アスリート×ことば

“生きてるだけで丸もうけ”って、間違いない

“生きてるだけで丸もうけ”って、間違いない

池江璃花子 競泳

白血病と診断され、10か月にわたった入院生活。退院して間もない2020年1月、19歳の池江璃花子が、率直に思いを話してくれた。

「あの、(明石家)さんまさんが言っていた“生きてるだけで丸もうけ”っていう言葉。間違いないなって、もう心の底からそう思って、とにかく水泳をやるより、生きていること。こうやって生きて、みんなと一緒にいることが一番だなって思う」

2019年2月、池江は自身のSNSで白血病と診断されたことを公表。「神様は乗り越えられない試練は与えない、自分に乗り越えられない壁はないと思っています」といったメッセージを残し闘病生活に入った。抗がん剤治療から始まり、9月には血液の元となる細胞の移植。高熱や激しい頭痛に悩まされたこともあった。

「こんなに苦しいんだったら死んだ方がいいんじゃないかって思っちゃった時もありました。でもそれは、違うんだって思ったし、逆にそれを思った自分に反省しているっていうか、なんでそんなこと思っちゃったんだろ、今、こんなに楽しいことが待っていて、こんなにいい経験をたくさんできているのに、なんであの時あんなことを思ったんだろうって、すごく反省しますね」

2020年3月17日、実に406日ぶりのプールだった。顔を水につけないことを条件に、ようやく医師から泳ぐことが許可されたのだ。水に入ってゆっくり静かに体を動かし、水の感触を全身で確かめるかのように笑顔で泳ぎ続けた。幼いころから水泳をはじめ、トップ選手にまで上り詰めた彼女にとって、「泳ぐ」という行為は、かつては当たり前の日常だった。しかし、病気によってその日常は奪われてしまった。

「泳げなかった時期のことは絶対に忘れないと思う」

今、自分が「泳ぐこと」の意味をこう考えている。

「スポーツをやっている人だけじゃなくて、病気で苦しんでいる人とかにも(泳ぐ姿を)見てほしい。そういう人たちに、私は白血病になって、いろいろあって、移植もしたけど、ここまで元気になったんだよって。だからあなたも大丈夫だよっていうのをみんなに伝えて、元気づけるっていうのかな、そういうことができたらいいなと思います。もうどん底まで行った人間が、ここまで上がってきたんだっていう成長を、ちょっとずつでもいいから見せていければ、それはそれでいいんじゃないかなって思います」