注目のキーパーソンたち

2016年のアメリカの大統領選挙に、ロシアが干渉したとされる疑惑の解明に向け、モラー特別検察官による捜査が大詰めを迎えているとみられるなか、2人の元大統領側近と、トランプ大統領に近いとされる司法長官代行の動向に注目が集まっています。

コーエン氏 証言の行方は

トランプ大統領の顧問弁護士だったマイケル・コーエン氏は、トランプ氏のビジネスや家族の事情にも精通した“腹心”と言われてきました。

2018年4月、みずからのビジネスをめぐってFBI=連邦捜査局の捜索を受け、その際、コーエン氏がひそかに録音していたトランプ大統領との会話の音声記録やトランプ氏のビジネスに関する大量の書類を押収したとされています。

捜査が進むなか、コーエン氏は2018年8月、司法取引に応じ、おととしの大統領選挙でかつてトランプ大統領と不倫関係にあったポルノ女優らに口止め料を支払い、これが選挙資金の不正な利用を禁止する法律の違反にあたることを認めました。

さらに口止め料の支払いは「候補者からの指示だった」と明らかにし、トランプ大統領からの指示だったことを示唆しました。大統領選挙期間中にトランプ陣営がロシア人弁護士と接触していたことを「大統領も事前に把握していた」と暴露したとされ、“ロシア疑惑”をめぐる捜査に全面的に協力する姿勢も示しています。

トランプ大統領は「コーエンは司法取引のために話をでっちあげている」と主張して全面的に否定していますが、“腹心”の離反は疑惑解明の大きな転換点になった可能性もあり、その証言の内容が注目されています。

マナフォート氏 司法取引に協力?

トランプ陣営の選挙対策本部長だったポール・マナフォート氏は、トランプ陣営とロシアの「共謀」疑惑解明のカギを握るとされています。

マナフォート氏は、大統領選挙期間中の2016年6月、ニューヨークのトランプタワーでトランプ大統領の長男のジュニア氏らとともにロシア人弁護士と面会していたことが明らかになっています。

モラー特別検察官の捜査では、ロシアのプーチン大統領に近いウクライナの元大統領のためにロビー活動を請け負ったにもかかわらず、政府に必要な届け出を出さず、多額の報酬も申告せずに海外の口座に隠していたことがわかり、国家に対する謀略などの罪で起訴されました。

マナフォート氏は当初、捜査への協力を拒んでいましたが、2018年9月以降、司法取引に応じ、“ロシア疑惑”をめぐる捜査に協力する姿勢も示しています。

しかし、一方で、モラー特別検察官はマナフォート氏が調べに対して、うその供述を繰り返しているとしていて、マナフォート氏を巡る捜査の進展は予断を許さない状況です。

司法長官代理となったウィテカー氏とは

マシュー・ウィテカー氏は、トランプ大統領に解任されたセッションズ司法長官の首席補佐官で、解任を受けて司法長官代行に起用されました。

司法省の内部でモラー特別検察官の捜査を批判していたことで知られ、2017年8月にはアメリカのメディアに寄稿し、「大統領は完全に正しい。モラー特別検察官は、越えてはならない一線に近づいている」と指摘し、捜査に懸念を示すトランプ大統領に同調する考えを示していました。

司法長官には、モラー特別検察官の解任も含めて捜査を制限する権限がありますが、ウィテカー氏は寄稿で「モラー特別検察官は権限の範囲を越えて捜査している。非常に懸念される」とも記していて、これを問題視する野党・民主党は捜査から身を引くよう求めています。