2022年7月20日
朝鮮半島 韓国

韓国 大統領府が新たな観光スポットに?ユン政権のねらいは?

ホワイトハウスならぬ、ブルーハウスとも呼ばれてきた韓国・ソウルにある「青瓦台(せいがだい)」。
70年あまりにわたって大統領府として使われてきましたが、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は、この場所を市民に開放し連日多くの人で賑わっています。
ソウルの新たな観光スポットとなった「青瓦台」とはどんな場所なのか。ユン政権のねらいとは。
(ソウル支局記者・長砂貴英)

そもそも青瓦台ってなに?

青瓦台

「青瓦台」はソウル中心部にある朝鮮王朝時代の王宮キョンボックン(景福宮)のすぐ北側にある山の麓に位置しています。日本が朝鮮半島を統治していた時代には、朝鮮総督の官邸が置かれていました。日本の植民地統治が終わったあと、初代大統領のイ・スンマン(李承晩)政権以来、70年あまりにわたって、この場所は大統領府として使われ、鮮やかな青い瓦から、アメリカのホワイトハウスになぞらえて、ブルーハウスとも呼ばれてきました。

その青瓦台をユン大統領は就任初日の5月10日、市民に開放したのです。

青瓦台に行ってみると・・・

私が青瓦台を訪れたのは6月。

開門の午前9時の30分ほど前に到着しましたが、週末ということもあり、すでに家族連れなどの市民が数百メートルの列をつくっていました。

5月に開放された青瓦台には連日、大勢の人が詰めかけ、6月になると1日あたりの観覧人数の上限が4万9000人と1万人増やされるなど、大盛況。

入場するには原則、事前にオンライン予約が必要で、外国人もパスポートなどを持参すれば入ることができます。

青瓦台には何があるの?

敷地内には大統領の執務室があった「本館」、歴代の大統領が家族とともに暮らしていた「公邸」、外国の要人をもてなす「迎賓館」などの建物があります。

敷地の面積はおよそ25万平方メートル、東京ドーム5個分程度の広さがあります。

中は青々とした芝生が広がり、周囲には木々が生い茂って大きな公園を歩いているようで、訪れた人たちは思い思いに記念撮影をしていて、なかには敷地内の様子をスマホで動画サイトにライブ配信している市民もいました。

建物の中にも入れるの?

大統領の執務室があった「本館」は、建物の中を汚さないように入り口で靴にカバーをしてから入らなければなりません。

大統領が実際に使っていた執務室や、外国の首脳と会談を行っていた部屋など、テレビでしか見たことがないような場所を見学できるようになっています。過去の大統領が国民向けの演説を行っていた場所の背景としてよく目にした、赤いじゅうたんの敷かれた階段では、多くの人が記念写真を撮っていました。

大統領公邸のドレスルーム

歴代大統領とその家族が暮らした「公邸」に入ることはできませんが、建物のまわりを1周することができ、部屋の窓から中が見えるようになっています。

部屋に家具などはありませんでしたが、「寝室」「台所」「衣装部屋」など、それぞれの部屋の前に案内板もあり、訪れた人たちは「ここで大統領が寝ていたのか」、「自分たちで料理をしていたのかな」などと話しながら見学していました。

北朝鮮に狙われた青瓦台

「青瓦台襲撃未遂事件」での銃弾跡が残る松

半世紀ほど前、1968年には武装した北朝鮮のゲリラ部隊が大統領府のすぐそばまで迫ったことがありました。

当時のパク・チョンヒ(朴正煕)大統領や政府要人を北朝鮮のゲリラ部隊が暗殺しようとした「青瓦台襲撃未遂事件」。青瓦台の裏山の松の木には、当時起きた銃撃戦の跡が残されています。

韓国政府の樹立が宣言された1948年以来、70年あまりにわたって大統領府として使われてきた「青瓦台」にはさまざまな歴史も刻まれているのです。

なぜ青瓦台を公開したの?

韓国 ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領

ユン大統領としては、“国民に近い”大統領というイメージを打ち出すねらいがあります。

韓国の大統領はその権限の強さから「帝王的」とも言われ、青瓦台はその「権力の象徴」とも批判されてきました。敷地が広大で、大統領の執務室と側近たちの事務室ですら遠く離れていたことから、内部の意思疎通に問題があるのではないかといった指摘もあとを絶ちませんでした。

ユン大統領は、そうした青瓦台からの大統領府の移転を選挙戦で公約に掲げていたこともあり、就任初日から実行に移したのです。

本当に“国民に近い”大統領なの?

ユン大統領が昼食の時間や週末に街中に繰り出す様子はメディアなどにも取り上げられました。6月には政権幹部の誕生祝も兼ねて、ソウル市内のピザ屋を利用し、その姿がSNSで拡散され話題となりました。

また、キム・ゴニ(金建希)夫人と共に映画館に出かける様子も報道陣に公開。主演俳優がカンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞した是枝裕和監督の映画「ベイビー・ブローカー」を鑑賞しました。

国民はどう見ているの?

歴代大統領夫人の写真が飾られた部屋

青瓦台の移転については当初、韓国国内では賛否両論がありました。移転にかかる費用や警備上の問題から移転は「性急過ぎる」という意見も多く、世論調査で過半数が反対する結果になることもありました。

ただ、ふたを開けてみると、開放された「青瓦台」には連日多くの市民が訪れ、その数は2か月余りで120万人を突破。「青瓦台」はソウルの新たな観光スポットとして定着しつつあるようです。

ユン大統領は順調な滑り出しなの?

順調、とは言えません。

ユン大統領の“国民に近い”姿勢について市民に聞くと「いいことだ」と好意的な声がある一方で「政策ビジョンが見えない」などといった厳しい意見も聞かれます。

さらにここに来て世論調査で支持率の下落が目立ち、7月に入って早くも30%台に落ち込みました。政権人事をめぐって閣僚候補の疑惑が相次いで浮上したほか、元検事総長のユン大統領が検察出身者を要職に抜てきしたことへの批判もあります。

また、物価高など国民生活に直結する問題でも、なかなか有効な対策を打ち出せていません。さまざまな課題が山積する中、ユン大統領の政権運営に厳しい視線が注がれています。

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