ひきこもりアンケート 親と子の悩みにギャップ

NHKが、ひきこもりの当事者と家族に、インターネット上の特設サイトでアンケートを実施したところ、これまでのところ、あわせておよそ700人から回答を得ました。

アンケートからは、当事者と家族の悩みにギャップがあること、病院や保健所などの専門機関に相談しても具体的な支援につながらない人が多いことが、見えてきました。

ひきこもりに関するアンケートを実施

アンケートは、NHKの特設サイトでことし2月から募集しているもので、11月15日現在、ひきこもりの当事者から434件、家族からは257件の回答を得ました。

当事者向けのアンケートについて見ていくと、

年齢で一番多いのが
▽39歳未満で40.6%、
次いで
▽45歳~49歳が20.7%、
▽40歳~44歳が18%などとなっています。

また、通算のひきこもり期間については、
▽1年~5年未満が25.6%、と最も多く、
次いで、
▽10年~20年未満が25.3%
▽5年~10年未満が24.4%などとなっています。

当事者と家族 悩みにギャップが

当事者と家族に「現在の悩み」について複数回答で尋ねました。

当事者の「現在の悩み」については、
▽「心の不調や病気を抱えている」が71.0%、
▽「社会に安心できる場所がない」が65.9%、
▽「経済的に余裕がない」が64.7%、
▽「解決の方法がわからない」が61.5%、
▽「仕事が見つからない」が42.6%でした。

一方で、 家族に「ひきこもり状態の本人について、どんな悩みがあるか」を聞いたところ、
一番多かったのが
▽「仕事をしていない」で75.1%、
▽「本人の身体的・精神的不調」が66.5%、
▽「本人とコミュニケーションが取れない」が38.9%、
▽「経済的な困窮」が38.1%などとなっています。

当事者の抱えている悩みは、「心の不調や病気」「社会に安心できる場所がない」が多く、
「仕事が見つからない」は、40%余りにとどまっていたのに対して、家族の悩みとして最も多ったのが、本人が「仕事をしていない」ことで、本人と家族の悩みの間に大きなギャップがあることがうかがえます。

また、
当事者に対して
「親に不安や悩みを相談しているか」を尋ねたところ、
▽「している」と答えたのが25.6%だったのに対し、
▽「していない」が47.7%、
「かつてはしていたが、今はしていない」が26.3%と、
半数以上の当事者が家族と悩みや不安を共有できていないと回答しています。

そして、
相談しない理由として最も多かったのが、
▽「気持ちを理解してくれない」で41%、
▽次いで「価値観を押しつけられる」が31.8%でした。

そして、家族自身の悩みを聞いたところ、最も多かったのが
▽「ひきこもりの問題を周囲に相談できない」で46.3%、
次いで
▽「自らの高齢化」が38.5%でした。

最も多かった
「ひきこもりの問題を周囲に相談できない」と回答した人に、その理由を聞いたところ、「本人が支援を受けることを嫌がる」が35%、
「どこに相談すればいいかわからない」が29.6%、「過去に相談したが諦めた」が25.7%でした。

また、どうすれば相談しやすくなるかを自由記述で尋ねたところ、
「LINEなど、いつでも相談を受け付けてくれたらうれしい」「ひきこもりの専門的な知識を持つスタッフに対応してもらいたい」などの声がありました。

アンケートの結果について、ひきこもりの支援を長年続けている社会福祉士で白梅学園大学の長谷川俊雄教授は、
「家族と当事者で、悩みに差があることは、お互いがお互いのことをわかってもらえていないと思っているという、不幸な状況を表している。まずは、親や家族からのアプローチが大切だ。例えば、子どもに『働け』と言う場合でも、ただ『働け』ではなくて、なぜ働く必要があるのかしっかりと理由を伝え、本音を話してお互いの理解を深めることが重要だ。親や家族がそうした態度を取れるようにするには、親を孤立させないように支援する専門機関も必要だ」と話しています。

専門機関に相談後、支援につながらないことも多く

アンケートでは、病院や保健所、就労支援機関など、専門の機関や窓口に相談したことのある当事者と家族それぞれに、「不安や悩みを相談した結果どうなったか」を尋ねました。

当事者の回答は、 ▽「支援を受け、解決した」が2.5%、
▽「現在、支援を受けている」が23.7%、だったのに対し、
▽「相談したが、具体的な支援につながらなかった」が30.4%、
▽「一時的に支援は受けたが、解決しなかった」が12.9%などとなっていて、相談をしても解決に結びついた割合が極端に低いことがわかりました。

当事者からは、
「支援の場自体が少なく、対応もほぼ一様に近い」、
「支援といっても相談にのってくれたり、就労支援の紹介をしてくれるだけ。根本的な解決には全くならない」、
「支援に多様性があってもいいと思う。職業訓練所のような支援を求める人もいれば、地域でフリースクールの様にアルバイトから社会に繋がりたい人もいる。支援が無くても、アルバイト先でメンタルに問題を抱えているという事を少しでも理解していただき、労働時間や働き方に配慮をしていただける環境が整えば、働きたいと思う人もいると思う」などの声が寄せられました。

また、家族は、相談した結果、
▽「具体的な支援を受け、解決した」が2.7%、
▽「現在、支援を受けている」が14.4%だった一方、
▽「相談したが、具体的な支援につながらなかった」が35%、
▽「一時的な支援を受けたが、解決しなかった」が12.8%と、
半分近くのケースが、うまく支援につながっていない現状が見えてきました。

家族からは、
「市も社協も家族を支援することが大事だということが理解出来ないので、直接本人が何か困っていると言ってきたら対処しましょうというスタンス。本人をどうやって、どこの窓口に連れていけばいいのかと思う」とか、
「本人だけでなく、家族を支えていく支援が大切。ひきこもることを家族が肯定的に受けとめられるようになることが重要。ひきこもりを否定するような支援は、『ひきこもり』を乗り越えられないように思います」など、
当事者だけではなく家族に対する支援の必要性を訴える声も寄せられています。

白梅学園大学の長谷川俊雄教授は、行政などに支援を申し出ても解決につながらないケースが多いことについて、
「制度の未整備によるものが大きい。例えば、家族が相談に来た際に『定期的に愚痴をこぼしにきませんか』などと言える体制があればいいが、実際は業務やマンパワーに余裕がない。自治体が、専任スタッフがいる独立した支援のセクションを立ち上げるなど、支援機関、相談機関がより充実していくことが望まれる」と指摘しています。

ご意見をお寄せ下さい
https://forms.nhk.or.jp/q/8QAX0LAW

最新記事