対北朝鮮 どんな制裁が行われてきた?

国連安全保障理事会(2017年12月22日)

国連安保理による制裁措置

国連の安全保障理事会は、核実験やミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対して、2006年10月以降10回の制裁決議を採択していて、毎回、制裁措置を強めています。12月22日に採択された直近の制裁決議では、北朝鮮が今後新たな核実験や長距離弾道ミサイルの発射を強行した場合、安保理は北朝鮮への石油供給をさらに制限する措置を取るという表現が初めて明記されました。
これまでの制裁決議です。

決議第2379号: 2017年12月採択

2017年11月に北朝鮮が新型のICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験だとして、弾道ミサイルを発射したことを受けて、アメリカが提案した制裁決議について採決が行われ、議長国日本をはじめ、中国やロシアを含むメンバー国15か国の全会一致で採択されました。

制裁決議の具体的な項目

▼灯油やガソリンなど石油精製品の北朝鮮への輸出を現在の年間およそ450万バレルから、来年1月以降、年間50万バレル以下と90%近く削減。前回9月の安保理決議による、石油精製品に対する制限を大幅に強化していて、来年1月1日から北朝鮮がほとんどの石油精製品を輸入できないようにすることを目指す。

▼北朝鮮からの食品、機械、電気機器、木材の輸入と北朝鮮への産業機械や運搬用車両の輸出を全面的に禁止。

▼北朝鮮が海外に派遣している労働者の収入を核やミサイル開発に充て続けていることを懸念するとしたうえで、決議が採択された日から2年以内に原則、すべての労働者を本国に送還。送還の期限をめぐっては、草案の段階では「1年以内」とされていた。しかし、北朝鮮の労働者を多く受け入れているロシアの要求を受け入れて「2年以内」に修正。

▼決議違反の疑いがある船舶について国連加盟国の港では拿捕(だほ)や臨検、差し押さえの義務があるとしたうえ、領海内でも拿捕することを認めると定める。

▼北朝鮮の人民武力省の1団体と銀行関係者19人を新たに資産凍結の対象に指定。

▼アメリカが中国に強く迫ってきた中国から北朝鮮への原油の供給停止には踏み込まず。決議では、原油の供給について、年間400万バレルもしくは52万5000トン以下に制限するとして初めて数量の上限が明記されたものの、これは中国からの年間供給量とほぼ同じ量であることから、前回9月の決議と同様、現状維持を認める内容に。

▼一方で、北朝鮮が新たな核実験や弾道ミサイルの発射を行った場合、安保理は、北朝鮮への石油供給をさらに制限する措置を取るという表現を初めて明記。

決議第2375号:2017年9月採択

2017年9月、北朝鮮が6回目の核実験を強行したことを受けて採決にかけられ、決議案は全会一致で採択されました。

(主な内容)

・北朝鮮へのガソリンや灯油などの石油精製品の輸出量の上限を、2018年以降、年間200万バレルとする新たな規制

・北朝鮮が繊維製品を輸出することを禁止

・各国が北朝鮮労働者に就労許可を与えることを禁止

当初、アメリカが示した草案に盛り込まれていた、北朝鮮への原油や天然ガスの輸出を全面的に禁止することや、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の海外での資産を凍結し、渡航を禁止することは除外されました。背景には、アメリカが決議の採択を急ぐことを優先し、厳しい制裁に慎重な中国やロシアが拒否権を行使しないよう配慮したことがあるとみられています。

決議第2371号:2017年8月採択

2017年8月、北朝鮮がICBM=大陸間弾道ミサイルだとする発射実験を2回行ったことを受けて採決され、全会一致で採択されました。

(主な内容)

・北朝鮮の収入源になってる石炭、鉄、鉄鉱石、海産物の輸出を全面的に禁止

国連の外交筋は、この制裁決議が着実に実行されれば、北朝鮮の年間の輸出総額30億ドルの3分の1を減らす効果があるとしていて、大きな打撃となる可能性があります。

過去の制裁措置

決議第2356号:2017年6月採択

北朝鮮のたび重なる弾道ミサイルの発射を受けた制裁措置

(主な内容)

・核とミサイルの開発資金を打ち切るため、北朝鮮の14の個人と4つの団体を対象に海外渡航の禁止や資産凍結

・このうち個人については、諜報活動や原子力に関わる国家機関の幹部、ミサイル関連部品の取り引きを扱う商業銀行の代表などが含まれる

・団体については、核開発や石炭、金属の輸出に関する複数の企業が含まれる

決議第2321号:2016年11月採択

北朝鮮が核実験を強行したことに対する制裁措置

(主な内容)

・北朝鮮が主に中国に向けて輸出し収入を得てきた石炭について、国連の加盟国に対し、年間の輸入量を750万トン以下か、輸入額で4億ドル以下のいずれかの低い方に抑えるよう求める(それまでの取り引き量の38%に相当)

・銀や銅、ニッケルなどの鉱物の輸入については、全面的に禁止

・北朝鮮の外交官が外貨獲得のために違法な商業活動に従事しているとして、北朝鮮のエジプト大使を資産凍結の対象に加える

・加盟国に対し、自国に駐在する北朝鮮の外交官の人数を減らすことなどを求める

決議第2270号:2016年3月採択

北朝鮮による核実験や、事実上の長距離弾道ミサイルの発射を受けた制裁措置

(主な内容)

・各国から北朝鮮への航空燃料の輸出を原則として禁止

・北朝鮮からの石炭や鉄鉱石などの輸入を制限など新たな分野の制裁盛り込まれる

・北朝鮮の外交官について、不正に関わっていれば国外追放にする

決議第2094号:2013年3月採択

北朝鮮が3回目の核実験を強行したことに対する制裁措置

(主な内容)

・国連の加盟国に対し、過去の制裁決議に違反する行為を行った北朝鮮国籍の個人を国外退去とすることを義務づけ

・加盟国に対し、核やミサイルの開発への関連が疑われる、現金の持ち運びを含む、資金の移動の差し止めを義務づけ

・加盟国に対し、武器や核開発に関わる物品を積んでいると疑われる貨物船の検査を義務づけ、検査を拒否した船に対する入港禁止措置も義務づけ

決議第2087号:2013年1月採択

事実上の長距離弾道ミサイルを発射したことに対する制裁措置

(主な内容)

・ミサイルの発射に関わった北朝鮮の宇宙空間技術委員会とその幹部などを含む、6つの団体と4人の個人を資産凍結などの対象に加える

決議第1874号:2009年6月採択

北朝鮮が核実験を行ったことに対する制裁措置

(主な内容)

・国連の加盟国に対し、北朝鮮を出入りする船舶の貨物検査を要請

・加盟国に対し、核やミサイル開発につながる金融取引の阻止を要請

決議第1718号:2006年10月採択

北朝鮮による核実験の実施の発表に対する制裁措置

(主な内容)

・大量破壊兵器の開発や違法な取り引きにつながるおそれのある金融取引の禁止や資産の凍結

・すべての国連加盟国に対し拘束力を持つ国連憲章第7章に基づいて行動するとしたうえで、実際の制裁措置は武力行使などを伴わない憲章第41条に限定して行うとする

日本とアメリカは独自の制裁措置も

日本やアメリカは、核実験やミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対し、国連の安全保障理事会とは別に、独自の制裁措置も続けています。

●日本の主な独自制裁

日本は北朝鮮に対し、1日に7発のミサイルを発射した2006年7月5日から2017年8月までの11年余りの間に、9回、独自制裁を科しています。

2016年12月

・北朝鮮の港に寄港したすべての船舶の日本への入港禁止

2013年4月と2009年6月

・北朝鮮による核実験を受け、北朝鮮向のすべての品目の輸出などを禁止

・大量破壊兵器や弾道ミサイルの計画などに関わる団体や個人に対し資産凍結の措置

2006年10月

・北朝鮮による核実験実施の発表を受けて、すべての北朝鮮籍船の入港を禁止

・北朝鮮からのすべての品目の輸入禁止

・特別な事情がないかぎり、北朝鮮国籍の人の入国を認めないことに

2006年7月

・北朝鮮の貨客船、マンギョンボン号の入港禁止

・原則、北朝鮮当局の職員の日本への入国を認めない措置

●アメリカの主な独自制裁

アメリカは、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を遮断するため、北朝鮮に関係する企業や個人の資産を凍結するなど、たびたび独自の制裁措置をとっています。

2017年9月

・北朝鮮と取り引きする海外の銀行や企業、北朝鮮の8つの銀行、中国・ロシア・リビア・UAE=アラブ首長国連邦で北朝鮮の金融業務に携わってきたとされる26人を制裁対象に追加(26人は、朝鮮労働党で最高指導者の秘密資金を管理する「39号室」という部署から派遣された人物や、北朝鮮の銀行の海外支店で働く人物などとされ、アメリカ財務省は一部が国籍不明であるものの、大半が北朝鮮国籍とみられるとしている)

2016年12月

・北朝鮮が核実験を強行したことを受けて、海外に労働者を派遣して外貨稼ぎを行っているとして北朝鮮の国営企業4社を新たに制裁の対象に加え、アメリカ国内の資産を凍結したりアメリカとの取り引きを禁止したりする措置

・ミサイルの部品などを輸送したとして国営のコリョ航空など、合わせて16の団体と7人の個人を新たに制裁の対象に加え、アメリカ国内の資産を凍結したりアメリカとの取り引きを禁止したりする措置

2010年8月

・韓国の哨戒艦が北朝鮮の魚雷攻撃によって沈没したとされる事件を受けて、オバマ前大統領は、北朝鮮指導部の資金調達に関わる3つの団体と個人1人の資産の凍結を命じる大統領令に署名