海外首脳たちが愛した大相撲観戦
日本を訪れるトランプ大統領は、今回、東京の両国にある国技館で大相撲を観戦し、「アメリカ大統領杯」を優勝力士に直接手渡すことになっています。
日本の伝統的な競技である相撲は、これまでも数多くの外国の首脳が観戦してきました。その歴史をひもとくと、日米外交の重要な場面でも古くから登場していたことがわかりました。
大相撲を観戦した外国の首脳たち
日本で大相撲を観戦した外国の首脳のなかで、よく知られているのは、親日家とされるフランスのシラク大統領です。 愛犬を“SUMO”と名付けるほどの相撲好きで、在任中、何度も大相撲を観戦しています。
イギリスのダイアナ元皇太子妃は、昭和61年(1986年)に日本を初めて訪問した際、相撲観戦を強く希望し、チャールズ皇太子と国技館で大相撲を観戦しました。
また、大相撲で活躍している外国人力士の出身国であるモンゴルやブルガリアの大統領も日本を訪れた際、大相撲を観戦しています。
外国製の特別杯
優勝力士に外国政府から贈られる特別杯も数多くあります。
これまでに贈られているのは、チェコ、メキシコ、UAE=アラブ首長国連邦、そして中国などです。
ハンガリーは友好杯を1986年から贈っています。
当初はつぼの形をしていましたが、ことし新しく刷新されたデザインの友好杯は、重さ15キロ、口径が40センチもある巨大なティーカップの形をしています。
相撲好きのフランスのシラク大統領は2000年から7年間、「フランス大統領杯」を贈っています。
これは、フランス人作家によってデザインされたつぼの形をしたもので、内部は400グラムの金で装飾されています。しかし、シラク大統領は、土俵に上がって直接大統領杯を力士に手渡したことはなく、トランプ大統領が土俵に上がって特別杯を手渡した場合、外国の首脳としては初めてのこととみられます。
そして今回、トランプ大統領が贈呈するのが、アメリカ大統領杯です。
ホワイトハウスによりますと、大統領杯はアメリカで作られ、重さはおよそ30キロ、高さは137センチあるということです。
トランプ大統領は「アメリカ国内で制作したトロフィーを、優勝力士に直接贈呈する」と意気込んでいました。
一方、今回のトランプ大統領の相撲観戦は、アメリカのメディアも注目しており、土俵上は土足が禁止されているため、贈呈式で大統領がスリッパを履くのではないかなどと話題になっています。
アメリカと相撲
アメリカの大統領として日本で初めて相撲を観戦したのはフォード大統領です。
しかし、日米外交において相撲が登場するのはずっと前、江戸時代までさかのぼります。
黒船と共に浦賀に到着したペリー提督。日米和親条約が締結された1854年、ペリー提督を迎えた人の中に、相撲力士も含まれていたようです。
力士たちは、アメリカに贈った米俵などの贈呈品を船に運搬したほか、兵士たちに稽古相撲をみせたということです。
実は、イギリスの大英博物館に、当時の様子を描いた「まき絵」が所蔵されていることわかりました。アメリカ人の兵士たちが力士の体を眺めている様子が描かれています。黒船襲来で江戸幕府に動揺が走る中、屈強な力士たちを披露することで、アメリカ側をけん制したとも言われています。
ホワイトハウスでの相撲
アメリカのホワイトハウスの中で相撲を見せた力士もいました。1907年、横綱だった常陸山は、セオドア・ルーズベルト大統領に対して、ホワイトハウスで謁見室として使われるイーストルームで土俵入りを披露しました。
アメリカを代表する新聞のニューヨーク・タイムズ紙には、当時の様子を記録した記事が残っていて、土俵の形をしたマットの上で稽古相撲を披露すると、ルーズベルト大統領は歓声を上げたと書かれていました。
ちなみに、常陸山は、この2年前、ルーズベルト大統領の娘のアリスさんが日本を訪れていた際に、アリスさんにも会っています。当時撮影された写真が残されていて、アリスさんと思われる女性たちと力士が屋外で写っています。アリスさんは後に、相撲力士について、「とても大きく、ふくよかな男性だった」と、当時の印象を残しています。
そして戦後も、大相撲では、高見山や小錦、曙、武蔵丸などアメリカ出身の力士も数多く活躍してきました。
トランプ大統領と相撲
トランプ大統領は以前、相撲について記者から質問されたところ、「以前からとても興味があった」と語っていました。
そして、日本でみずから特別杯を贈呈することについて、「メディアから注目されるだろう」と話したうえで、自分自身も「とても楽しみにしている」と語っています。
アメリカでは、プロレス好きとして知られているトランプ大統領。日本の相撲をどのようにして観戦するのか、世界中から注目が集まりそうです。
(※肩書きは当時)