【解説】COP26の焦点
平均気温の上昇「1.5度」とは?

深刻化する気候変動への対策を話し合う国連の会議「COP26」が日本時間の10月31日、イギリスで開幕します。

世界的に注目されている今回の「COP26」の大きな焦点は、世界の平均気温の上昇を「1.5度」に抑えることを、参加国が一致して目指せるかという点です。

「1.5度」というのはどのような意味を持つ数字なのか、虫明英樹解説委員が解説します。

温暖化はいまどこまで進んでいるのか?

気候変動の問題は、私たちの暮らしに大きな影響を与えますが、今回の会議は、この問題の行方を左右する重要な会議になると言われています。

温暖化が進みますと、「記録的な熱波」や「豪雨」、さらには「台風」が勢力を増すなどして深刻な気象災害がおきると懸念されています。

この温暖化は、いまどこまで進んでいるのか。

こちらは世界の平均気温の変化を示したグラフです。

世界各国の科学者でつくる国連のグループ=IPCCは、2021年8月、地球温暖化の原因は、人間の活動だと初めて断定した上で、2020年までの10年間の世界の平均気温が、すでに1.09度、上昇していると発表しました。

そして1度の上昇で、50年に1度という高温は4.8倍になっていて、10年に1度の大雨も1.3倍になっていると試算したんです。

いま、世界各地で温暖化の影響への対応に迫られています。

焦点の“平均気温の上昇「1.5度」”とは?

今は、気温が1度上がった状況ですが、このまま上がり続けるとどうなるのか?

IPCCは、平均気温の上昇が1.5度になると、50年に1度という高温は8.6倍に、また10年に1度という大雨の頻度も1.5倍になるとしています。

さらに2度までいけば、50年に1度の高温は13.9倍、10年に1度の大雨は1.7倍にまでなると予測しているんです。

これをどこまで低く抑えられるか、ということで、今回のCOP26で焦点になっているのが「1.5度」という目標なんです。

世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることを、参加国が一致して目指せるかどうかが大きな焦点になっています。

今の削減目標では「1.5度」は程遠く、対策強化が必要

この「1.5度」という目標は達成できるのか。

UNEP=国連環境計画は、2021年10月に各国が2030年に向けて掲げた温室効果ガスの削減目標を達成しただけでは、世界の平均気温は、今世紀末までに少なくとも2.7度上昇するという見通しを発表しました。

そして1.5度という目標の達成には程遠いと対策の強化を求めています。

実は、1.5度という目標を達成するには、2030年までに排出量を45%程度削減することが必要と言われていますが、いまの各国の目標では、逆に排出量は増加してしまう状況です。

そうした現実を前に、各国が一致して、削減目標の引き上げに進んでいけるのか、COP26の議論が注目されています。