかぎりの戦力と手段を用いてわれらの土地を守り、国民の安全な暮らしを守るため何でもする。ここにこそ、解放というわが国民の偉大なる使命があるのだ。

破壊された都市や町、住宅、学校、病院、劇場や博物館・美術館は必ず再建し、工業、工場、インフラ、社会(保障)・年金、保健・教育のシステムを復旧してさらに発展させていく。

もちろん、安全性の向上にも努める。新たな地域の市民が、ロシアの全国民、国全体、広大な祖国のすべての(連邦内)共和国・地方・州から支えられていることを実感できるよう、共に取り組む。

尊敬する友人・仲間の皆さん。

きょう、特別軍事作戦に参加している将兵の皆さん、ドンバスとノボロシアの戦士の皆さん、部分動員令のあと部隊に参加し国に尽くす者としての責務を果たしている皆さん、みずから望んで徴兵事務所に来た皆さんに言いたい。その人たちの親、妻、子どもにも言いたい。

何のためにわが国民が戦っているのか、どんな敵が立ちはだかっているのか、誰が世界を新たな戦争と危機に放り込んでこの悲劇から血まみれの利益を得ようとしているのか。

ウクライナのわれわれの同胞、兄弟姉妹たちは、われわれと同じひとつの民族の一部だが、彼らはいわゆる西側の支配層が全人類に向けて用意しているものを、みずから目の当たりにした。そこで西側の支配層は仮面を取り捨て、本性を現した。

ソビエト崩壊後、西側は、世界、われわれ皆を永遠に彼らの命令に従わせることを決めた。

1991年当時、西側は、ロシアがこうした激動から二度と立ち直れず、やがて自壊していくことを期待していた。たしかにそうなりかけた。90年代のことを覚えている。恐ろしい90年代、空腹で寒く、絶望的だった。

しかしロシアは倒れずに再生し、強くなり、世界で再びふさわしい地位を占めるようになった。

その頃西側は、いつも夢見ているようなロシアを攻撃して弱体化させ、崩壊させ、国を細分化して国民を互いに反目させ困窮と絶滅においやるチャンスをうかがってきた。世界の中に、広大な領土と豊かな自然、資源を有し、決して他人の指示のもとで生きようとはしない国民がいる、こんなに偉大な国があるということが、西側にはどうしても気分が悪いだけだ。

西側は、新植民地主義体制を維持するためなら何でもするつもりだ。この体制の下で西側は、ドルの力と技術の専横により世界に寄生、つまり世界を略奪し、人類から真の年貢をかき集め、覇権への地代という不労所得の源泉を獲得してきた。この地代を維持することが、彼らの最重要かつ本当の、そして完全に打算的な動機なのだ。

だからこそ完全に主権を喪失させることが彼らの利益にかなうのだ。

西側による独立国家や伝統的価値観、独自の文化への侵略も、支配が及ばない国際・統合プロセス、新たな世界通貨、技術開発の中心地を台無しにする動きも、すべてそこが発端だ。あらゆる国がアメリカに自国の主権を明け渡すことこそが、西側にとってはきわめて重要なのだ。

一部の国々の支配層は、自主的にそうすることに同意し、自主的に家来となることに同意する。買収されたり脅迫されたりする国もある。

そしてうまくいかない場合は国家全体が破壊され、後に残るのは人道的破局と惨禍、廃虚、何百万という人の破滅した運命、テロリストの群雄割拠、社会的災害地帯、保護領、植民地、そして半植民地だ。西側にとっては、自分たちの利益さえ確保できれば同じことだ。

改めて強調したいのは、「西側集団」がロシアに仕掛けているハイブリッド戦争の本当の理由は、彼らの欲望、どんな制約も受けない権力を保持したいという意図にあるということだ。彼らはわれわれに自由になってほしいのではなく、われわれを植民地とみなしたいのだ。対等な協力ではなく略奪を、われわれを自由な社会ではなく魂のない奴隷の集まりとみなしたいのだ。

彼らにとって直接的な脅威となっているのはわれわれの思想や哲学で、だからこそわれわれの哲学者を抹殺しようとする。彼らにとって、ロシアの文化や芸術は危険を感じさせるから、禁じようとするのだ。われわれの発展と繁栄もまた、競争が激しくなるため、彼らの脅威となる。彼らにとってロシアはまったく不要で、ロシアを必要としているのはわれわれなのだ。

思い出してほしい。世界支配の野望は、これまで何度もわが国民の勇敢さと強じんさによって打ち砕かれてきた。ロシアはいつまでもロシアであり続ける。これからもわれわれは自分たちの価値観、そして祖国を守る。

西側は、すべて目こぼしされ、免罪されると期待している。実際のところ、これまで一切とがめられずに済んでいた。戦略的安全保障の協定はごみ箱行きとなり、首脳レベルで到達したはずの合意は作り話扱いされている。NATOを東方に拡大はしないという固い約束も、前の指導者が信じ込んだとたんに、汚い欺まんに変わった。弾道弾迎撃ミサイル制限条約や中距離核戦力全廃条約(INF)は、こじつけの口実で一方的に破棄された。

各方面で、西側がルールに基づいた秩序を堅持しているのだという。これはいったい何から始まったのだろうか。そのルールとやらを誰が見たのか。誰が承認したのか。

いいか、こんなものは全くのたわごとで、完全な欺まんだ。ダブルスタンダード、いやトリプルスタンダードだ。ばかにしている。

ロシアは1000年の歴史を持つ大国、文明国であり、このようなでたらめでインチキなルールの下で、生きていくことはない。

国境不可侵の原則を踏みにじったのはいわゆる西側だ。今や誰が自決権を持ち、誰が持たないのか、誰が自決に値しないかを、西側は自分の裁量で決めている。なぜそれを決めるのか、誰からこうした権限をもらったのかは、わからない。勝手にそうしているだけだ。

だからこそ西側は、クリミアやセバストポリ、ドネツク、ルガンスク(ルハンシク)、ザポロジエ(ザポリージャ)、ヘルソンの人々の選択に激しい怒りを抱くのだ。西側に、彼らの選択を評価する道徳的権利はなく、民主主義の自由について口にする権利すらない。今も、これまでも決してなかった。

西側のエリートは、国家主権だけなく国際法をも否定している。彼らの覇権には、明らかに全体主義的、専制的、アパルトヘイト的性質がある。

あつかましくも、家来とするいわゆる文明国と、そのほかの、今の西側人種差別主義者が野蛮人や未開人のリストに加えるべきだという国とに世界を二分している。「ならず者国家」や「独裁政権」というにせのレッテルを用意して、国民や国家全体に貼り付ける。

今に始まったことではなく、西側のエリートは、今も以前と変わらず植民地主義者のままだ。差別をして、世界の人々を一級とそれ以下に分けているのだ。

われわれはこれまでも、これからも、こうした政治的民族主義とレイシズム(人種差別主義)を決して認めない。今日世界中に広がるルソフォビア(ロシア嫌い)が、レイシズムでなければ何だというのか。

西側が自分たちの文明、すなわち新自由主義的文化こそが世界全体の明白な模範だと信じて疑わないのは、レイシズム以外の何ものだというのか。「こちら側につかない者は敵だ」というのは奇妙にすら聞こえる。

自分たちが犯した歴史的な罪の悔悟さえ、西側のエリートは他者に押し付けようとしている。自国・他国の人々に対し、例えば植民地時代の搾取のように彼らが一切関わりのないことについて、謝罪するよう求めている。

西側は思い出したほうがいいだろう。植民地政策の始まりは中世にさかのぼる。そして世界的な奴隷貿易、アメリカでのインディアン虐殺、インドやアフリカの搾取、イギリスやフランスによる対中国戦争へと続いた。戦争の結果、中国はアヘン貿易のための開港を強いられた。

西側がやったことは、人々をみな麻薬漬けにして、土地と資源のために民族全体をせん滅し、獣のように本物の人間狩りをした。これは人間の本質そのもの、真実、自由、正義に反する行為だ。

一方のわれわれは、わが国こそが20世紀に反植民地運動を率いたことを誇りに思う。この運動は世界の多くの人々に発展の機会を開き、貧困や不平等を減らして飢餓や病に打ち勝つことが可能になった。

強調しておきたい。何世紀にもわたるルソフォビアや、西側エリートがロシアに向けるあからさまな敵意の原因のひとつはまさに、われわれが植民地支配の時代にも搾取されることをよしとせず、ヨーロッパ人に相互利益のための貿易を行わせた点だ。

これを成し遂げられたのは、ロシアに強力な中央集権国家を作り、ロシア正教、イスラム教、ユダヤ教、仏教の偉大な道徳観や誰にでも開かれたロシア文化、ロシア語の上に発展、強化していったからだ。

よく知られた話だが、ロシアへの干渉はたびたび計画され、17世紀初頭の動乱時代や1917年(ロシア革命)以降の激動の時期を利用する試みは失敗した。それでも20世紀末の国家が崩壊していた頃、西側はロシアの富にありつくことができた。当時、われわれを友人やパートナーと呼びながら、実際は植民地として扱い、さまざまなたくらみにより何兆ドルという金銭が国外に吸い出されていった。われわれはみな、このことをすべて覚えている。一切忘れていない。

そして最近、ドネツク、ルガンスク(ルハンシク)、ヘルソン、ザポロジエ(ザポリージャ)の人々が、われわれの歴史的一体性を取り戻そうと声をあげた。ありがとう。

西側諸国は何世紀にもわたり、自分たちはほかの国々に自由と民主主義をもたらすと言い続けてきた。何もかも正反対だ。もたらしたのは民主主義ではなく抑圧と搾取、自由ではなく奴隷化と暴力だった。一極集中の世界秩序そのものが本質的に反民主的かつ不自由で、どこまでもうそと偽善だ。

アメリカは、世界で唯一2回にわたって核兵器を使用し、広島と長崎を壊滅させた国だ。そして先例を作った。

思い出してほしい。第2次世界大戦中アメリカがイギリス人とともに、いかなる軍事的必要性もないのに、ドレスデン、ハンブルク、ケルンのほか、数々のドイツの都市を廃虚に変えた。これは見せしめのために行われた。繰り返すが、軍事的必要性はなかった。目的はただひとつ。日本への原爆投下もまた同様で、わが国そして全世界を威嚇することだった。

アメリカは、ナパーム弾と化学兵器で残虐な「じゅうたん爆撃」を行い、朝鮮半島とベトナムの人々の記憶に恐ろしい傷痕を残した。

今日までドイツや日本、韓国、その他の国を事実上占領し、その上で皮肉にもこうした国々を対等な同盟国と呼んでいる。これはどんな同盟関係なのだろうか。

こうした国の幹部が監視され、首脳の執務室だけでなく住居にまで盗聴器を仕掛けられていることは、全世界が知っている。これが本物の恥辱だ。仕掛ける側にとっても、この厚顔無恥を奴隷のように黙って従順に受け入れる側にとっても、恥辱だ。

彼らは、家来に対する命令や乱暴で侮辱的な怒鳴り声を「ヨーロッパ大西洋の結束」と呼び、ウクライナなどでの生物兵器の開発や人体実験を、高尚な医学研究と呼ぶ。

みずからの破壊的な政策や戦争、強奪により、アメリカは現在の大規模な移民の流れを誘発した。何百万もの人々が、困窮や虐待に耐え、何千人もの死者を出しながら、同じヨーロッパ内の国を目指している。

そして今、ウクライナから穀物が輸出されている。「世界最貧国の食料安全保障」という口実のもと、この穀物はどこに向かっているだろうか。どこに向かっているか? すべて同じヨーロッパの国々に運ばれている。わずか5%が世界の貧困国に向かった。またしてもいつものペテンとあからさまな欺まんが行われた。

要するにアメリカのエリートは、競争相手を弱らせ、国民国家を破壊するためこうした人々の悲劇を利用している。これはヨーロッパにも関わることで、フランス、イタリア、スペイン、その他の何世紀にも及ぶ歴史を有する国々のアイデンティティーに関わることだ。

アメリカは次々と新たな対ロシア制裁を求め、ヨーロッパの政治家の大多数はこれに従順に従っている。アメリカはEUに対してロシア産エネルギーやその他の資源を拒絶するよう圧力をかけているが、これがヨーロッパの産業の衰退につながり、アメリカがヨーロッパの市場を手中に収めるようになることは、ヨーロッパの政治家自身も十分理解している。これはもはや奴隷根性でもなく、自国の国民に対する直接の裏切りにほかならない。

しかしアングロサクソンは制裁だけでは飽き足らず、バルト海の海底を通る国際ガスパイプライン「ノルドストリーム」の爆破という破壊工作へと踏みだした。信じられないが、これは事実だ。ヨーロッパ全体のエネルギーインフラの破壊に着手したことになる。

これにより恩恵を受けるのはどの国か、誰の目にも明らかだ。そして恩恵を受ける国が実行したと考えるのは、当然のことだ。

アメリカの専横は、武力、拳の法則の上に成り立っている。時にはきれいに包装され、時には何の包装もないが、本質は同じ拳の法則だ。そのため世界各地で何百という軍事基地を展開、維持し、NATOを拡大し、AUKUSやこれに類する新たな軍事同盟を結成しようとしている。

ワシントン、ソウル、東京をつなぐ軍事・政治的な連携を結ぶ動きも活発に進んでいる。一方、真の戦略的主権を有する、あるいは持つことを目指す国で、西側の覇権に挑戦できる国は、自動的に敵としてカウントされる。

まさにこうした原則の上に、完全支配だけを求めるアメリカとNATOの軍事ドクトリンが構築されている。西側のエリートはその新植民地主義的計画を、平和を追求するとしながら、抑止を語ることにより偽善的に提示している。

こうした口先の話はある戦略からまた別のものへと移り変わっていくが、本質的に意味するところはひとつ、いかなる主権を持った発展の中心も崩すということだ。

すでにロシア、中国、イランの抑止については聞こえてきているが、アジア、ラテンアメリカ、アフリカ、中東のほかの国々も対象になっていると思う。そして現時点でアメリカのパートナー、同盟国である国々もそうだ。

気に食わなければ同盟国に対しても、あちこちの銀行や会社に制裁を科すのはよくわかっている。そういう習慣だし、もっと広がるだろう。われわれのすぐ隣にあるCIS(独立国家共同体)諸国を含め、すべてが照準に入っている。

同時に、西側が長い間希望的観測を続けてきたのは明らかだ。ロシアに対し制裁の電撃戦を始めることで、全世界を再び指揮下におけると考えた。しかしこの虹色の展望を聞いて皆が興奮したわけではない。極度の政治的マゾヒストや、型破りな国際関係の信奉者を除いては。

大半の国々は敬礼するのを拒み、ロシアとの協力という合理的な道を選んでいる。

西側が各国からこのような反発を受けると予想していなかったのは明らかだ。型どおりに行動し、すべてを力ずくで、恐喝、賄賂、脅しで奪うのに慣れきっていた。あたかも化石となって過去に凝り固まったかのように、こうした手法が永遠に通用すると自らを納得させている。

こうした自信は、自分たちだけが例外だという、悪名高い思考、これも驚きではあるが、それだけでなく、西側の情報飢餓状態がそのまま表れている。度を超えて攻撃的なプロパガンダを使い、神話や幻想、フェイクの大海原に真実を沈めてしまい、ゲッベルスのように夢中になってうそをつく。うそが信じがたいものであるほど、人は簡単に信じてしまう。この原則に従って動いている。

しかし印刷したドルやユーロを人々に食べさせることはできない。紙を食べさせることはできないし、西側ソーシャルネットワークの膨れ上がったバーチャル投資で家を暖めることもできない。私が話しているのはすべて大事なことだ。いま言ったことも大事で、紙を食べさせることはできない。食料が必要だ。膨れ上がった投資で誰(の家)も暖めることはできず、エネルギーが必要だ。

このためヨーロッパの政治家は、自分たちの同胞に対し、食べる量を減らし、風呂に入る回数を減らし、家では暖かい服を着るよう説得するはめになった。一方「そもそもなぜそんなことを」と、ごく当然の疑問を呈した者は、ただちに敵、過激派、急進派と見なされてしまう。ロシアを指さしてこれが諸悪の根源だと言う。これもまたうそだ。

特に言っておきたい、強調したいことがある。西側のエリートには、世界の食料・エネルギー危機に対する建設的解決策を模索するつもりはどうやらなさそうだと、考える根拠が十分ある。この危機は、ウクライナ、ドンバスでわれわれの特別軍事作戦が始まるはるか前から彼らが長年とってきた政策の結果として、まさに彼らの責任で生じた。不公平や不平等の問題を解決するつもりがないのだ。ほかの慣れたやり方をするのではないかと懸念している。

ここで思い出すべきは、西側が20世紀初頭の苦境を第1次世界大戦によって脱したという事実だ。アメリカは第2次世界大戦のもうけで大恐慌の後遺症を完全に乗り越え、世界最大の経済大国となり、基軸通貨としてのドルの力を世界中に押しつけることができた。

そして1980年代の危機、前の世紀の80年代にも危機が迫っていたが、西側は崩壊前後のソビエトの遺産と資源を横領することで切り抜けられた。これは事実だ。

今、矛盾が絡み合う状態から抜け出すため、彼らは主権的な発展路線を選ぶロシアやその他の国々を何としても解体し、他国の富をさらに略奪して自国の穴埋めをする必要がある。うまくいかなければ、システム全体の崩壊を引き起こし、すべてそのせいにすることが懸念される。よく知られた「戦争ですべてご破算」の法則を使うかもしれない。

ロシアは国際社会に対する責任を自覚し、こうした頭に血が上った人たちを正気に戻そうと努めている。

現在の新植民地主義の仕組みが最終的に破滅することは明らかだ。その本当の主人たちは最後までこの仕組みにしがみつくだろう。彼らはただ、この略奪とゆすりのシステムの維持以外、世界に差し出せるものがないのだ。

要するに何十億もの人々、人類の大半が持つ自由と正義、自分の将来を自分で決めるという自然権を、彼らは意に介していないということだ。今や、倫理規範、宗教、家族を根本から否定する方向に踏み出してしまった。

とても単純な疑問に自分たちで答えよう。今こそ私は先ほど話したことに戻りたい。すべての国民に問いたい。このホールにいる皆さんだけでなく、すべてのロシア国民に問いたい。われわれはまさかここ、わが国ロシアに、母親や父親ではなく、「親1号」、「2号」、「3号」がいてほしいだろうか。もはやすっかりおかしくなっていないか。われわれの学校の低学年から、堕落と絶滅につながる倒錯を子どもに押し付けるのを望むだろうか。女性と男性とは別の、何らかのジェンダーがあるかのように頭にたたき込み、性転換手術を勧めるために。

われわれは自分たちの国と自分たちの子どものためにこうなってほしいと思っているだろうか。われわれにとっては、まったくもって受け入れがたい。われわれには別の、自分たちの未来がある。

繰り返すが、西側エリートの独裁は、西側諸国の国民を含め、あらゆる社会をねらっている。これはすべての人への挑戦だ。

このような人間の完全否定、信仰や伝統的価値観の転覆、自由の抑圧は、「逆さの宗教」、純然たるサタニズム(悪魔崇拝)の特徴を帯びている。イエス・キリストは“山上の垂訓”で偽預言者を暴露し、「あなたがたはその実で彼らを見分ける」と言った。この毒の実は、わが国だけでなく、西側の多くの人々を含めすべての国の人々にとって明らかだ。

世界は革命的な変容の時代に入った。この変容は根本的な性質を持つ。発展の中心が新たに形成されている。それは多数派、国際社会の多数派を代表し、自分たちの利益を主張するだけでなく守っていく用意もある。自国の主権を強化する機会を多極化の中に見いだしている。これはすなわち本当の自由と歴史的展望、自立的で創造的な独自の発展や調和の取れたプロセスを遂げる権利を獲得することだ。

すでに話したように、ヨーロッパやアメリカを含め世界中に、われわれの同志がいて、われわれは彼らの支持を感じ取り、目にしている。多様な国や社会の中で、一極集中の覇権に対する解放と反植民地主義の動きは、それぞれの特性を持ってすでに育っている。こうした力こそが、将来の地政学的な現実を決めていくのだ。

友人の皆さん。

今、われわれが闘っているのは、公正で自由な道を進むため、何よりも自分たちのため、ロシアのために、独裁や専制をいつまでも過去のものとするためだ。誰であろうと自分たちが例外的だという考えや、ほかの文化、国民の抑圧の上に築かれた政策が、本質的に罪であり、われわれはこの恥ずべきページをめくらなければならないと、各国と国民はわかっているに違いない。

始まってしまった西側覇権の崩壊は元に戻せない。改めて繰り返すが、かつてのようにはもうならないのだ。われわれが運命と歴史に呼ばれて来た戦場、これはわが民族、大いなる歴史的ロシアのための戦場だ。大いなる歴史的ロシアのため、そして未来の世代のため、われわれの子、孫、ひ孫のための戦場なのだ。奴隷状態、心と魂を壊す恐ろしい実験から、彼らを守らなければならない。

今われわれが闘っているのは、ロシアを、われわれ民族を、われわれのことばを、われわれの文化を、歴史から消し去ることができようとは、決して誰の頭にも浮かばないようにするためだ。今われわれに必要なのは、社会全体の統合だ。団結の基礎となるのは、主権、自由、創造、正義だけだ。われわれの価値観は博愛、慈悲、そして思いやりだ。

私の話を真の愛国者イワン・アレクサンドロビチ・イリインのことばで締めくくりたい。

「私がロシアを祖国だと考えるなら、それは私がロシアの心で愛し、熟考し、ロシア語で歌い、話し、ロシア民族の精神の力を信じるということだ。ロシア民族の精神は私の精神、民族の運命は私の運命。民族の苦しみは私の悲しみ、民族の栄華は私の喜びだ」

このことばの背景にあるのは、ロシア国家の1000年以上の歴史の中で、われわれの祖先が代々追い求めてきた、大きな精神的な選択だ。きょう、われわれはこの選択をする。

ドネツク・ルガンスク(ルハンシク)人民共和国の市民、ザポロジエ(ザポリージャ)州とヘルソン州の住民は、選択をした。彼らはみずからの民族とともに、祖国とともにあり、その運命を生き、祖国とともに勝利することを選択したのだ。

われわれとともに真実がある。われわれのうしろにはロシアがついている。

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