北朝鮮の弾道ミサイルからどう国を守る?

米カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地から試験発射された地上配備型迎撃ミサイル

北朝鮮が核・ミサイル開発を加速化させているのを受けて、トランプ政権は、北朝鮮の弾道ミサイルからアメリカを守るミサイル防衛システムを強化する方針です。具体的にどのような計画を進めているのか、ワシントン支局の油井秀樹記者が解説します。

「拳銃の弾を拳銃で撃ち落とす」

ミサイル防衛システムは、「拳銃の弾を拳銃で撃ち落とす」とも言われ、ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とすシステムです。アメリカ軍は現在、西部カリフォルニア州とアラスカ州に合計44基の地上配備型の迎撃ミサイルを配備し、北朝鮮の弾道ミサイルを迎え撃つ計画です。トランプ大統領はことし10月、このミサイル防衛システムについて聞かれ、「97%の確率で迎撃できる」と強い自信を示しました。

しかし、アメリカ軍がこれまで行った迎撃実験では、迎撃に成功したのは18回のうち10回で実際の迎撃率はそれほど高くないとみられています。さらに、北朝鮮がさまざまなミサイルの開発を加速させていることから、アメリカ議会では、現行の防衛システムでは不十分だとして強化を求める声が高まっており、トランプ政権は現在、強化に向けた検討作業を進めています。

どう強化? レーザー光線で破壊?

当面は、迎撃ミサイルの数を増やしたり北朝鮮の弾道ミサイルを監視し追尾するレーダーを更新したりする方針ですが、同時に新たな迎撃方法も模索しています。その1つが、航空機からレーザー光線を発射して破壊する方法です。航空機を朝鮮半島近くに飛行させ、打ち上げられた弾道ミサイルがまだ比較的ゆっくり上昇している間にレーザー光線を照射して破壊する手段です。

実はアメリカは、ブッシュ政権の時にこの方法を研究開発していましたが、前のオバマ政権の時に、予算の都合上、導入を見送った経緯があります。それだけに今回トランプ政権がこのレーザー光線による破壊という方法を復活させるかどうか焦点の1つとなっています。

この方法の利点は、弾道ミサイルが発射された直後、ブースト段階と呼ばれる「初期段階」で迎撃できる点です。現行のミサイル防衛システムは、弾道ミサイルが大気圏外を飛行している「中間段階」か、大気圏内に再突入して落下してくる「最終段階」で、迎撃するシステムです。もし「初期段階」でもミサイルを迎撃できれば、3段階で撃ち落とす態勢が整うことになり、全体の迎撃率が上がると考えられています。

マイクロ波で指揮能力の喪失も

また、レーザー光線に加えてマイクロ波というのも検討されていると伝えられています。
ただ、これは弾道ミサイルを破壊するのではなく、弾道ミサイルが発射される前に、マイクロ波を使って北朝鮮軍の指揮能力を失わせる狙いです。

アメリカ空軍はこれまで、マイクロ波を発するミサイルを研究開発してきました。相手の施設の上空にミサイルを飛ばし、強力なマイクロ波を発することで、相手のコンピューターなどの電子機器を使えなくさせる目的です。ミサイルは、マイクロ波を発した後に海などで爆発させれば、死傷者を1人も出さずに相手の中枢の電子機器だけを無能力化させられるとも言われています。

ただ問題は、北朝鮮内にミサイルを撃ち込めば、北朝鮮が攻撃と受け止め戦争になる危険性が高いことです。北朝鮮軍の指揮能力を失わせる目的であれば、現在すでに検討が進められているサイバー攻撃の方が現実的だとも指摘されています。

こうした議論を踏まえて、トランプ政権は年内にもミサイル防衛システムの新たな戦略をまとめる予定です。ミサイル防衛システムは、莫大な費用がかかるだけに、トランプ政権は同盟国の日本や韓国と協力して防衛システムを構築していきたいとしています。アメリカの新たな戦略がどのようなものになるかは、日本にも大きな影響を与えるだけに、注視していく必要がありそうです。