新型コロナウイルスに対してはまだ「特効薬」と呼べる薬はできていませんが、別の病気に使われている薬の中から新型コロナウイルスに効果があるものを探す取り組みが盛んに進められてきました。新型コロナウイルスが「パンデミック」とされてから半年、薬の開発を取り巻く状況も大きく変化しています。
うまくいかなかった薬
当初は効果が期待されたものの、その後、有効性が十分に確認されなかった薬もあります。
最初に注目を集めたのはエイズの発症を抑える薬でした。エイズウイルスの増殖を抑える仕組みが新型コロナウイルスにも効果があると期待されました。
しかし、その後、中国やイギリスで行われた臨床試験では重症患者に対して致死率を下げなかったという結果になりました。
また、マラリアなどの治療薬の「ヒドロキシクロロキン」も当初、効果が期待されていましたが、アメリカFDA=食品医薬品局は、ことし6月、検証の結果、治療効果はみられないとして、使用許可を取り消しました。
うまくいった薬も
一方、新型コロナウイルスへの効果が確認された薬もあります。
エボラ出血熱の治療薬として開発が進められていた「レムデシビル」は、アメリカで効果が確認されたことから、国内でも、ことし5月、初めての新型コロナウイルスの治療薬として承認されました。
また、ステロイド剤の「デキサメタゾン」は、イギリスでの研究で、死亡率を下げる効果が確認され、国内でも使われるようになりました。
半年前には新型コロナウイルスの治療薬は存在しませんでしたが、厚生労働省は、現在、新型コロナウイルスの診療の手引きの中でこの2つの薬を治療薬として推奨しています。
期待されている薬はほかにも
このほかにもまだ効果は確認されていないものの、開発が進められている薬もあります。
- 日本の製薬会社が開発した新型インフルエンザの治療薬「アビガン」は、製薬会社が国の承認を目指して有効性などを調べる治験を進めています。
- 関節リウマチの治療薬「アクテムラ」なども治験に入っています。
ほかにも
- ぜんそくの治療に使われるステロイド剤「オルベスコ」
- すい炎の治療薬「フサン」
- ウイルスを攻撃する抗体を人工的に作り出す「抗体医薬」
なども研究が進められていて、安全性と効果が確認されれば、新たな治療薬として使うことができると期待されています。
有効な薬見つけられたことも致死率低下の要因に
感染症の治療に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授は、「新型コロナウイルスの病態が半年間で少しずつ分かり、いくつか有効な治療薬を見つけられたことが、第2波で致死率を下げられた1つの要因になっている」と話しています。