• TOP
  • 初号機のプロジェクトマネージャが語る「はやぶさ2」の次

初号機のプロジェクトマネージャが語る「はやぶさ2」の次

「はやぶさ計画」を立ち上げ、10年前、地球に奇跡の帰還を成し遂げた「はやぶさ」初号機でプロジェクトマネージャを務めたJAXAの川口淳一郎シニアフェロー(65歳)は、カプセルの帰還を前に「チームが良い仕事をしてくれて、誇らしく思う一方で宇宙開発で苦労してきた私のようなものは、いつもハラハラ、ドキドキしています」と笑顔で話していました。

川口さんは、「はやぶさ計画」を立ち上げた当時は、困難の連続だったと言います。

「今でこそ日本は、宇宙開発に取り組んでいると思われるが、1970年代にアメリカのアポロ計画で人類が月に到着したころ、日本は人工衛星を打ち上げるのが精一杯だった。国際宇宙ステーションや木星、土星へと調査を行うNASAを前に、『私たちは一体何をやっているんだ』というのが正直な気持ちだった」と研究者になったばかりの頃の状況を語りました。

巨大なNASAという組織を前にして川口さんは、「アメリカができることをやっても仕方ない。腹をくくってとにかく何か違うことをしなきゃだめだ」という思いからチームで議論を何度も重ね、目をつけたのが小惑星探査だったのです。

川口さんは「あのころは小惑星なんて誰も考えていなかったが、小惑星から試料を持ち帰ることができれば、宇宙科学の分野で大きな貢献をするに違いない」と確信をもっていたといいます。

その上で「NASAは当時、『小惑星なんて』と思っていたはずだが、ことし10月にはアメリカの探査機『オシリス・レックス』が『はやぶさ2』に続いて小惑星でのサンプルリターンに挑戦しました。自分たちが信じて進んできた道をNASAが共有している。そういう意味で大変満足しています」と話していました。

いまや世界をリードする日本の小惑星探査ですが、川口さんは決してこの状況が続くとは考えていません。

「NASAの1部局の予算は、JAXA全体よりも大きい。小惑星探査の手の内はもうすべて明かしてしまった。中国も新たに巨額を投じて小惑星探査を計画している。このままではすぐに追い越されてしまう。日本が今後も宇宙の分野で世界をリードするためには『はやぶさ3』の開発をすればいいというものではない。ほかにはない日本人の発想で、新しい領域に挑戦してほしい」と強調しました。