「国鉄三大ミステリー」松川事件に関する記述も

東北線の金谷川~松川間で起きた列車転覆現場(1949年8月)

拝謁記には、GHQ・連合国軍総司令部の統治下だった昭和24年夏に「下山事件」や「三鷹事件」とともに相次いで発生し、いまだに真相が明らかになっていない、「国鉄三大ミステリー」の1つ「松川事件」に関する記述もありました。

目次

「アメリカがやつて共産党の所為ニした」

この事件は福島市松川町の旧国鉄東北線で線路のレールが何者かによって外され、通過した列車が脱線・転覆し、乗務員3人が死亡したもので、労働組合の幹部など20人が逮捕・起訴され、一審では全員が死刑を含む有罪判決を受けたが、事件から14年後、全員の無罪が確定しました。

松川事件で全員無罪の判決に喜ぶ被告団(1963年9月)

この戦後最大のえん罪事件について、昭和28年11月11日の拝謁記には、昭和天皇が「一寸(ちょっと)法務大臣ニきいたが松川事件ハアメリカがやつて共産党の所為(せい)ニしたとかいふ事だが」と明かしたうえで、「これら過失ハあるが汚物を何とかしたといふので司令官が社会党ニ謝罪ニいつてる」と明かしたと記されていました。

田島長官は「田島初耳ニて柳条溝事件(原文ママ)の如き心地し容易ならぬ事と思ふ」とその時の驚きを記しています。

しかし、この日の記述はノートの最後のページに書かれ、田島長官が「此日の記事ハ紙面を考へ要約なり」として手短に終えて筆を置いたこともあって、これ以上詳しいことは記されていません。

専門家「謀略説を裏付ける初めての史料ではないか」

分析にあたった専門家からは「汚物の意味は不明だが、法務大臣が天皇に報告するからには、根拠不明のうわさ話などではなく、アメリカから日本の捜査当局にもたらされた話だろう。これはこれまで根拠なく語られてきた謀略説を裏付ける初めての史料ではないか」という意見が出る一方で、「衝撃的な話だが、この記述だけでは評価しようがない。真偽が定かでない記述は慎重に扱うべきだ」という指摘が相次ぎました。

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