ひきこもクライシス“100万人”のサバイバル ひきこもクライシス“100万人”のサバイバル

“新学期がつらい”に向き合う #不登校は不幸じゃない

夏休み、最終盤のこの時期、SNSで、こちらの言葉が広がっています。
「#不登校は不幸じゃない」。新学期、学校に行きたくないという子どもたちの「SOS」をどう受け止めればいいのでしょうか。(おはよう日本ディレクター 高松奈々)

夏休み明け、自ら命を絶つ子どもたち

「9月1日、夏休みあけ。子どもの自殺が多くなる。そんなバカなことがあってたまるか。不登校を肯定するムーブメントを作ります。」

過去10年間、不登校だった大学4年生の小幡和輝さんは自身のブログでこのように思いを綴った。命を絶つぐらいなら、学校にも行かなくてもいいのではないか。不登校になって救われる人もいる。不登校は不幸じゃない。そう呼びかけたところ、SNSで共感が相次いだ。

夏休みの終盤、学校に行きたくない、死んでしまいたいと悩む子供たちの居場所を作りたいと小幡さんは考えた。

きっかけは、このデータだ。

毎年、自ら命を絶つ子どもが、8月下旬から9月上旬に集中するのだ。

「どこにも仲間がいない。居場所がない感覚なんですよ。学校に行っても楽しくない。家に帰っても楽しくない。第3の居場所を作れたらいいな」と小幡さんは語る。

この小幡さんの呼びかけに対して、全国から「イベントを開催したい」と、不登校の経験がある子どもや保護者、先生などが名乗り出た。そして、8月19日、全国100箇所でイベントを開催することになり、1500人が集った。

不登校という道を選び、自殺を踏みとどまった中学生。

東京都町田市の会場に、不登校という道を選び、自殺を踏みとどまった中学生がいた。
12歳のゆいとくん。学校に行きたくないと悩む人の助けになれば、という思いでイベントに参加した。「お父さんとお母さんが好きでいてくれることが嬉しいし、自信にもなる」
と、家族の支えが何より力になったと話した。

ゆいとくんは、同級生に無視されたことがきっかけで小学校4年生の頃から学校に通うのがつらいと感じるようになった。しかし、母親からは毎日のように「学校に行くように」と言われ続けた。ゆいとくんの母親は、「学校=行くべきところという考えが世の中にはあるから」学校に行くようにと言い続けてしまったと話す。

母親の気持ちを受け止めたいけれど、学校には行きたくない。ゆいとくんの心に、徐々に重荷が積み重なっていった。そして、「親に怒られたあとで、もう生きるのが嫌になって、死にたいと思って、ベランダから飛び降りようとした」という。この時は弟が止めてくれて大事には至らなかった。しかし、これが、家族にとって大きな転機になった。この日を境に、母親から「学校に行くように」という言葉が出なくなったという。

ゆいとくんの母親は、「このまま学校に行かせていたら、死んじゃうかなと心配なところがあって。死ぬぐらいだったら、行かなくてもいいよね」と、当時を振り返る。ゆいとくんは、「どうなっても守ってあげるからと言われて嬉しかった」と話す。

それから3年あまり。学校に行かないという選択を家族が受け止めてくれたことで、ゆいとくんは精神的な落ち着きを取り戻した。そして今、将来を見据えて高校を自分で探し始めている。

文部科学省の通知

平成28年9月14日に文部科学省は、「不登校児童生徒への支援の在り方について」通知をだしている。その中では、「学校に登校する」という結果だけを目標にするのではなく、本人が進路を主体的にとらえて、社会的に自立することを目指す必要がある、としている

1 不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方
(1)支援の視点
不登校児童生徒への支援は、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があること。また、児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。

子どものSOSの窓口

誰かに相談したくなったときに聞いてくれる窓口も設けられている。

・よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター)
通話料:無料、24時間対応(※かかりにくいこともあります)
ガイダンスで専門的な対応も選べます(外国語含む)
0120-279-338(フリーダイヤル つなぐ ささえる)
岩手県・宮城県・福島県からおかけの方:0120-279-226(フリーダイヤル つなぐ つつむ)
※050で始まるIP電話やLINE Outからは、下記の番号におかけ下さい(24時間対応)
050‐3655‐0279

厚生労働省が自殺対策のために掲載している電話相談等
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190135.html
※クリックすると別ウインドウが開きます。NHKサイトを離れます。

ゆいとくん、そしてお母さんには勇気をもって取材をお引き受けくださり、感謝しています。命を落とすぐらいなら、学校に行かなくてもいい。学校に行かないのは大変だけど、そういう選択肢もある。それを伝えたい当事者がこんなにたくさんいるのかと正直驚きました。

いじめられていることは、子どもは中々親に言えません。恥ずかしいし、プライドが傷つくからだそうです。だからこそ、勇気を振り絞って、学校に行きたくないという子どもの声を聞き逃さないようにする必要があると感じました。「学校に行きたくない」これはSOS。「絶対に学校に行くように」と学校まで引きずるのではなく、寄り添って話を聞くのが大事だと強く思いました。「夏休みの30日間、遊んでいるわけではない。学校まであと29日、28日……、あと3日、2日、1日……とカウントダウンしていると心と身体が休まらない。」この言葉にはっとしました。
学校に行かないという選択肢を手放しで肯定するのは、やっぱり難しいと思います。でも、命より大切なものなんて、この世の中にはないのではないでしょうか。

高松奈々

  • おはよう日本
    ディレクター
  • 高松奈々