「第7波」につながる可能性は?
コロナ感染者 全国で増加傾向

2022年6月30日

新型コロナウイルスの新たな感染者数は6月下旬あたりから首都圏など各地で増加に転じたように見えます。全国の感染者数も前の週と比べて増加しています。

これまでにも感染拡大は繰り返されてきましたが「第7波」につながるのでしょうか?

専門家は「大きな流行につながるかはまだわからないが、新たな変異ウイルスへの置き換わりなどに注意すべきで、一時的に感染対策への意識を高めてもらう必要がある」としています。

新規感染者 前週比で増加傾向 島根では過去最多も

全国の新規感染者数は大型連休明けに一時増加したあと、5月中旬以降、減少傾向が続いていましたが、前の週と比べた1週間の新規感染者数は先週から増加傾向で、6月29日まででは前の週の1.17倍となっています。

東京都では6月30日までの新規感染者数が前の週と比べて1.40倍になるなど、人口の多い首都圏や東海、関西、そして九州などで増加傾向となっています。

また、島根県では出雲市の事業所で大規模なクラスターが発生するなど、6月28日には一日当たりで過去最多となる305人の感染が確認されました。

感染状況の評価「増加要因」の記述増える

厚生労働省の専門家会合は、感染の増加につながる要因と抑制につながる要因があり、そのバランスが感染状況に影響するとしてきました。

会合の後に毎回出される感染状況の評価の文書では、このところ増加につながる要因についての記述が多くなってきています。

具体的な要因として専門家会合が挙げているのが、ワクチン接種や感染によって得られた免疫が時間の経過で弱まってきていること、夜間の繁華街の人出が増加し、東京都では2022年3月にまん延防止等重点措置が解除される直前に比べ35%以上の増加が見られるなど、2021年末のピークと同じか超えるような地域もあること、それに気温の上昇や雨の日が多くなることによって屋内での活動が多くなることです。

ワクチン効果 時間の経過とともに低下

現在、感染の主体となっているオミクロン株に対しては、ワクチンの効果が時間の経過とともに下がることが知られています。

イギリスの保健当局のデータでは、たとえばファイザーのワクチンを2回接種し3回目にファイザーかモデルナのワクチンを接種した場合、新型コロナウイルスの発症を防ぐ効果は3回目の接種から2週間後から4週間後では70%程度ありますが、3か月ほど後には50%程度、4か月ほど後には30%程度に下がるということです。

一方、感染して症状が悪化し入院に至るのを防ぐ効果は、3回目の接種から半年以上たっても70%あるとされています。

専門家会合は、感染を防ぐ効果はより早く接種を受けた人から今後下がっていくほか、新型コロナウイルスに感染して獲得した免疫についても今後効果が徐々に下がっていくと予想されるとしています。

「BA.5」への置き換わり 監視必要に

これまではより感染力の強い変異ウイルスに置き換わることで感染が拡大してきましたが、国内ではこれまでと変わらずオミクロン株の「BA.2」がほぼすべてを占めてきました。

ただ、アメリカなどで主流となってきていてより広がりやすいと指摘される「BA.5」が市中感染で検出されるようになってきていて、今後置き換わりが進むとみられることから専門家会合は動向の監視を続けることが必要だとしています。

感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「『BA.5』は検出数自体はまだ限られるものの、クラスターが相次ぐ島根県など各地で増え始めている。アメリカや中東でも『BA.5』への置き換わりがかなり進んでいて、水際対策が緩和される中では今後日本でも注意が必要だ」と指摘しました。

比較的小規模での増減 繰り返す

「第6波」では、オミクロン株の広がりでかつてない規模での感染拡大が起きたあと、2022年 2月中旬以降は減少傾向が続いてきました。

ただこの間も、3月下旬からのおよそ20日間、5月中旬の1週間余りは増加していて、比較的小規模での増減は繰り返されています。

また、気になるのが活動が活発な若い世代の感染です。6月中旬以降、東京都などでは感染者に占める20代の割合が20%を超え増加してきています。

これまでの感染拡大では、若い世代で飲食の場などを介して広がったあと、高齢者などほかの世代に拡大する形で感染の規模が大きくなる傾向が見られました。

「『第7波』につながるかまだわからないが対策を」

今回、増加傾向が始まってからおよそ1週間がたっていますが、濱田特任教授は今後も続くのか、これから数週間の推移を注意深く見る必要があると指摘します。

濱田特任教授は「今回の増加が一時的なものか、『第7波』につながるかはまだわからない。ワクチン効果が時間とともに下がることや対策の緩和に加えて、このところの急激な気温上昇で換気が行われず、屋内での活動が多くなっていることも増加要因になり得る。一時的な増加にとどめるためにも感染対策への意識を短期間強めてもらい、猛暑の中でも熱中症を避けながら可能なかぎり換気をし、体調が悪い場合は接触を控えるなど基本的な対策をしてほしい。また、特に高齢者は重症化を防ぐためにも4回目の接種をぜひ受けてほしい」と話しています。