秋に第5波到来も!? 新型コロナ最新予測

2021年04月18日(日) 総合 午後9時~ NHKスペシャル

終息のめどが見えない新型コロナウイルスの感染拡大。NHKでは、世界の研究者が発表した新型コロナ関連の全論文25万本以上を人工知能「AI」に読み込ませ、そこから洗い出した最新情報をもとに、専門家と日本の今後の感染状況を予測しました。
見えて来たのは、変異ウイルスの影響で、この秋にも第5波となる感染拡大が起こる可能性です。
(NHKスペシャル「新型コロナ全論文解読2~AIで迫る終息への道~」取材班)

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    何も対策を打たなければ10月に「第5波」も

    4月25日、東京・大阪・兵庫・京都に3回目の緊急事態宣言が出ました。日本の感染状況は今後どうなっていくのか。

    内閣官房のシミュレーションプロジェクトで感染予測に取り組んできた筑波大学の倉橋節也教授とともに予測しました。

    そのモデルとしたのは東京都です。

    これは2020年5月末に最初の緊急事態宣言が解除されてから、2021年3月末までの感染者数の変化です。

    これから先も、今までのような感染者数の増減パターンや社会的な行動制限が繰り返されるとして、今後の感染者数を予測しました。

    まずは、ワクチン接種を行わなかったとした場合です。(グラフのオレンジ色の線)

    いま増え始めている「第4波」の新規感染者数は5月中旬にはピークを迎え、いったん減少しますが、さらにその後10月ごろに、「第5波」となる急速な感染拡大が起こりうるという計算結果となりました。

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    “ワクチン接種の効果は数か月~半年先”

    では、4月から本格的に始まったワクチン接種によってこの感染拡大をどこまで抑え込めるのか。

    予測に必要なのは「ワクチンの有効性の高さ」と「接種のスピード」に関する情報です。

    参考にしたのは、すでに人口のおよそ6割が2回のワクチン接種を終えた(4月時点)イスラエルの最新論文。

    ワクチンを接種した国民120万人の圧倒的なデータを解析したもので、それによると、感染力が強い「N501Y変異」のウイルスがまん延した状況でも、ワクチンが発症を防ぐ有効性は94%でした。

    一方、東京都におけるワクチン接種のスピードについては、政府が示している方針を参考に、「1日当たり都民の最大0.5%が接種する」と想定しました。

    その結果です。

    第4波の感染者数はほとんど減りません。ワクチンの接種スピードが追いつかないためです。

    その一方で、第5波は大きく抑え込まれる結果となりました。

    倉橋教授
    「本当にワクチンの効果が出てくるのは、今の日本の状況だと数か月先、下手すると半年くらい先になるだろうという感じ。今まで1年かかって学んできた感染予防策を地道に繰り返すしかないのが明らかだと思います」

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    変異ウイルス 秋に1日3000人以上感染も?

    ここで気にかかるのが、急速にまん延している変異ウイルスの影響です。

    たとえば、日本国内でも確認されている、「感染力が強いN501Y変異」と「ワクチンの効き目が弱くなる可能性のあるE484K変異」を合わせ持つ変異ウイルス。

    じつにやっかいなウイルスとして警戒されています。

    この「2つの変異を合わせ持つ」ウイルスで深刻な事態に陥ったのが、ブラジルの都市、マナウスです。

    ここでは2020年春、従来型の新型コロナウイルスが流行し、7割を超える住民が感染。5000人以上が犠牲になりました。

    しかし2020年12月から再び患者が急増。しかも一度感染した後、回復し免疫を獲得した人たちが、「2度目の感染」をするケースが次々と現れたのです。結局、第2波の死者数は第1波を上回りました。

    この「2つの変異を合わせ持つ」ウイルスは、すでに日本でも関東などで確認されています。

    この変異ウイルスが今後増え始めると、どうなるでしょうか。

    「N501Y変異」による感染力の上昇は「およそ30%」という国内の報告があります。

    一方、世界中の論文をひもとくと、「35%から100%」と幅があることが分かりました。

    これらの情報を元に、専門家の助言も得て、変異ウイルスの感染力の上昇を「50%」と想定しました。

    ワクチンの有効性については、これまでに発表された、いくつかの報告から、「20%弱まる」と想定しました。

    シミュレーションでは、ワクチン接種に加えて、2021年1月に出された2度目の緊急事態宣言相当の制限(「不要不急の外出自粛」や「飲食店の時短営業」など)も行うと想定しました。新規感染者が1000人を超えた際に制限を行うとします。

    もし、4月1日の時点で「2つの変異を合わせ持つ」ウイルスの感染者が都内に10人いたと仮定すると…。

    感染は徐々に拡大し、7月には1日当たりの新規感染者数が1000人を突破。

    その後も数は増え続け、秋には最大で1日3000人以上がこの変異ウイルスに感染してしまうという計算結果になったのです。

    このほかに、いま関西などで増えている「N501Y変異のみを持つ」ウイルスの場合も予測しました。

    「N501Y変異のみ」の場合は、ワクチンが従来型のウイルスに対するのとほぼ同じくらい効くという前提のため、「2つの変異を合わせ持つ」ウイルスに比べると、感染者数は少し減っています。

    ただ、「N501Y変異」があると重症化率が高くなるとも言われているため、決して安心はできません。

    倉橋教授
    「必ずこうなるというような決定的なシミュレーションではありません。最終的に人が意思決定を行うための材料を提供する目的で、こういう手を打つともう少し良くなるということを見せるためにシミュレーションを行っている」

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    社会的制限を強めれば、変異ウイルスの感染拡大も抑制

    変異ウイルスの感染拡大を抑えるにはどうすればいいのか。

    2020年4月初めに出された1回目の緊急事態宣言の時のように、イベントの中止や学校の休校など、より厳しい社会的制限を行った場合のシミュレーションも行いました。新規感染者が1000人を超えた際に制限を行う想定です。

    やはり、かなり感染者数を下げることができると分かりました。

    東京都は2021年4月25日から始まった3回目の緊急事態宣言で、酒やカラオケを提供する店や大型商業施設などに休業要請を行うなどしています。

    それらの効果が現れるのはまさにこれからです。

    倉橋教授は、「厳しい社会的制限は経済的な損失も伴うため、感染抑止と経済損失を総合的に考える中で、どういう対策をとるべきか、きちんと議論をすべき時に来ている」と言います。

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    世界トップ研究者に聞く“終息のカギ”

    今回、私たちは、世界的に注目される論文を発表しているトップクラスの研究者たちに、「いち早い終息を導くために大切なこと」は何か聞きました。

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    “ワクチン接種のスピード”

    • ワクチン学のトップ研究者
      マウントサイナイ医科大学 フロリアン・クラマー教授

    「北半球では夏の間はウイルス拡大の勢いは弱まるので、その間にワクチン接種の遅れを取り戻す時間的猶予があります。しかし、夏が終わるまでにできるだけ多くの人にワクチンを接種しなければ、秋には感染者数が上昇するおそれもあるでしょう」

    • 免疫学のトップ研究者
      マウントサイナイ医科大学 ミリアム・メラード博士

    「問題はワクチン接種が迅速に行われていないことです。新しい変異ウイルスが出てきます。ワクチン接種と変異ウイルスの競争なのです」

    • イスラエルのワクチン接種主導者
      テルアビブ・ソウラスキー医療センター ロニー・ガムズ教授

    「多くの国々はワクチンの接種を速やかに進めることの重要性を理解できていません。まさにスピード勝負なのです」

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    “今後1~3か月 感染者数を抑えること”

    • ウイルス学のトップ研究者
      ワシントン大学 キース・ジェローム教授

    「今は新しい感染者数を減少させなければなりません。そうすればウイルスが変異してワクチンへの抵抗性を持つ可能性が少なくなります。そして、今後1~3か月の間、感染者数を低く抑えることができれば我々はウイルスに打ち勝つでしょう。もしこの期間に失敗した場合、我々はサイコロを再度振ることになり、何か非常に悪いことが起きて数ヶ月後戻りさせてしまうことになるおそれもあります」

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    “子どもや発展途上国の人々へもワクチンを”

    • 生物統計学のトップ研究者
      フロリダ大学 ヤン・ヤン准教授

    今のところ、子どもは感染しにくく、重症化もしにくいとされていますが、このウイルスは今後も変異していきます。パンデミックの完全な終息には、今後、子どもへのワクチン接種も重要でしょう」

    • ウイルス学のトップ研究者
      ハーバード大学医学部 ダン・バルーク博士

    「裕福な国や西洋諸国だけがワクチン接種をするのは不十分で、発展途上国へのワクチン供給も重要です。世界的にワクチンが行き渡れば、やっかいな変異が出現することもありません」

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