• TOP
  • 特集
  • 集大成のメッシ “神の子” を越えられるか ワールドカップ

集大成のメッシ “神の子” を越えられるか ワールドカップ

サッカーのアルゼンチン代表のエース、35歳のリオネル・メッシ選手。言わずと知れたスーパースターで、10年以上にわたってポルトガル代表のクリスチアーノ・ロナウド選手とともに世界のトップを走り続けてきました。

メッシ選手が「最後のワールドカップ」と位置づけるカタール大会。決勝までたどりついたアルゼンチンを優勝に導くことができるのか、世界中の注目が集まっています。
(スポーツニュース部記者 古堅厚人)

目次

    リオネル・メッシとは

    スーパースターと呼ばれるだけあって、ここまでつかんだ栄光は数えきれません。

    個人としてはフランスのサッカー専門誌が選ぶ最優秀選手賞「バロンドール」を史上最多となる7回受賞。所属していたスペイン1部バルセロナではヨーロッパチャンピオンズリーグを4回制し、リーグ優勝10回など数多くのタイトルを手にしてきました。

    何がすごい?

    改めてその特長を振り返ってみます。

    まずはボールが足下に吸い付くようなドリブル。

    そして、正確で鋭いシュートやフリーキック。

    自分にマークを引きつけておいてパスを散らして味方を生かす能力にも長けています。

    得点・アシスト、攻撃的な能力の多くを極めて高いレベルで備えています。

    まだまだあげられそうですが元日本代表のディフェンダーでNHKサッカー解説の森岡隆三さんに聞いてみると「何で取られないのかなっていう、あのテクニックと、スピードと、ボールの置きどころとか技術論を言ったら多分きりがない」と答えが返ってきました。

    その上でメッシ選手のプレーの礎となっているのは正確な「ボールコントロール」と「方向転換」と話し「ボールが体の一部という感じでだからこそできるアイデアとか、ゲームでインパクトを残すプレーがある」と説明しました。

    常に比較されるのは神の子

    そのメッシ選手、今大会の初戦の前日の会見では「これが私の最後のワールドカップになるだろう」と明かしたうえで「誰もが望んでいる大きな夢を手に入れる最後のチャンスだ」と念願の自身初優勝に向けて強い意欲を示しました。

    アルゼンチンのスターとして常に比較されてきたのが「神の子」と呼ばれ、おととし亡くなったディエゴ・マラドーナさんです。

    マラドーナさんは1986年のメキシコ大会で5得点・5つのアシストの大活躍を見せアルゼンチンを優勝に導き、この大会は「マラドーナのための大会」とも呼ばれました。

    一方、メッシ選手がワールドカップに初めて出場したのは18歳で臨んだ2006年のドイツ大会。

    マラドーナさんが監督を務めた2010年の南アフリカ大会など、これまで出場した5大会すべてで決勝トーナメントに進み、2014年のブラジル大会では決勝まで進みましたが、ドイツに敗れ優勝はできませんでした。

    数々の栄光をつかみとってきたメッシ選手にとって唯一、手にしていないと言えるのがワールドカップ優勝のタイトルです。

    今大会の活躍と周囲の期待

    今大会、ここまでメッシ選手はボールをコントロールする圧倒的な技術をいかした期待どおりのプレーを見せ、準決勝を終えた時点でトップにならぶ5ゴールを挙げています。

    準々決勝のオランダ戦では1ゴール1アシストを記録し、ペナルティーキック戦でも、後攻の1番手として相手選手が失敗したあとの大きなプレッシャーがかかる中、冷静にシュートを決めてエースとしてチームをベスト4に導きました。

    この試合をカタールで取材したアルゼンチンメディアの女性も「今大会、メッシ選手はアルゼンチン代表の精神的支柱になっていると思う。毎試合、最後の試合になる可能性はあるが、メッシ選手と決勝まで行くという夢が続いてほしい」と話していました。

    続くクロアチアとの準決勝でも躍動しました。みずからペナルティーキックを決めて先制点を奪うと、2点目が生まれたカウンターでは中盤できっかけを作りました。そして、得意のドリブルで右サイドを崩してからの決定的なパスで3点目をアシストしました。

    試合後には「ワールドカップを通して信じられないような体験をしている」と手応えも口にしました。

    メッシ支えるチームも成熟

    絶対的な存在のメッシ選手をどういかすかが長年の課題だったチーム作りも成熟を見せています。

    メッシ選手はフォワードであっても前線からの守備を求められる現代サッカーの中でほとんど守備に労力を割かないことが許される異質な選手で、時にそのプレースタイルが批判を受けることもありました。

    今大会のメッシ選手を中心としたアルゼンチンの戦いぶりについて森岡さんは「並の選手だったら『もっと動け』と言いたくなるかもしれないが、ああいうふうにテクテク歩いて、いざという時に、いいポジションにいる。守備のところでもっとやってもらいたいなという思いもあるが、そこをアルゼンチンは強みにしようとしている。メッシの個性をどう試合で勝つために使うか、うまくメッシを使っているとも見て取れ、それがすごく今、はまってきている気がする。前回、ロシア大会で負けた時には、メッシと周りの選手の関係性が悪いチームかと思ったが、今はそういう感じはない」と話しました。

    「メッシの大会」になるか

    アルゼンチンの試合にはメッシ選手の活躍を期待する多くのファンが訪れ、メッシ選手がボールに触れるごとに大きな歓声をあげ、質の高いプレーが披露されると、まるでメッシ選手をあがめるかのように手を伸ばして上下に動かします。

    そして、試合を勝利で終えると選手やサポーターたちがマラドーナさんとメッシ選手をたたえ優勝を願う歌を大合唱します。

    5回目の挑戦となる今大会の活躍でメッシ選手は出場試合も、得点も、すでにマラドーナさんを上回りました。

    今度こそチームを優勝に導き名実ともに神の子を越えるのか。

    そして「メッシのための大会」にできるのか。

    日本時間19日午前0時からの決勝。相手はエムバペ選手を擁するフランス。最後の試合から目を離せません。

    日程・結果(日本時間)

    日本代表