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見過ごされてきた“女性のひきこもり”

内閣府の『ひきこもり』の調査では、39歳までで54万人いると推計されています。しかし、この中に含まれない女性たちの存在が明らかになってきました。それが『家事手伝い・専業主婦』で、ひきこもる人です。なぜ見過ごされてきたのでしょうか。(大澤深雪記者)(おはよう日本 1月29日放送)

40歳を過ぎても自宅にひきこもる女性

41歳の女性です。1人暮らしで仕事はしておらず、父親の年金などで暮らしています。

女性(41)
「20代だとニートとか、女性だから家事手伝いと言われる。」

女性は高校を中退後、アルバイトをしながら就職を目指しました。
このころは、友人と趣味のスポーツ観戦やコンサートに行くこともあったといいます。

しかし、当時は就職氷河期。
特に女性の就職は厳しく、仕事に就くことをあきらめました。
家事手伝いとして家にいる時間が長くなり、次第にかつての友人たちとも疎遠になっていきました。

女性(41)
「自分の後ろめたさ、劣等感があるので、働いている、家庭持っている、そういう人に、いまの状態を知られるのが怖くて連絡とれなかった。そのうちに音信不通になってしまった。」

自分に自信が持てなくなり、親戚から勧められたお見合いの話も受けることができませんでした。40歳を過ぎても、自宅にひきこもる日々が続きました。食事の買い物以外、ほとんど外出することもなく、人と会話する機会もありません。
「このまま1人で暮らし続けることになるのか」女性は自分の将来に強い不安を感じるといいます。

女性(41)
「疎外感と排除感。(社会から)いないことにされている。ひとりぼっちでお金もない。もう生きていくすべがないみたいな。そういう恐怖を感じる。」

表面化しなかった背景に「偏見」がある

見過ごされてきた女性のひきこもり。その深刻な実態が当事者グループによる調査で初めて明らかになりました。回答を寄せた371人のうち、家事手伝いや主婦と見られる人の割合は半数以上に上りました。
さらに、ひきこもりが長期にわたっていることが明らかになりました。
ひきこもりの年数は、平均でおよそ7年半。中には、20年と答えた女性もいました。調査からは、「居場所がない」「相談出来る人がいない」など、切実な状況が浮かび上がりました。なぜ表面化してこなかったのか。ひきこもりの問題に詳しい精神科医の斎藤環さんは、次のように指摘します。

筑波大学教授 斎藤環さん
「いまだに家事手伝いという言葉があったり、専業主婦って言葉があったり、家に閉じこもってる状態を、そういう言葉でマスクできてしまう。社会に出なくてもいいという偏見が、社会全体に根強いところがまだあって、積極的に就労しないことの不安感とか、問題意識がまだまだ乏しいと思う。」